ユーロ/米ドル下落の影響から、ユーロ/円の下落も止まっていない。
引き続き、外国為替市場の主役は、ユーロ(EUR)だと考えている。
個人的には、米ドル/円のコメントも載せたいのだが、米ドル/円の値動きに主体性がないので、どうしても現在の外国為替市場のメインテーマであるユーロについて書かざるを得ない。
■ユーロ/円、クロス円に引きずられている米ドル/円
現在のマーケットでは、ユーロ/円やその他のクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の値動きに引きずられて、米ドル/円が上下している印象が強い。
つまり、ユーロ/円やその他のクロス円が上昇する際には、米ドル/円も上昇し、ユーロ/円やその他のクロス円が下落する際には、米ドル/円も下落している。
マーケット(金融市場全般)に、リスク意識が高まると、避難通貨として円が買われ、リスクに対して市場参加者の意識が緩和すると、円が売られている(=避難する必要がなくなる)といった印象だ。
当面の米ドル/円は、こういった「風が吹けば、桶屋(おけや)が儲かる」式のロジックで動くのだろう。
ただし、米ドル/円が、ユーロ/円やその他のクロス円の値動きに引きずられて下落する場合に、米ドル/円が88円を割り込むようなケース、そして、85円を割り込み、新値を更新するようなケースは注意を要する。
その場合、米ドル/円自身の損切りを巻き込む可能性があるからだ。
■豪ドル/米ドル、豪ドル/円は大きく下落する可能性
また、オージー(豪ドル)も動き出した。
豪ドルについては、2010年3月31日(水)掲載の当コラムを再度お読みいただきたい(「対ユーロで進んだ『ドル・キャリー』の巻き戻しが対豪ドルでも起きる日は近い!」参照)。
「キャリー・トレード」は金利差享受を狙った取引手法であり、「キャリー・トレード」を行う市場参加者が増加し、マーケットの規模が拡大している間はうまくいく。
ところが、「キャリー・トレード」の市場参加者が増え過ぎて飽和状態になると、その巻き戻し(アンワインド)が起こる。すなわち「キャリー・トレード」の解消が起こり、為替レートは急激に逆方向へと動く。
その際に逃げ遅れると、大きな損失を被ることになる。
ユーロに関しての「キャリー・トレード」は、とうに飽和状態を迎え、2009年12月ごろから下落に転じた。その値動きは、ユーロ/米ドル、ユーロ/円のチャートを見れば理解できるはずだ。
オージー(豪ドル)に関しての「キャリー・トレード」は、現在、飽和状態を迎えている、と考えている。つまり、オージー(豪ドル)/米ドル、オージー(豪ドル)/円に関しては「これから大きく下落する可能性がある」と見ている。
さて、ここからが本題のユーロ/米ドルだ。
■月足で「ユーロ売り・米ドル買い」のシグナル点灯!
以下の「ユーロ/米ドル(EUR/USD)月足チャート」をご覧いただきたい。
ユーロ/米ドルの月足チャートを見ると、2000年、2001年頃の安値圏を起点に2008年まで、【緑の破線】で示したサポート・ラインに従って上昇していたことがわかる。
2008年のクラッシュ(大暴落)で、その上昇トレンドは、いったん終了している。
2008年後半から、2009年の初めに大きく乱高下しているが、それは、大暴落後のポジション調整であり、また、大暴落後の、いわゆる「下値保ち合い」であった、と考えている。
2009年のユーロ/米ドルは、俯瞰(ふかん)してみれば、リバウンド(反発上昇)だった。
それは、米国のゼロ金利政策と米ドルの大量供給で、余った米ドル資金が、ユーロに流れ込んだためと考えている。
米ドルの金利は、ほとんどゼロなので、外国為替取引で、米ドルを米ドルよりも金利の高い通貨に交換すれば、その金利差を享受できる。
いわゆる「ドル・キャリー・トレード」だ。
その結果、ユーロ/米ドルは、2009年の安値1.24ドル台ミドル程度から、1.51ドル台にまで上昇した。
2009年12月以降は、ギリシャ問題をきっかけに、ユーロ/米ドルの暴落が続いている。
先月(2010年4月)までは、【ピンクの破線】で示したサポート・ラインが意識されていた。つまり、2010年4月までは、このサポート・ラインが有効であったが、このサポート・ラインを今月(2010年5月)になって下に割り込み、「ユーロ売り・米ドル買い」のシグナルを発した。
さらに、2008年の安値1.23ドル台前半も割り込んだ。
現状では、下値のメドは、見当たらない。
■大きな「ダブル・トップ」を形成したユーロ/米ドル
次に「ユーロ/米ドル(EUR/USD)週足チャート」をご覧いただきたい。
ユーロ/米ドルが、大きく上下動を繰り返している様子がわかる。
全体を俯瞰すれば、大きな山が2つに見える。いわゆる「ダブル・トップ」を作っている。
今週、1.22ドル台をつけたことで、安値を更新した。1.2300ドル(1.23ドル台前半程度)を下に割り込んだことで、ネック・ラインを割り込んだ。
これは…
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