衆院選は「自民惨敗、民主圧勝」に終わりましたが、選挙明けとなる8月31日(月)の日本の株式市場は、政権与党が負けたのに、朝方はむしろ上昇しました。
日本株はその後、下落に転じました。それは、日本の政治を材料とした値動きではなく、多少は民主党政権に対する不安もあるでしょうが、アジア株の下落に連れて下がったというのが、実際のところだろうと考えています。
また、「為替市場で、米ドル/円が円高になったので、日本株が売られた」といったコメントが多く見られました。
為替については、衆院選の結果とは無関係だと思います。
先週来からの円高の流れが継続し、かつ、アジア株の下落を受けて、リスク回避(フライ・トゥ・クオリティ)が起こり、ドル/円、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の売りにつながったと考えます。
■日本の政治は、外為市場で材料視されない!
前日、9月1日(火)が、外国為替市場の「夏休み相場明け」です(「ユーロ/ドルは中長期で下落トレンド継続。「買いシグナル」は夏休みのダマシだった!」参照)。
毎年、ロンドンのバンク・ホリデーの「レイト・サマー・ホリデー」明けが、外国為替市場の「夏休み明け」で、今年は8月31日(月)がレイト・サマー・ホリデーだったので、ロンドン市場、ニューヨーク市場の参加者は、9月1日(火)に、いっせいに戻ってきます。
ところが、日本の衆院選が8月30日(日)に控えていたため、先週の時点で、ロンドン市場が休場となる8月31日(月)の為替相場はどうなるのか、事前には予測がつかないと、気をもんでいました。
今回の衆院選の事前予想については、自民惨敗がいたるところで報道され、政権交代が確実視されていました。
しかし、日本の政治は基本的に、外国為替市場に影響を与えません。それが、従来のアノマリー(※)です(「『自民党惨敗=円売り』は誤りで、外為市場で日本の政治は注目されない!」参照)。
(※執筆者注:アノマリー(anomaly)とは、株式市場などの金融マーケットで、「はっきりとした理論的、合理的な説明はできないが、よく当たる」とされる経験則のことを言います)
■今週のマーケットは事前予想の範囲内
ただし、今回の衆院選は、最終的には外国為替市場に影響を与えないものの、民主党が圧勝した場合に、日本の株式市場がどのように動くのかによって、8月31日(月)の東京外国為替市場が大きく動く可能性もありました。
私は、最終的には「日本の政治は外国為替市場に影響を与えない」という結果に落ち着くと考えていましたが、週明けのマーケットを見て、予想どおりに、特段の影響が出ていないと思っています。
政権交代が起これば、常識的な判断ならば、日本株は「売り」となるのでしょう。しかし、今回の衆院選で自民党が惨敗し、そうなるのかとなると、「足元で堅調な日本の株式市場は、大きくは崩れないのでは?」と考えていました。
9月2日(水)の東京市場の時点では、個人的には、事前に予想した範囲内と思っています。
9月2日(水)の日本の株式市場は下落気味ですが、それは9月1日(火)のニューヨーク市場の株価が下落した影響によるもので、日本の政権交代が日本株下落の理由ではありません。
■米ドル/円は引き続き、「ボックス相場」の中に
米ドル/円の日足チャートを見てください。
2009年2月以降、米ドル/円は現在まで、上限が101.50円レベル、下限が91.80円レベルの「ボックス相場」を形成しています。チャートでは、緑の破線(太線)で「ボックス相場」の上限と下限を表示しました。
ちなみに、2月から6月までは、上限が101.50円レベル、下限が93.50円レベルの「ボックス相場」を形成していましたが、7月上旬に、下限の93.50円レベルを明確に下抜けて「売りシグナル」を発していました。
ただ、91.80円レベルで「巨額の米ドル買い/円売り」に阻まれて反発上昇に転じ、現在に至っています。個人的には、この「巨額の米ドル買い/円売り」は、中国の外貨準備に関係すると考えています(「マーケットが薄くなる『夏休み相場』だが、今年は得体の知れない巨額資金に注意!」参照)。
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)