■ドルは年内の底を打ったのか?
以上見てきたように、オージー安はいくつかの物差しで見てみると、「異常値」といえるものが多くなっているようです。金融パニックの中で「最弱通貨」の一つだったのですから、それも当然ということかもしれません。
ただ「異常」なものは、いずれ「正常」に戻るもの。これまで見てきたことからすると、ドルが「第2のプラザ・ショック」暴落の最中にあるなら、まだオージー安も「異常」と言い切れませんが、そうでなければ「異常領域」に入っているようですから、正常化へ転換するタイミングもそれほど遅くないという見通しになるでしょう。
ところで、オージー安を「異常領域」に導くきっかけになったのが金融パニックでした。まだわかりませんが、これも一息ついた感じになってきました。
「まだわからない」と言いましたが、私は前回のレポートで書いたように、急落後の急反発と言った今回の値動きから推して、ドルはすでに少なくとも年末近くまでの底を打ったか、打ちつつあると思っています(「金融危機の「パニック相場」は終わったのか? 注目ポイントはドル/円の103円超え」参照)。
急激なドル安・円高と金融パニックもほぼ連動していたわけですから、ドルが数ヵ月の底値圏にあるということは、裏返せば金融パニック一服ということになるでしょう。
ところで、急落後に急反発したドルが、それまでのドル不安が幻だったかのようにグングン上がっていったのが、今春から夏にかけてでした。3月に95円台で底を打ったドルは、9月にかけて110円まで上昇しました。では今回もドルは結構上がるかといえば、それは違うのではないかと思っています。
■春のドル急落と直近のドル急落。その違いは何か?
一般的に理解しやすいのは、経済局面の違いでしょう。春に比べて最近は、景気の先行き不安が格段に深刻化しています。その中で米金利はもっと下がる見通しになっています。4月にいったん利下げ打ち止めとなったのとはまったく違うといえるでしょう。
ほかによく指摘されるのが政策の違いです。この間の金融対策で、米国は財政負担を急拡大、財政赤字は急増する見通しになっています。それはドルの信認を揺るがせるものです。この数ヵ月のドルは、対円以外ではむしろ上がってきましたが、このようなファンダメンタルズや政策の観点からは、先行き下落リスクが以前より増大していると考えるのが基本でしょう。
そして、私がよく引用するのは、円高パターンの観点です。円高・ドル安基調には一定のパターンがあるわけで、昨年6月から展開している今回の円高もそれにおおむね沿った展開となっています。

そんな円高パターンには、円高1幕、中休み、円高2幕といったサイクルがあります。あの3月はちょうど1幕が終わり、中休みに向かうサイクルにありました。ところが、現在は2幕に向かっているさなかにあります。この観点からも、今回は夏までのようにドルがどんどん上がるとは考えにくいと思います。
■行き過ぎたリスクマネー退避の修正が起こる可能性
ただ先に書いたように、ドルは当面の底を打ったか、打ちつつある可能性はあります。ドルが急落後に、翌月にかけて5%前後以上の急反発となったのは2000年以降では4~5回ありましたが、それらは最短でも3ヵ月弱、長い時には1年以上の底を打ったか、またはほぼ打ちつつあった後の動きでした。

こんな具合に、ドル/円がすぐにそんなに下がらない、それが金融パニックが一息ついた裏返しということなら、パニックで必要以上に起こったリスクマネーの退避に修正が起こる可能性はあるでしょう。
新たにリスクをとるということではなく、パニックの中でリスクマネーが必要以上に引っ込んでしまった分の戻りはありうると思います。
普通、その場合に注目が集まるのは為替なら(高い)金利になるでしょうから、クロス円が下がり過ぎていたとしたら、その修正が入る可能性はあると思います。
(※ザイFX!編集部注:現在、各国の政策金利は以下のとおりです。ニュージーランド 7.5%、オーストラリア 6.0%、イギリス 4.5%、ユーロ 3.75%、アメリカ 1.5%、日本 0.5%)
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