この介入について、海外からの批判にも注目が集まっていますが、基本的には「容認」されているのではないでしょうか?
なぜなら、外交関係の了解としては、これは円安誘導という「為替政策」ではなく、あくまで円資金供給という「金融政策」だからです。
ただし、そうであれば、円安へどんどんと「押し下げる」介入も、基本的にはできないと思います。
■海外から、露骨な「批判」が出ないワケは?
今回の日本政府・日銀による為替介入は、2004年以来のことです。前回の2003~2004年に行われた介入は、基本的には、欧米から「容認」されました。
下の表は、日米の為替介入額を比較したもの、ならびに日本の為替介入額の年間ランキングです。

この表を見ると、2003~2004年の日本の介入額が突出していたことがわかります。それにもかかわらず、なぜ「異常な介入」は「容認」されたのでしょうか?
日本の為替政策を担当するのは財務省ですが、そのホームページに「政策評価」が開示されています。その2003年(平成15年)のところをみると、この「異常な介入」について以下のような説明がなされています。
例えば、平成16年4月の米国財務省の為替報告においても、わが国の為替介入は為替操作(マニピュレーション)であるとは見られておらず、【中略】介入による円資金の供給は、その不胎化が部分的にしかなされなかったために、重要なベースマネーの拡大の一要素となった」と記述しています。
また、IMF当局も、平成16年5月に行われた我が国との年次協議において、平成15年度の我が国の為替介入について「デフレを克服するため金融スタンスを適切、かつ十分に拡張的なものとするための方策の総合的なパッケージの一部としてとられた特例的な事態での特例的な措置と呼び得る」と言っております。
要するに、財務省は、2003年の円売り介入が「為替政策」ではなく、デフレ対策の一環としての「金融政策」であって、米国もIMF(国際通貨基金)も理解して「容認」したのだと説明しているのです。
今回の介入も、基本は同じなのではないでしょうか?
そうであれば、マスコミが懸命に欧米当局から「日本の介入批判」の言質をとろうとしても、一部を除いて、露骨にそういった批判が出ないようになっているのではないでしょうか?
■「金融政策」の域を超えた、円の押し下げ介入はできない
今回の介入が「円安誘導」ではなく「金融政策」だからという説明で、諸外国からの批判を封じたとして、半面、だからこそという「制約」もありそうです。
それは、円を押し下げる、米ドルを押し上げるような介入には動きにくいだろうということです。
前回の介入が行われた2003年の場合、スタートは1月15日でしたから117円台だったと見られます。
しかし、その後、120円以上で「円売り・米ドル買い」に動いた形跡はなかったのです。

120円という大台を超えた「円売り・米ドル買い」は「金融政策」ではなく「円安誘導」であるとして、さすがに許されなかったのではないでしょうか?
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