先週、米国の金融機関の決算が発表になりました。各金融機関とも1~3月に多額の追加損失が発生していることが判明しました。特に、シティグループにいたっては1兆6000億円も追加損失が発生しています。しかし、それにもかかわらず、米国の株価は上昇し、為替市場ではドル高円安が進行しています。
これは人間の心理が影響しています。人間は物事を極端に考えてしまう傾向があります。しかもそうした思考が出てくると、先に何とかしなければ…と行動してしまうので、ある程度予想ができることに対しては、実際に起きる前にそれに対する反応をしてしまいます。相場用語で言う「織り込む」という現象がそれに当たります。
その後、思ったほど悪くなかった(あるいは良くなかった)ということが起きると、その反動が起きてしまうわけです。
今、アメリカはひどいことになっているという論調が多い中、投資家もそれに従って、かなりドルを売り込んでしまいましたし、米国の株式の購入にもかなり慎重になっていました。その状態であまり悪くなかったという発表があると、その反動で株価も上昇し、ドルも買われることになります。
しかし、こうしたケースの場合、反動は本格的なトレンドを作らないのが一般的です。なぜなら、本質的な問題が解決しない限り、トレンドの転換というものは起きないからです。
予想より良かったとはいえ、米国の金融機関の苦しい状態は続いています。最悪の状態から抜け出したという安心感から市場が回復しているだけのことです。本質的な問題が解決する時期は、まだ少し先になりそうです。
■中国株に見る相場の急激な加熱とその反動
中国の代表的な株価指数である上海総合指数を見てみると、2006年10月ごろ、1700~1800程度であったのが、1年後には6000を突破しました。わずか1年で3倍以上になったわけです。
中国は急速に経済が成長しており、昨年は11%を超える経済成長をしました。しかし、中国の経済成長は21世紀に入ってからずっと毎年10%を超えていました。その間、株価指数は1000~2000で何年も安定していたのにもかかわらず、2006年になって突然急上昇を始めたのです。
経済学的に言えば非常に奇妙な現象ですが、それもやはり投資ブームが突然盛り上がって、投資家が中国株を買い漁ったことが原因となっています。中国経済がこれから急上昇していくのを先に織り込みにいってしまったのです。
しかし、ここに来てアメリカの経済が減速し、中国ではインフレや環境問題などが発生するなど懸念材料が出てきて、中国経済の先行きにやや陰りが出てきました。
それでも今年の成長率は9%程度と高水準で推移するでしょうが、ともかくそれまで強気になり過ぎていたので、その反動が出てしまい、先週、株価指数は3000近くまで下落してしまったわけです。
このように人は時に極端になってしまうことがあり、それが相場を過熱させることも覚えておきたいことです。
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