しかし、この反発上昇はあくまで調整に過ぎず、トレンドは引き続き「米ドル安・円高」と見ている。
■失業率が2ケタとなるかに注目が集まった米雇用統計
足元の米ドル/円を見ると、92円台から下落に転じ、90円割れとなっている。だが、これは本来のトレンドに戻っただけだ。
そのきっかけは、米国のノンバンク大手・CITグループの経営破綻と言えるだろう(「従来の常識が通じない現在の為替相場、米ノンバンク大手・CIT破綻の影響は?」参照)。
11月2日(月)の早朝に、CITの経営破綻を材料にして、米ドル円は89円台前半まで急落したが、長続きせず、その後は91円台までリバウンドしている。11月6日(金)の米国雇用統計の発表を控え、様子見ムードが漂っていたためであろう。
つまり、この時点での米ドル/円は、米国雇用統計の結果待ちと言える状態で、結果次第で、どちらかに大きく動きそうな雰囲気もあった。
ただ、結果発表前の段階では、米国雇用統計が改善されるという予測は、ほとんど出ていなかった。むしろ、失業率が、市場予想は9.9%とされていたものの、10%の大台に乗せるか、否かに注目が集まっていた。
■雇用統計の結果は「米ドル売り」の材料にしかならない!
11月6日(金)発表の米国雇用統計について、非農業部門雇用者数(NFP)の事前予想は、マイナス17万5000人程度とされた。前回がマイナス26万3000人だったため、前回ほど悪くないだろうといった予想が、市場のコンセンサスとなっていたようだ。
米国雇用統計の結果が発表となる前、筆者は、次のように考えていた。
●仮に、結果が悪ければ、素直に「米ドル売り」となるだろう。
●仮に、結果が事前予想ほど悪くないとしても、それを材料に、現在の「米ドル安・円高トレンド」を変えられるだけの力はないだろう。
そして、実際に発表された米国雇用統計の結果は、以下のとおりだった。
●10月の失業率…結果:10.2%、予想:9.9%、前回:9.8%
●10月の非農業部門雇用者数(NFP)…結果:マイナス19万人、予想:マイナス17.5万人、前回:マイナス21.9万人(マイナス26.3万人から上方修正)
今回発表された米国雇用統計の結果は、米国の雇用状況の悪化を明白に示すものであり、それ以外の何ものでもない。
結論を言えば、「米ドル売り」の材料以外には、他に使いようがないと考えている。
■「米国経済は回復するのでは?」はウケ狙いで、ウソ!
雇用統計は、米国の数ある経済指標の中で、最も重要な指標だ。
もちろん、その数値は過去のデータの積み上げで、かつ、景気を判断する材料としては「遅行性」がある。
しかし、悪化の一途を示している以上、その「遅行性」を取り上げるならば、今後も悪化し続ける、つまり、今回の数値が最悪ではない可能性のほうが高いと考えるのが、整合性のある考え方だろう。
悪化傾向が鮮明になっているのに、何をもって、「今回の失業率が最悪で、今後は改善する」と考えることができるのだろうか?
失業率が悪化傾向にあるなら、米国経済が回復基調にあるとは言えない。現在の米国は、リセッション(景気後退)の状況にある。
米国経済の回復の兆しを無理やり探し出して、「今後は回復するのではないか?」とコメントする人がいるが、それは、多方面からの「ウケ」を狙ったリップサービス、すなわち、「ウソ」だ。
米国経済が回復基調に移行すれば、当然のことながら、米国の雇用統計に改善傾向が出てくるはずだ。
■週足で見ると、大きな流れは「米ドル安・円高」トレンド
ここで、米ドル/円の週足チャートをご覧いただきたい。
週足チャートを見ると、2007年高値の124円台から、現在に至るまで、緑の破線(太線)で示したレジスタンスラインに従って、一定のスピードで、米ドル/円が下落していることがわかる。
さらに、緑の破線(太線)で示したレジスタンスラインの平行線を、緑の破線(細線)で加筆した。
すると、2007年高値の124円台から、現在に至るまで、レジスタンスラインの傾きのスピードで、米ドル/円が下落していると言えるだろう。
週足チャートで見ると、大きな流れは「米ドル安・円高」のトレンドを示している。
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