ただし、もう当面この下げ相場に歯止めをかける手掛かりがまったくないかといえば、そうでもないと思います。キーワードは「米国の公的資金注入」でしょう。
■米国の公的資金注入がドル/円、クロス円を逆流させる可能性
9日の東京市場で、ドル/円は一時100円台を回復し、そして株も一時前日比プラスに転じました。このきっかけは、8日のポールソン米財務長官の発言が、公的資金注入を示唆したものと報道されたことにあるようです。

実際、専門家たちの基本的な見方として、金融安定化法案、協調利下げと展開してきた流れで、次の焦点になるのは米国の公的資金注入と考えられています。そういうことを理解していると、上述の「資金注入示唆」報道に敏感な反応となるのは当然と言えるでしょう。
ただし、次の問題として重要になるのは、示唆したからといって、本当に注入ができるのかということになります。ところが、一部の専門家によると、それは技術的に可能との解釈があるようです。
先日成立した金融安定化法案を「拡大解釈」すると、米財務省は米国の銀行の株式購入も可能になるようです。つまり公的資金注入は実現可能ということになるわけです。
さて、このように公的資金注入が「空手形」ではなく、実現可能なら、ちょうどG7などの国際的な重要会議も予定されていることから、そのタイミングで米国が公的資金注入を「宣言」するといったシナリオなども想定できなくはないでしょう。
今週に入ってからパニックに陥った相場、ドル/円の急落、クロス円の暴落といった相場が逆流する一つのきっかけとして、「米国の公的資金注入」はもっともありうる可能性の一つだと思います。
■米国の金融危機は10年遅れで日本の金融危機をたどっている
ところで、そうは言ってもこの米金融危機が、完全決着するための決定打は簡単に出ないと理解する必要もあるでしょう。かつて日本でも金融危機が起こりましたが、それが決着するまで、なんと約6年もかかりました。
米国の金融危機発生は、日本に10年遅れでこれまでのところよく似た展開をたどっています。
1990年にバブルが破裂した日本は、92年にいったん株価が底入れしましたが、96年に住宅市況が底割れ、そして97年に大手証券破綻、98年に大手銀行破綻となりました。
米国でも、「0のつく年」=2000年にITバブル破裂、「2のつく年」=2002年にいったん株価底入れ、「6のつく年」=2006年に住宅市況が底割れし、「7と8のつく年」に金融危機となっているわけです。

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