この場合、かい離率がマイナス10%前後だと経験的には下がり過ぎとなりますから、円に一段安の余地が大きいとは言えないでしょう。

それどころか、クロス円(ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の中には、たとえば豪ドル/円など、すでに上がり過ぎ(円安の行き過ぎ)の限界圏に達している通貨ペアもあります。
このように見てくると、リスク投資再開となっても、リーマン・ショック以前のように金利差の圧倒的な円劣位もなく、円一段安の余地が大きくはない中で、円キャリー取引が復活するとは考えにくいでしょう。
■株高はいったんスピード調整入りなのか?
それに、そもそもリスク投資再開を鵜呑みにしていいでしょうか?
少なくとも、リスク資産の代表である株式相場については、過去1カ月続いてきた上昇傾向が、小さな曲がり角に差し掛かっている可能性がありそうなのです。
日本のトップ株式ストラテジストであるJPモルガン証券の北野一氏によると、景気底入れ局面の株価の動きには一定のパターンがあります。
具体的には、前回2002年1月、前々回1999年1月の景気底入れ局面の株価(TOPIX)は、基本的に約1カ月で20%程度上昇したところで株高一巡、スピード調整の動きとなっていました。

北野氏は、こういった過去のパターンを参考にした上で、株価はそろそろ戻り高を確認すると、5月前半にかけては調整安、その後は再び上昇基調に転じて7月前半に戻り高値を更新するといったイメージを持っているようです。
このコーナーでよく述べてきたように、相場は行き過ぎるものですから、論理的に終わりと思えるところから、最後の一相場に向かうこともよくあります。
一方で、行き過ぎはいずれ必ず修正に向かいます。そして、そんな行き過ぎの修正が起こるのは、後から振り返ると、さすがに矛盾に満ちた解説が目立ち始めた時である、というのも基本パターンです。
今回はそんな観点から、円キャリー復活論や、リスク投資再開論について検証してきました。その上で、私は短期的に円安は行き過ぎで、1つの曲がり角に差し掛かっているとのこれまでの考え方に変わりはありません(「ドル高・円安はまだ続くのか?それを確認するとっておきの方法」参照)。
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