11月中旬、FRB(連邦準備制度理事会)のバーナンキ議長は、改めて、以下のように表明した。
●「金利を長期間、異例に低水準とすることが正当化される状況が続くだろう」
つまり、ドル金利の引き上げは、当面ないだろうと発言したのだ。
一方、11月19日(木)、ガイトナー米財務長官は、以下の発言をしている。
●「米経済は、第4四半期と2010年にかけて成長が続くと予想」
●「景気回復だけでは経済の安定に不十分で、金融市場の改革が必要」
●「どの金融機関も、“大き過ぎてつぶせない”存在であるべきではない」
●「失業率は容認しがたいほど高く、依然として上昇している」
●「米経済は引き続き厳しい状況にあって、問題解消には時間を要する」
●「基調的に、米国の経済成長ペースは緩やかに強まっている」
今後、米国の経済が成長するといった楽観的予想は、リップサービスだ。市場のセンチメント(雰囲気・市場心理)が悪くならないように配慮したコメントに過ぎないと判断している。
ウソとまでは言わないが、こういった楽観的観測を鵜呑みにしてはいけない。
ガイトナー長官は、次のようにも発言している。
●「米国の失業率は、さらに悪い数字を見ることになる」
つまり、10.2%よりも、さらに大きい数字を見ることになるだろうと、ガイトナー長官は予見しているのだ。
■中国に対する米国のスタンスに変化が現れた!
また、ガイトナー長官は、中国元についても発言した。
●「中国による人民元の柔軟性拡大の容認は、長期間かからないと考える」
●「中国のような大国のドルペッグ制採用は、世界の貿易システムの機能を困難にする」
●「中国が変動相場制を採用すれば、米国の対中輸出の伸びが加速する」
米国には、高水準の発行が続く米国債(トレジャリー・ボンド)を、中国に購入してもらいたいという思惑があった。
ちなみに、ガイトナー長官は、6月に訪中している。その際に、日本には立ち寄っていない。
このことについて、個人的には、米国の要求を中国が呑む代わりに、中国側は、中国元高の圧力を緩めるよう、米国に要求したのだろうと推測している。
国家間の密約については、事実確認は取れない。あくまで、上記のことは、個人的な推測に過ぎない。
実際、ガイトナー長官が訪中した後、G7(先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議)、サミットなどの声明文に変化が見られるようになった。
ガイトナー長官の訪中前の声明文には、「中国元高を望む」というような主旨の文言が、必ず盛り込まれていたものの、ガイトナー長官の訪中後は、そういった文言が消えていた。
だが、そのような米国のスタンスにも、変化が現れた。
11月19日(木)に行われた議会証言で、ガイトナー長官は、中国元高、ならびに、中国元の変動相場制導入を採択するよう、要求したのだ。
■ドルがジャブジャブに余っているワケ
米国が中国に対して、中国元高を要求している背景に、何があるのか?
要するに、以下のとおりだ。
・米国の雇用状況は、失業率が10%を超える最悪の状態で、改善には時間がかかる。
・雇用改善には時間がかかるから、ドル金利は上昇しない。すなわち、現在のゼロ金利状態が継続する。
・そのため、市場(市中)に供給されたドル資金は、過剰供給の状態が続く。
本来、ドル金利を低下させているのは、企業などの設備投資をしやすくするための政策であって、低金利にすることで、景気を良くして、雇用を拡大させることが目的だ。
しかし、現実は、米国は不況であって、企業経営者は、新たな設備投資に資金を振り向けていない。
だから、ドル資金は、低金利で、ジャブジャブに余っている。
供給されたドル資金が、設備投資や新たな雇用拡大に向かわないなら、現在のドルの超低金利政策は、ムダにも思える。だが、これをストップさせると、倒産する企業が増加し、さらなる景気悪化を招く可能性が高い。
だから、米国の金融政策を担当する機関は、ドル金利を引き上げることができない。
■余ったドル資金が為替相場に流入すると…
一方、ジャブジャブに余ったドル資金は、嫌でも何でも、そこに存在している。そして、余ったドル資金は、どこかで運用しなければならない。
余ったドル資金は、タンス預金のように、しまっておくことはできない。すなわち、タンス預金などできないほど、大量のドル資金が余っているのだ。
余っているお金を運用しなければ、それを持っている人が、そこから生まれる損失を負担することになる。だから、余ったドル資金は運用先を求めて、マーケット中をさまようことになる。
加えて、それを持っていなくても、お金を低利で借りて、利益を得ようとする人が出てくる。
現状で、不景気にも関わらず、金価格(対米ドルのゴールド価格)が上昇し、米国株が堅調であることは、余剰のドル資金が、そういった方面に向かっていることを示しているのであろう。
外国為替市場だと、余剰のドル資金は、豪ドルやユーロに向っている。
つまり、いわゆる「ドル・キャリー・トレード」のかたちで、「米ドル売り/豪ドル買い」や「米ドル売り/ユーロ買い」が行われているのだ。
■米ドル/円の相場で勝ちたいなら…?
さて、米ドル/円のテクニカル分析に移る。まず、週足チャートをご覧いただきたい。
週足チャートを見ると、2007年6月高値の124円台と2008年8月高値の110円台を結んだレジスタンスラインが引ける。これを、緑の破線(太線)で示した。
緑の破線(太線)で示したレジスタンスラインの平行線を、2008年3月安値の95円台に合わせて引いた。これは、緑の破線(細線)で表示した。
すると、2006年8月頃から現在に至るまで、このレジスタンスラインとその平行線のインサイド(内側)に、スッポリと収まる。
このことは、2006年8月頃から現在に至るまで、レジスタンスラインの傾きのスピードで、米ドル/円が下落していることを意味する。
また、週足チャートに、短期的なサポートラインを描き加えた。
大きなトレンドが、上昇であっても、下落であっても、サポートラインを割り込んだポイントが「売りシグナル」となる。
個人的な見解だが、米ドル/円の相場で勝ちたいなら、「大きなトレンドと、サポートラインを探せ!」だと考えている。
さらに、前述の「売りシグナル」を、チャートに「青の丸」で示した。
これを、先に示した1つ目の「米ドル/円の週足チャート」と比較してみてほしい。
ちなみに、一番右端の「青の丸」は、今後、このポイントに到達するのではないかと個人的に考え、表記した。
もし、サポートラインを割り込み、このポイントに到達したら、「売りシグナル」が点灯する。
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