金融市場で、「サブプライム・ローン問題」が最初に話題になったのは、2007年年初だった。
その際に、「サブプライム・ローン問題」は、「いずれ、すぐに、解決する問題」と認識され、軽く扱われていた。
つまり、初めて「サブプライム・ローン問題」が俎上に載った際のマーケット(金融市場)の反応は、
「ふーん…。あっそう」
といった程度であった。
2007年夏になり、この問題が、とてつもなく巨額の損失になっていることに気がつき、大問題に発展した。
FRBなど米当局でも、その実態の把握が難しかったようで、見過ごされていた。
最近の金融市場は、その発展・発達(金融商品の多様化、そして、デリバティブ化、証券化など)で、非常に複雑化している。そのために、実態の把握が難しい。
本来は、こういった証券化された金融商品の格付けが的確に行われていれば、サブプライム・ローン関連の金融商品(証券)が、これほど世界的に流布することもなかったであろうことを考えると、サブプライム・ローン関連の金融商品(証券)に高い格付けを付与した「格付け機関」の責任は重い。その責任を逃れることはできない。
今後、米国などでは、「格付け機関」に対する訴訟も行われるであろう、と考える。
マーケットは、サブプライム・ローン問題の沈静化で一息ついている感があるが、早いうちに、格付け機関の責任の所在を明らかにする必要がある、と考える。
サブプライム・ローン関連の金融商品を、誰が(どの金融機関が、あるいは、どの企業や公共団体が)、どのくらい(金額)、保有しているのか?
そして、そのサブプライム・ローン関連の金融商品の現在価値(実際の価格)が、いくらなのか?
現在価値(実際の価格)が、明確になれば、表面上の具体的損失額がいくらであるのかが、判明するが、実際に売却する場合は、その評価額(評価価値)よりも、実勢価格は低くなることが多い。それも忘れてはいけない。金額が巨額なので、そういった二次的損失も無視できないだろうと考える。
100億円や、200億円の損失ならば、セカンダリーのロス(※)もしれている。たとえば、100億円の損失ならば、10億円か20億円か、せいぜい50億円ほど損失が拡大するだけだ。
50億円もセカンダリーのロスが出るならば、そもそも、その評価が間違っているのだが、それは、ここでのテーマではない。
問題は実際に売却をする場合に、相応の追加損が出るだろうことにある。これは誰にでも想像がつくだろう。
しかし、1兆円、2兆円、3兆円といった場合の、セカンダリーのロスは、いくらになるのか、想像がつかない。
評価損は3兆円でした。実際に売却したら、6兆円の損失でした、ということも考えられる。
現在は、そのサブプライム・ローン関連の金融商品の現在価値(実際の価格)は、その発行時(額面)に比べて半値以下になっているのは明らか。
つまり、発行されたサブプライム・ローン関連の金融商品の発行額の半分程度は、すでに消滅している、と考えるのが妥当だろう。
■100億円で購入したゴッホの絵画がもしもニセモノだったら…
そこで、「その消滅したお金は、どこに行ったのだろう?」といった疑問が湧いてくるのが自然だろう。
それは、どこにも行っていない。
バブルのごとく、まさに消滅しただけのこと。
本物のゴッホの絵画だと信じて100億円で購入した絵がニセモノ(贋作)である、と判明した場合を思い起こせばよい。
そのゴッホの絵(贋作)を売った側は損失を免れたので、ラッキーではあるが、その売り手が、贋作であることを知らなかった場合は、ただ単に、損失を免れただけに過ぎない。
つまり、本物なら100億円の価値があるのだが、ニセモノであることが判明したので、100億円の価値が消滅しただけに過ぎない。
その消滅した価値(お金)、つまり、損失を、誰が負担するのか?
(※)「セカンダリーのロス」とは、サブプライム・ローン関連の金融商品を実際に売却する際、現在の評価額よりも安い価格で売ることになれば、さらに追加的な損失が発生するという意味(編集部注)。
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