FRB(米連邦準備制度理事会)が追加緩和の姿勢を緩めず、金利を低く維持しようとしているためですが、それにしても、NYダウが年初来高値を更新し、雇用統計も含めて景気指標に改善が見られる中で、金利がいつまでも「下がり過ぎ」を続けられるかは微妙でしょう。

米国金利の「下がり過ぎ」の修正が本格化し、上がる見通しになるようならば、本来的にそれと連動性の高い米ドルの下落が一段落し、米ドル高に向かう可能性は高くなるでしょう。
■年末は「ユーロ高」になりやすいという点に注意!
ただ、最後に1つ、少し気になっていることを述べたいと思います。それはユーロ/米ドルのことです。
ユーロ/米ドルには、年末に「ユーロ高・米ドル安」となりやすい習性があり、これが、米ドル安から米ドル高への転換の「足を引っ張る」かもしれないのです。
ユーロ/米ドルが11月と12月に「ユーロ高・米ドル安」になりやすく、年明けの1月は一転して「ユーロ安・米ドル高」になりやすいといった習性については、下の表を使ってもう少し詳しく見てみましょう。

ユーロの対米ドルの騰落状況は、11月が7勝4敗、12月が6勝5敗です。これだけを見ると、11月、12月ともに、ユーロ安になったことよりもユーロ高になったことが多かったということになります。
ただし、必ずしも圧倒的な差がついていたわけではありません。
ユーロ/米ドルの月足の実体幅、つまり、1カ月間の寄り付きと引け値の差を調べてみると、11月、12月ともに陽線となっています。これは、ユーロ高となった場合は大幅なものとなり、一方で、陰線のユーロ安の場合は小幅なものになっています。
以上から言えるのは、年末のユーロ/米ドルは、「ユーロ高・米ドル安」の場合は大幅になる傾向があり、「ユーロ安・米ドル高」は小幅にとどまる傾向があるということです。
■これまでは、年末にユーロ安となっても小幅なものに
11月のユーロ/米ドルは1.4ドルレベルで寄り付きました。
過去の11月におけるユーロ陰線幅の平均は186ポイントで、0.02ドル未満の小幅なものでした。そうであれば、11月が「ユーロ安・米ドル高」の陰線引けになっても、寄り付きより0.02ドル以上のユーロ安となる可能性は低いわけですから、1.38ドル割れすら難しいといった計算になります。
ユーロが誕生した1999年以降の11月で「ユーロ安・米ドル高」は4回あり、このうち、1999年はユーロ陰線幅が400ポイントを超える大幅なものとなっていましたが、それ以外は小幅なユーロ安にとどまっています。半面、ユーロ高となったケースは総じて大幅な結果となっていました。
このように年末のユーロ/米ドルが「ユーロ高・米ドル安」になりやすい習性は、欧州の企業が年末に米ドルからユーロへ換金する資金需要が集中するためとされています。
そうであれば、今年もこの11月と12月に、米ドル安から米ドル高へ転換するに当たって、この「米ドル売り・ユーロ買い」が「足を引っ張る」ことになるのでしょうか?
それとも、ユーロが誕生した1999年以来となる、例外的な「11月のユーロ急落・米ドル急騰」が起こるのでしょうか?
それも、当面の米ドル安一段落、米ドル高への転換を見極める上で、「影の主役」といった役割を果たすのかもしれません。
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