そして、この「類似相場」がまだしばらく続くならば、これから12月中旬にかけては米国の金利上昇が一服し、横ばいになるわけです。
2009年3月に行われたFOMC後の米国の長期金利上昇は、3%の大台突破を目前にして2.7~2.9%での横ばいの状況が約1カ月間も続きました。
この間の米ドルの買い戻しを主導した米国金利上昇の一服が、このようにしばらく続くならば、米ドル高自体の一服がもたらされる可能性はあるでしょう。
■「ユーロ安・米ドル高」はさらに広がるのか?
この米国金利上昇一服の可能性とともに、目先の米ドル高シナリオで気をつけなければならないのが、ユーロの「年末のクセ」でした(「今年の『ユーロ高』はすでに終わった!『買われ過ぎ』修正で1.33ドルを割り込むか」を参照)。
11月と12月のユーロには、「ユーロ高」は大幅に、「ユーロ安」は小幅にとどまるといった「クセ」があるため、米ドル高となっても対ユーロでは伸び悩む可能性があると考えたわけです。

「資料3」を見ると、ユーロの11月の陰線実体幅は最大で455ポイント、平均で186ポイントでした。
今月のユーロの寄り付きは1.3948ドルですから、月末終値が1.3750ドルよりも「ユーロ安」となるならば、11月としては平均以上の「ユーロ安」に、1.3500ドル以下ならば最大の「ユーロ安」となりますが、確率論的には、それだけ可能性が低いということも言えるでしょう。
アイルランド危機などで、一時は1.35ドル割れまで売り込まれたユーロでしたが、その後、いったんは1.38ドル近くまでも急反発し、そして米ドル安となりました。
これは「ユーロのクセ」から予想された展開であるだけに、改めて意識する必要があるのかもしれません。
■独金利の動きが相場のカギを握っている
ところで、この「ユーロのクセ」をもたらしているのは、欧州企業の年末にかけての「ユーロ買い・米ドル売り」需要が一因と見られています。
「アイルランド危機」で売られたユーロですが、一息つくと、この「ユーロ買い」によって下げ幅を縮小するということではないでしょうか?
今年6月にかけてユーロ危機が広がった際には、欧州内で安全資産とされているドイツへの資金シフトが起こり、ドイツの債券利回りは低下し、短・中期の独金利は大幅低下となりました。
ユーロの中核であるドイツの金利が低下したからユーロが売られ、「危機」になったということです。
そのドイツの金利ですが、今回のアイルランド危機でも、先週までは高止まりが続いていました。
ところが、今週に入って「ユーロ安」が再燃し、とりわけ11月23日に1.35ドルを大きく割り込むユーロ急落となる中で、この独金利は久しぶりに大幅低下しています。これは気になるところです。

最初のほうでも書きましたが、米ドルの上昇をリードしてきた米国の金利上昇が一服している中で、「ユーロ売り」がさらに広がるかどうかは、ユーロ圏のコア金利である独金利の動きがカギを握ると言えそうです。
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