ところで、前々回のコラムでドルインデックスの月足チャートを提示し、2009年11月からの連続6カ月の米ドル上昇は、1999年以来だと述べた(「ユーロもポンドも夜明け前で『陰の極』。米ドルの上昇がニセモノと考えるワケは?」を参照)。
ここで、1999年当時との違いをまとめてみたい。
まず、ドルインデックスの連続6カ月上昇はマレであるということを強調しておく。このような状況になったのは、ファンダメンタルズで何らかの「衝撃的」な材料があったとしか思えない。
1999年当時、米国サイドは利上げ周期に入っていたが、ユーロサイドは逆に利下げを敢行していた。その上、米国の成長率と株価のパフォーマンスははるかにユーロ圏を上回っていた。
それはあのITバブル崩壊の“前夜”で、米国への資金流入がバブルのクライマックスを迎えようとした時期であった。
一方で、現在の米ドル高・ユーロ安が、財政懸念のある「PIIGS(ポルトガル・アイルランド・イタリア・ギリシャ・スペイン)」のせいであることは言うまでもない。
2000年のITバブル崩壊と、その後の米ナスダック指数の惨状はご存知のとおりだが、実は、ドルインデックスは3カ月の調整を経て再び上昇していた。
なぜ、米ドルの上昇トレンドが続き、その後の調整があっても2002年まで高値更新が続いたのだろうか?
■ドルインデックス自体のサイクルを読み取ることが重要
ファンダメンタルズの理由を説明するにはいくらスペースがあっても足りないぐらいで、ここでは省略させていただくが、もっとも根本的かつ単純な理由を説明するならば、「当時のドルインデックスが上昇サイクルにあった」ということだ。
その他の理由はすべて二の次で、決定的なものではない。
世の中、もっとも根本的なことはもっともシンプルであり、もっともシンプルなものはもっとも根本的な要素である。相場も一緒だ。
言い換えれば、ドルインデックス自身のサイクルが米ドルの高安を決める根幹であって、ファンダメンタルズはその確認材料に過ぎない。従って、ドルインデックス自体のサイクルを読み取り、それに沿って物事を考えることが大事だ。
ここで、ドルインデックスの長期チャートを見てみよう。
前々回のコラムでは、2007年頃から現在までのものしか示していなかったが、以下のチャートはほぼ最初からのものなので、ドルインデックスの動きの全貌をよくつかめる(「ユーロもポンドも夜明け前で『陰の極』。米ドルの上昇がニセモノと考えるワケは?」を参照)。

ドルインデックスは2008年に70.79まで下げており、その当時の相場の雰囲気が今とは180度異なり、米ドル安一辺倒であったことも忘れないでいただきたい。
■ドルインデックスはこれから安値更新へと向かう!
話が長くなったが、ドルインデックスのサイクル(内部構造)を考えると、筆者の結論は単純かつ明確だ。
1999年当時とは異なり、現在はドルインデックスのサイクルが下落変動の中にあって、6カ月連続で米ドル高となっても本格的な米ドル高とはならない。
ドルインデックスはこれから、むしろ安値更新へと向かうはずで、それは「PIIGS問題」が深刻化するかどうかとは関係なく、来たるべき主流となるだろう。
皆さんの中には「ファンダメンタルズから考えれば、そんなことはあり得ない」と思われる方もいらっしゃるだろう。そのような方は、もし2000年の状況下に置かれたとしても、同じことを言っていたはずだ。
なぜなら、米国のITバブルとその崩壊で、米ドルに上昇する要素はなかった。
それどころが、エンロン事件のような会計粉飾や9・11テロがあっても、さらに米ドル高が続いていたのだから、彼らのロジックで投資を行っていたならば、何回破産しても足りない。
繰り返すが、サイクルに沿って考えることが重要なのだ。
この話の続きはまた次回に!
(2010年5月28日 東京時間13:20記述)
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