したがって、自らの利益を多少犠牲にしても、団結せざるを得ないだろう。危機はEUの解体をもたらすのではなく改革を促進させ、団結力をさらに強める可能性もある。
実際、ソブリンリスク(国家に対する信用リスク)に対応するため、EUにはいくつもの手段が残されている。緊急措置としては、次の3点が考えられる。
1.国債の大規模買い入れ
2.欧州安定基金(EFSF)の資金枠を拡大させる
3.「ゼネラル・ユーロ国債(EU全体の国債)」の発行
前日、12月2日のユーロの上昇について、ポルトガルやスペイン国債の利回りの低下が背景にあると説明されているようだが、市場関係者の中には「EUによる国債の買い支えがあった」と話す者もいた。
■5年以内ユーロ崩壊? スペインは救えない??
また、今年5月頃の市場コンセンサスと同じように、最近のマーケットにおいても、ユーロに対して圧倒的に弱気の見方が示されている。
ある調査によると、有力金融機関に勤める50名のアナリストのうち、ユーロに強気の見方を示しているのは3名前後にとどまっているとのことだ。このような調査結果は、今年5月頃とほぼ同じだ。
マスコミに大きく取り上げられている代表的な話としては、「BRICs」の名付け親であるゴールドマン・サックスのエコノミスト、ジム・オニール氏の「5年以内ユーロ崩壊の可能性」と、「破滅博士」こと米ニューヨーク大学スターン経営大学院のヌリエル・ルービニ教授の「スペインは救えない」がある。

おもしろいのは、ギリシャ危機の際に、オニール氏とルービニ氏は同じインタビューで真っ向から対立した意見を述べていたことだ。
当時、オニール氏はギリシャの問題が大げさに宣伝され、問題はマーケットが思うほど深刻ではないといった発言をしていたのに対して、「破滅博士」は、世界がすぐにでも破滅しそうな深刻な話をしていた。
(ちなみに、我が家のスパイ猫「エリオット君」の話によると、ルービニ教授は常に世界の破滅を覚悟しているせいか、よく自宅で大勢の美女と盛大なパーティーをやり、この世がなくなる前に楽しくやるという哲学を私生活でも実践しているようだ……)
■ユーロ安は徐々に修正される
また、同じゴールドマン・サックスの社内でも、異なる意見があるようだ。
(同じく「エリオット君」の情報筋によるが)同社が先日出したレポートでは、来年の年末におけるユーロ/米ドルのターゲットを1.5000ドルと挙げている。
その根拠は「ソブリンリスクはあるが、域内の経済大国(明らかにドイツを指す)の経済発展が続く」とのことらしい。

いずれにせよ、11月30日時点において、ユーロは一時1.3000ドル割れまで急落し、日足で「7連陰」となったことは、テクニカルの視点では、少なくとも「オーバーシュート」したことが明らかだ。
その分析は私のブログ「為替の真実」に詳説を譲るが、結論としては前回のコラムと同様、ユーロ安が徐々に修正されるという見通しは不変だ(「北朝鮮が韓国を砲撃した本当の理由とメルケル独首相の『失言』について」を参照)。
今回はユーロの話が長くなったので、米ドルサイドの話は次回に。
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