かつて、1995年にかけて80円割れまで「円高・米ドル安」が進み、「超円高」と呼ばれた局面がありました。
その際には「円高・米ドル安」が5年間で約50%も進んだわけですが、今回、それに大きく及ばずに円高が完了したのでしょうか?

前のページで米国の金利について説明しましたが、米国の未曽有の財政赤字拡大は米ドルにとっても示唆的です。
「資料5」は、米国の財政収支とドル実効相場を重ねたものですが、このように見ると、米国の財政収支は米ドルそのものです。

そうであれば、未曽有の財政赤字は、「未曽有の米ドル安」を示唆していることになり、簡単には「米ドル安」は終わらないと思います。
■最近の対円での米ドル安は「遅れたドラマ」なのか?
それでは、現在の「円高・米ドル安」が過去20年間で最悪のものとなり、あの「超円高」並みに、この動きが5年間も続いて、米ドルが半値になるのでしょうか?
そうだとしたら、2012年半ばにかけて60円台まで「円高・米ドル安」は終わらないということになるわけですが…
これを確認するために、「資料6」を見てみましょう。
基本的に、米ドルと米国の経常収支の循環には、2~3年のタイムラグはあるものの、一定の相関性があります。簡単に言えば、米国の経常収支悪化に歯止めがかかってから、その2~3年後に米ドルが底入れするのが基本です。

「資料6」のように、米国の経常赤字(対GDP比率)の拡大は、2006年初めに底入れしました。
それから2~3年程度で米ドルが底入れするということは、対ユーロで米ドルがこの間の底値をつけたのは2008年なので、そこで大きな「米ドル安トレンド」が完了した可能性がありそうです。
その意味では、我々が見ている対円での米ドル安は、「真の米ドル安」完了後の「遅れたドラマ」なのかもしれません。
これまでも、米ドル/円が、米ドルの真の潮流に気づかないということは珍しくありませんでした。
しかし、そんな「時代遅れの米ドル安」が続くのも、自ずと限度があるでしょう。
それでは、本当に対円での米ドル安が「時代遅れ」だとして、それが完了して「米ドル高・円安」へと転換するのはどんなシナリオが考えられるでしょうか?
私は、(1)米利上げ、(2)米ドル買いの協調介入、といった主に2つのシナリオが「米ドル安」完了のきっかけになるのではないかと考えています。
■「時代遅れのドル安」完了シナリオその1=米利上げ
まずは、米国の利上げとの関係を考えてみましょう。
そもそも、米国の利上げ開始はいつになるのでしょうか?
依然として失業率の高止まりが続いている中では、利上げを具体的にイメージするのは難しいというのが本音です。

ただ、過去の景気底入れから利上げ開始までのパターンを見ると、だいたい景気底入れから2年半~3年で利上げが始まっていたのです。
それを今回に当てはめると、2011年末~2012年初めにも利上げが開始される見通しとなるのです。
過去のパターンを見ると、米ドルは利上げが始まってから上昇するのではなく、むしろ利上げを先取りして、利上げ開始前から上昇し、利上げが実際に始まるといったんは下落するのが基本でした。
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