たとえば「資料8」は、1999年6月から米国の利上げが開始された際の米ドル/円の推移を見たものです。
米ドルは利上げ開始前の約半年で15%程度上昇し、利上げが実際に始まると、いったんは反落に向かっていました。

今回の場合、米国の利上げ開始が2011年末~2012年前半になるとして、それより半年程度前から「米ドル高」が始まるならば、早ければ2011年後半に「米ドル安・円高」が完了して「米ドル高・円安」へと転換する可能性が出てくるのです。
■「時代遅れのドル安」完了シナリオその2=協調介入
次に、協調介入が米ドルの底入れのきっかけになる可能性を考えてみましょう。
米国のオバマ政権は、景気回復のために「米ドル安政策」をとって「通貨戦争」を仕掛けているとの見方があります。そういったことからすると、米国が「米ドル買い介入」に動くことは考えにくいかもしれません。
ただ、米国は、ガイトナー財務長官を筆頭に、円やユーロなど先進国通貨に対して米ドル安を求めているわけではないといった主旨の発言を繰り返しています。
中国の人民元など新興国通貨に対する米ドル安は必要だが、先進国通貨とは区別しているという意味です。
こういった米国の言葉が理解されず、為替相場が過度な変動になったり無秩序な動きになることを「注視する」と、これまでもG7(先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議)は共同声明でけん制してきました。
それを、今年10月のG20(20カ国・地域財務相・中央銀行総裁会議)の声明では、「監視する」へ変更したのです。

この「注視する」は、英語の原文では「monitor」です。これに対して、「監視する」は「vigilant」になります。
この「monitor」か ら「vigilant」への変更を、ECB(欧州中央銀行)のトリシェ総裁はかつて意識的に使いました。前者はあくまでけん制です。そして、ECBが利上げという実力行使のハラを固めると、それを後者に変更したのです。
G20が実力行使のハラを固めるというのは、円など先進国通貨に対して一段と米ドル安が進んだ 場合の「協調ドル買い介入」ということでしょう。
「資料10」は、先進国通貨に対する米ドルの総合力を示す「メジャーインデックス」、そして「資料11」は、新興国通貨に対する米ドルの総合力を示す「OITPインデックス」です。


これを見ると、たとえば1995年を基準に見ると、円など先進国通貨に対しては一段と米ドル安になっているのに対し、新興国通貨に対してはむしろ米ドル高となっています。
先進国通貨に対する米ドル安は十分であり、新興国通貨に対しての米ドル安が不十分という米国の言い分とつじつまが合います。
そんなふうに、「もう十分」と言っている円など先進国通貨に対して米ドルが一段安となる「過度な変動、無秩序な動き」が起こったならば、実力行使、つまり、協調介入が実現する可能性があるでしょう。
それは、「時代遅れの米ドル安・円高」が幕を下ろすきっかけになるものだと思います。
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