足元の為替市場では、米ドル高と、対米ドルを除いた円高が続いている。
そのような中で、ユーロ/米ドルは「5.6事件」のパニック時につけた最安値の1.2520ドルを更新しようとしているが、これは、市場関係者の思惑を代弁しているかのようにも見える。
それは他ならぬ、ギリシャ問題でEU(欧州連合)とIMF(国際通貨基金)が打ち出した、1兆米ドル近くの巨額支援の有効性、それに伴うEUの財政状況の悪化、そして、EUのインフレ懸念に対する疑問と危惧であろう。
また、英ポンドもユーロと同様である。
英国の政局の混迷はキャメロン政権の誕生によって解消されたが、同政権による赤字削減策の実行力とその有効性について、マーケットは疑心暗鬼だ。その上、イングランド銀行(英国中央銀行)の政策を危惧する声も多い。
ユーロに関しては、巨額支援にも関らず、そのプロセスは具体性に欠けていて、詳細がほとんど公表されていないために、市場関係者の不評を買っているようだ。
また、流通市場で政府債券を購入すると発表したECB(欧州中央銀行)の姿勢に驚く市場関係者も多い。
なにしろ、ECBはドイツ中央銀行の「インフレファイター」の伝統を継承し、これまで一貫してインフレ退治を主要任務としてきたのに、危機への対応策とはいえ、インフレ懸念を招くことをやろうとしているのだ。
■ユーロと英ポンドの「夜明け」は近い!?
ソブリンリスク(国家の信用リスク)はEUに対して、市場に流動性を供給するといった行動を取らせた。
ただ、リーマン・ショック以降、すでに世界中で流動性供給が実施されてきており、EUの行動は流動性の氾濫にさらに油を注ぐようなものだ。金をはじめとする商品相場を押し上げ、インフレリスクが増幅されるといった懸念は大きい。
同様に、ギリシャ問題が飛び火することを危惧した英中銀は、インフレ懸念を軽視してまで緩和策を取り続けるのではないかと見られている。
そのため、EUとIMFによる巨額支援策の発表、および、英国の新政権誕生という好材料が出ても、マーケットはユーロと英ポンドに対して、引き続き不信任の票を投じている。両通貨には明るい兆しが見えない状況にあるようだ。
しかし、「夜明けの前の暗闇がいちばん暗い」と言われるように、兆しさえ見えないことは、逆に夜明けが近いという可能性もある。
現在のマーケットにおけるユーロと英ポンドに関する見方を筆者は「陰の極」の局面と見ており、これはいずれ反転するだろうと考えている。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/米ドル 日足)
もっとも「陰の極」の特徴の1つが、「悪い材料はもちろん売り、良い材料でも悪く解釈して売り」である。
前述した市場関係者の「危惧」はまさにそのとおりであって、現時点では、EUが何をやっても悪い方向へと解釈されるだろう。