■英中銀は利下げ示唆、英ポンド安を容認
みなさん、こんにちは。
前回のコラムでご紹介したとおり、BOE(イングランド銀行[英国の中央銀行])は下記のように利下げと通貨安(英ポンド安)誘導を示唆。
【参考記事】
●英国人はEU離脱決定を後悔(=Bregret)。英中銀が公式サイトで英ポンド安を容認!?(6月30日、西原宏一)
a)イングランド銀行(英中央銀行)のカーニー総裁は30日、英国の欧州連合(EU)離脱選択の影響に対処するため、同中銀は恐らく数カ月内に金融政策を緩和する必要があるだろうとの見解を示した。
b)金融政策委員会(MPC)はポンド相場の動きが調整に役立つと認識
c)英景気は「大幅に減速」すると予想
出所:Bloomberg
このカーニー総裁のコメントは前回のコラムでご紹介した、BOEの公式ウェブサイトに書かれていた内容のとおりです。
【参考記事】
●英国人はEU離脱決定を後悔(=Bregret)。英中銀が公式サイトで英ポンド安を容認!?(6月30日、西原宏一)
そして、BOEの利下げ示唆は、JPモルガンの予測どおり。
彼らの予測によると、7月0.25%、8月0.25%の利下げ予測は変わらず。彼らの予測どおりにBOEが利下げすると仮定した場合、英国の政策金利は0%に。
(詳しくはこちら → 経済指標/金利: 各国政策金利の推移)
Brexit(英国のEU離脱)により、英国景気は減速、不透明な環境下、英ポンドの調整は必要…。
為替市場での反応は、BOEの通貨安誘導に沿って、英ポンドは急落。英ポンド/米ドルは1.3000ドルを割り込み、一時、1.2798ドルまで急落。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/米ドル 日足)
英ポンド/米ドルは引き続き、1.2000ドルへの下落過程に。
■英ポンドは主要通貨に対して、軒並み急落
そして、英ポンドは対米ドルだけでなく、主要通貨に対し、軒並み急落。
その中でも、突出して下落が鮮明なのが英ポンド/円。
Brexit直後に27円もの暴落を演じた英ポンド/円ですが、その後も下落を続け、一時、128.82円まで暴落しています
【参考記事】
●英国はEU離脱で国家崩壊へ踏み出した! セリングクライマックはまだこれからか?(6月28日、西原宏一&松崎美子)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/円 日足)
■イタリアの不良債権問題も再燃、英ポンド/円は120円へ…
英ポンドの対円での下落が鮮明になっているのは、英ポンド/米ドル同様、米ドル/円も続落しているため。
米ドル/円下落の要因は、前回コラムのとおり、Brexitによる不透明な環境下、避難通貨としての円買い需要が治まらないため。
【参考記事】
●英国人はEU離脱決定を後悔(=Bregret)。英中銀が公式サイトで英ポンド安を容認!?(6月30日、西原宏一)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
本来であれば、避難通貨として、円に加え、スイスフランにも資金が集中するのですが、SNB(スイス国立銀行[スイスの中央銀行])の介入懸念があるため、スイスフランは選択されず。
避難先として通貨では円、そして、コモディティ(商品)ではゴールド(金)に短期資金が流れる傾向にあります。
【参考記事】
●ポンドはまだ売りか?カギを握る原油相場。米ドル高・金高の矛盾、どう解釈する?(7月6日、西原宏一&大橋ひろこ)
(出所:CQG)
■英不動産ファンド解約増で市場の不安心理を煽る形に
そして、今週(7月4日~)に入って英国の不動産ファンドの解約が増えているという報道が市場の不安心理を煽る形に。
英EU離脱、市場に第2波 英不動産ファンド解約増
英国による欧州連合(EU)離脱決定の余波が金融市場を揺らし始めた。
英不動産ファンドの相次ぐ解約停止で混乱が広がり、6日の金融市場で日本円や日米欧の国債へのマネー逃避が鮮明になった。
不動産価格下落や信用不安の連鎖が続けば欧州の実体経済にも影響が及びかねない。
「不確実性と重大な経済調整の局面だ」。
英中央銀行イングランド銀行のカーニー総裁は5日、英離脱決定の衝撃波が欧州の金融システムに飛び火するリスクに警鐘を鳴らした。
日米欧の長期金利は過去最低の水準に低下し、日本では6日、20年債利回りが初めてマイナスに沈んだ。円相場が6月24日以来の1ドル=100円台前半まで上昇したほか、日経平均株価は一時、前日終値に比べ500円以上値下がりした。
6日の欧州市場でもロンドンのFTSE100指数をはじめドイツ、イタリアの株価も軒並み下落するなど波乱含みだ。
離脱ショックの「第2波」は英不動産市場が震源だ。6日はヘンダーソン・グローバル・インベスターズが英第2位の公募不動産ファンドの解約を停止。
停止は5件目で、英不動産ファンド市場の5割強が凍結された計算だ。
金融機関などが英国外に拠点を移せばロンドンの不動産価値が低下しかねず、一部投資家らが解約を求めファンドに殺到しているようだ。
ファンド側はすぐに資産を現金化するのが困難で、解約の一時停止に動いている。異例の取引制限を巡り市場では「2007年8月のBNPパリバによるファンド解約凍結を連想させる」(外資系銀行)との声もある。
出所:日経新聞
そして、くすぶっていたイタリアの不良債権問題も再燃。
欧州中央銀行(ECB)が不良債権の大幅削減を求め、イタリア政府による公的資金注入が不可避だとの見方が浮上している。
英離脱で欧州経済の先行き不透明感が強まり、不良債権処理が遅れる欧州銀行への視線は一段と厳しくなっている。英離脱決定後、イタリアのウニクレディトや英バークレイズ、ドイツ銀行などの銀行株は2割以上値下がりした。
英ファンドの支払い停止などを発端に市場の疑心暗鬼が広がれば、英国だけでなく、欧州市場全体でみて問題の大きい銀行が信用不安に見舞われる可能性が高まる。
出所:日経新聞
■英国は不確実性と重大な経済調整の局面に突入
BOEのカーニー総裁が指摘するように、「不確実性と重大な経済調整の局面」に突入。
英国の不動産ファンド解約増とイタリアの不良債権問題再燃というリスク要因による円買いで、米ドル/円の上値はさらに限定的に。
現状、今週末、7月10日(日)の参議院選挙を控え、本邦当局による介入警戒感もあるため、米ドル/円はアベノミクス相場の半値戻し(=100.60円)水準で踏みとどまっています。
【参考記事】
●英国人はEU離脱決定を後悔(=Bregret)。英中銀が公式サイトで英ポンド安を容認!?
ただ、多くの本邦企業の社内レートである110円はおろか、保守的に設定していた105円という社内レートにも、米ドル/円は戻らなくなっている状態。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
BOEによる利下げ予告と通貨安誘導での英ポンド安に加え、英不動産ファンド解約増とイタリアの不良債権問題再燃というリスク要因による円買いで、英ポンドは対円での下落が鮮明に。
今週(7月5日~)も1.2000ドルへの下落過程にある英ポンド/米ドルと、120円への下落過程にある英ポンド/円に注目です。
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