■トランプ大統領就任式に為替はあまり反応せず
就任式も終わり、トランプさんが正式に大統領となりました。ただ、就任式前後の為替市場はそれほど反応しませんでしたね。
米大統領就任式で演説するトランプ氏。しかし、就任式前後の為替市場はあまり反応しなかった… (C)Alex Wong/Getty Images
米ドル/円は米大統領選当日に4円落ちて、トランプさんの当選後は1カ月ちょっとで18円の暴騰。
それから1カ月で6円の調整と、昨年(2016年)11月から極大ボラティリティ相場が続きました。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
今回の就任式でもボラティリティが高まるのでは…と期待感があったのですが、動きませんでしたね。
市場は1月11日(水)の記者会見以上に警戒していましたが、肩透かしを食らった格好です。
みんなが警戒しすぎたのかもしれないですね。ただ、就任式が行なわれたのはNY市場後半。
今日(1月23日)の欧州市場がどう反応するか注目ですし、トランプ大統領の具体的な政策が出てくるのもこれからです。
トランプの米ドル高牽制ツイートひとつで、米ドル/円が急落するのでは…との恐怖感が市場にはまだ残っているようです。しかし、先週(1月16日~)の値動きを見ても日本の機関投資家の買い意欲は強い。
米金利上昇によるコスト上昇により、米国債への投資にかけられていた為替ヘッジを外す動きも出てきているようです。こうした要因が米ドル/円を底堅くしています。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
■東芝の巨額損失が為替に影響も
また、中期の話になりますが、アメリカでの原発事業で7000億円規模の損失を出した東芝は米ドルの調達を迫られることになる。
全額調達するわけではないですが、それなりにインパクトのある金額となるかもしれません。
■米国経済は思った以上に強い
そう考えると、米ドル/円は3月末までにもう一段、上昇する場面がありそうですね。
今週(1月23日~)は1月27日(金)に米GDPが発表されます。昨年(2016年)の米GDPを振り返ると、第1四半期は景気後退すら懸念される数字だったのに年央から持ち直し、第3四半期はプラス3.5%と非常に強い数字となりました。
(詳しくはこちら → 経済指標/金利:各国GDP成長率の推移)
アメリカの景気は非常に強いのでしょう。そこへきてトランプさんは財政支出を拡大させるわけですからインフレが加速するし、米金利は思った以上に早く上昇するのかもしれません。
【参考記事】
●米ドルが魅力的な高金利通貨に変身!? 浜田参与も注目する「シムズ理論」とは?(1月19日、西原宏一)
最近、イエレンFRB(米連邦準備制度理事会)議長からタカ派発言が目立つのも、そうした背景があるのでしょう。
記者会見、就任式とイベントが続きましたが、今週(1月23日~)は3月のFOMC(米連邦公開市場委員会)も見据えてアメリカの実体経済が注目されるかもしれないですね。
ただ、今回の米GDPはプラス2.1%と、前回から見るとずいぶん控えめな予想。というのも第3四半期は南米で大豆が不作だったために米国産大豆の輸出が突発的に伸びた。前回、中国による旺盛な大豆買いがGDPに反映された分が剥落すると予想されます。
プラス2.1%の予想に対して、どんな数字が出てくるかに注目しています。
■過去最高に積み上がった米国債ショートの影響は?
もうひとつ気になるのが、過去最高に積み上がった米国債のショートポジションなんですが……。
債券市場では、為替市場ほど極端なオーバーシュートが少ないので大きな懸念ではありませんが、気になるのはたしかですね。
一昨年(2015年)、「債券王」と呼ばれたビル・グロス氏の発言をきっかけにドイツ国債の利回りが短期間に急騰したことがありましたよね。
【参考記事】
●人生最大の売りチャンスで独国債急落! 独国債利回り急騰でユーロは上値追いか(2015年5月7日、西原宏一)
あのときは為替も国債もポジションが大きく偏っていました。ECB(欧州中央銀行)による追加緩和の憶測からユーロが売られ、ドイツ国債が買われる動きが大きく進んでいた最中に出た発言だったためにインパクトが大きくなりました。
今回は米ドルのポジションがそこまで偏っているわけではないので、米国債利回りが乱高下するリスクはそう大きくはないでしょう。
1月24日(火)にはイギリスで注目の判決が出ます。EU(欧州連合)との離脱交渉を開始するのに議会の承認が必要かどうかの判決。
政府の敗訴、つまり、議会承認が必要とされるだろうとの見通しのようです。
■米ドル/円再上昇は1月末か2月ごろか
米ドル/円は2016年12月15日(木)に高値をつけてから1カ月間調整が続いています。思ったより早く調整が進みましたから、下値は限定的。112円を割り込むイメージはありません。
この連載でも何度か言及しているトランプラリーの38.2%押しが112円ですね。
【参考記事】
●ついに今週は米大統領就任式。ドル/円は112円がトランプラリー継続の分水嶺(1月16日、西原宏一&大橋ひろこ)
●トランプ氏は記者会見で何を語るのか? 米ドル高・金高が同時進行する場合は…!?(1月9日、西原宏一&大橋ひろこ)
機関投資家の買いやヘッジ外しもあり、底堅いのでしょうが、今週(1月23日~)、118円を回復するかというとインパクト不足。上昇再開は1月末か2月ごろでしょうか。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
それまでは112円から117円ぐらいまで、広めのレンジが続くのかもしれませんね。こうしたレンジ相場ではオプションの影響力が強くなりやすいので要注意です。
注目のオプションについてはメルマガ「FXトレード戦略指令!」でも伝えていきたいと思います。
(構成/ミドルマン・高城泰)
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