■指値オペが中期円安トレンドの起点となるか
先週(7月3日~)、日本銀行は2月以来の指値オペを実施しました。
買い入れる国債の利回りは前回と同じく0.11%。市場の実勢が0.11%に達しなかったことで応札はゼロでしたが、円安が進みました。
口先介入に成功したようなものですよね。
そのとおりですね。今年(2017年)1月、トランプ大統領は「中国や日本が市場で何年も通貨安誘導を繰り広げ、米国はばかをみている」と日銀の金融政策に苦言を呈したことがありました。
しかし、日銀は0.10%を超える金利上昇を許さないという意思表示をあらためて行なった格好です。
「YCC」(イールド・カーブ・コントロール)が機能していることを市場にしっかり印象づけましたよね。
先々週(6月26日~)のECB(欧州中央銀行)フォーラムでは、金融緩和の縮小に動くユーロ圏やイギリスに対して緩和継続する日本――スタンスの違いを印象づける発言が出ましたが、それが行動でも示された。
今回の指値オペは中期的な円安トレンドの起点となるかもしれませんね。
■ユーロ/円ロングは世界のコンセンサスに
0.10%に金利がピン留めされた日本と、これからテーパリング(※)へと動き出すユーロですから、ユーロ/円のロングはコンセンサスといってもいいトレードなのでしょう。
(※編集部注:「テーパリング」とは、量的緩和政策により、進められてきた資産買い取りを徐々に減少し、最終的に購入額をゼロにしていこうとすること)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/円 日足)
先週(7月3日~)、ある機関投資家と話す機会がありましたが、ユーロに対して強気の見方でした。
アメリカほどではないものの、欧州でもイノベーションが生まれており、景気も上向いている。ユーロ圏への資金の流入は続くのでしょうし、ユーロ/円の上値余地も大きいと見ています。
先週(7月3日~)はユーロ/円が130円に到達、米ドル/円も114円に乗せてきましたね。
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日本の生保はリスクオフで米ドル/円が急落したところを拾おうと待ち構えていました。
ところがFRB(米連邦準備制度理事会)のイエレン議長がバランスシートの縮小方針を発表してから大きな押し目がないままに上がってきたため、充分に買えていない。
彼らも焦り始めているでしょうから、下がりにくい環境になっています。
【参考記事】
●米ドル/円の6カ月サイクルは継続中! 上昇トレンドは不変! 中期的には120円へ(7月6日、西原宏一)
西原さんの予想だと年末120円ですね。
ただ、目先では115円から115円台ミドルがポイント。
2月以降、何度も上値を抑えてきたレジスタンスであり、115円には大きめのオプションも観測されています。ここを上抜けられるかどうかですね。
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■BOCは利上げへ動くか
イベントを見ると、今週(7月10日~)は12日(水)、13日(木)にイエレンさんの委員会証言、11日(火)にはBOE(イングランド銀行[英国の中央銀行])副総裁のブロードベントさんが講演します。
利上げ支持と据え置き支持が拮抗するBOEでブロードベントさんはカギを握る人物。英ポンドが動く可能性がありそうです。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/米ドル 4時間足)
また、12日(水)日本時間23時にはBOC(カナダ銀行[カナダの中央銀行])の政策金利発表も控えています。
ポロズ総裁が利上げを示唆してから買われている加ドルですが、西原さんはどう考えますか?
事前の予想では利上げが優勢なものの、据え置きと考える人もいて、見方が割れています。これまで利上げ期待で急速に買われてきたため、据え置きなら深めの押し目がありそう。
もし据え置きとなっても会見や声明文で次回以降の利上げが示唆されれば、押したところは買い場となるかもしれません。でも、加ドルは原油価格の影響も大きいですよね。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:加ドル/円 4時間足)
今、原油市場で焦点となっているのはナイジェリアとリビア。
この2カ国はOPEC(石油輸出国機構)が取り決めた減産合意の枠外にあり、絶賛増産中なんです。
7月24日(月)の会合に2カ国を招待して増産凍結を求めるようで、それが決まれば上昇材料になります。
■ユーロ/円、米ドル/円の押し目買い
まとめると今週(7月10日~)の戦略としては対ユーロ、対米ドルでの円安に期待して押し目買いを継続ですね。
加ドル/円は先週(7月3日~)、昨年(2016年)高値に面合わせしたこともあり、ロングを持っているなら政策金利の発表前に利食い、次のポジションはBOCの政策金利発表後の声明文や会見次第ですね。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:加ドル/円 週足)
英ポンド/円はどうですか?
目先はBOEの利上げ期待で買われる場面もあるでしょうが、中長期的な上昇にはクエスチョン。
ロンドンのシティから続々と銀行が撤退しており、Brexit(英国のEU離脱)の影響は大きいと考えています。ユーロ/円、米ドル/円の押し目買いでいいでしょう。
(構成/ミドルマン・高城泰)
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