■米利上げとともに世界的金融恐慌が起こってもおかしくない
今週、7月29日(水)にFOMCを通過。2015年年内利上げは強調されていたものの、利上げの時期に関する示唆はなかった。しかし、示唆がなかったからこそ、早期利上げ(9月)の可能性を排除できず、マーケットは引き続き米ドル全体の強気を維持しているとみる。
2015年年内利上げ確実なら、遅くても12月には利上げを開始するわけだから、10年近いタイムラグを経て、米国はやっと利上げ周期に入る。
それに追随するのが英国だけ(確実ではないが)で、世界経済は不安定な時期に入っていくだろう。
基軸通貨の米ドルは、長らくゼロ金利(実質)の水準にあり、また、たび重なる量的緩和で世界中に過大な流動性を供給してきた。
米利上げが開始すれば、その逆流が始まることを意味するから、発展途上国を始めとして、世界経済に多大な影響を与えるだろう。場合によっては、世界的金融恐慌を引き起こしてもおかしくないかと思う。
株式史上もっとも記憶に残るあのブラックマンデー(1987年)は、直前に西ドイツが抜け駆け利上げをしたことによって引き起こされたと言われており、歴史は繰り返すものなら、今回も十分気をつけないといけない。実際、その兆しがあちこちに見られてきた。
もっとも注目されているのは中国の動向だろう。
中国経済減速が鮮明になっている中、中国株の暴落や不安定さから市場心理は冷え込み、商品相場の総崩れを引き起こした。商品相場の落ち込みは、資源国や多くの発展途上国を直撃し、一段と景気が悪化する様子がうかがえた。
(出所:CQG)
(出所:米国FXCM)
■多くの発展途上国は景気後退+利上げでさらなる衰退へ
世界トップ規模の外貨準備高を誇る中国と違って、多くの発展途上国は自力でコントロールできる状況にないのでは…と疑問視され、そういった疑心暗鬼がマーケットのパニックにつながり、混乱に拍車をかける構造が鮮明になっている。
最近のブラジルの様子はその代表格であろう。ブラジル中央銀行は利上げ休止を暗示、ブラジルレアルは12年ぶりの安値をつけている。
多くの発展途上国はブラジルと同様、激しいインフレを退治せざるを得ないから、景気後退に直面しているにもかかわらず、利上げせざるを得ないという悪循環に陥る。
米利上げ観測による外資流出と、中国景気後退による商品相場下落の二重圧力を受け、ブラジルはマイナス成長に陥り、つい数年前の7.5%の成長とは雲泥の差になっているから、利上げはさらなる衰退を招くに違いない。
そのほか、トルコ、メキシコ、インドネシア、チリ、南アフリカ、マレーシアなどの国々は似た構造にあり、これから通貨の大幅下落局面にさらされるだろう。
こういった不安定な時期には、いわゆる高金利を狙うキャリートレードがかなり危険なゲームだと言わざるを得ない。利上げするからと言って発展途上の資源国通貨に投資するのはアホの極みであり、注意を喚起しておきたい。
■同じ資源国でも、状況をコントロールできる国は?
同じ資源国でも、オーストラリア、ニュージーランド、カナダなどは利下げで対応できるから、状況をコントロールできると思う。
が、それにしても中国景気の一段の悪化があれば、さらなる打撃は避けられないので、中国経済依存度の大きいオーストラリアの景気後退も想定しておきたい。
もっとも、日米をはじめ、先進国の多くは量的緩和を受けて「株バブル」を形成してきた。そして、その長い「株バブル」の期間中、まだ1回も本格的な調整を経験していないから、米利上げを機に1回やられてもおかしくないだろう。
日本の量的緩和策はこれから続くとしても、米国市場の動向や世界景気のスランプの影響を受けるから、これにつられる形で大きく調整する局面を覚悟したほうが無難だ。
となると、リスク回避先として、円が役割を…
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