■米国株3指数が最高値更新も為替市場は蚊帳の外
先週は、8月12日(金)に発表された米小売売上高が予想以上に弱く、PPI(生産者物価指数)も予想外のマイナスとなったことで、米ドル/円が1円の急落。一時、101円を割り込みました。
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言葉は悪いですが、「小売統計ごときで」といった印象ですね。
米ドル/円は米国株や日本株が底堅く推移してもついてこないのに、悪材料には敏感に反応するようです。
【参考記事】
●株は堅調、ドル/円は上値が重い。弱まる日本株とドル/円の相関、原因は日銀にあり(8月12日、西原宏一)
米国株は強いですよね。先週、8月11日(木)にはNYダウ、S&P500、ナスダック総合指数の3指数がそろって史上最高値を更新。1999年以来、17年ぶりのことだそうです。そして、その3カ月後に起きたのがITバブルの崩壊でした。
(出所:CQG)
最近ではジェフリー・ガンドラックやビル・グロス、スタンリー・ドラッケンミラー、カール・アイカーンなど著名投資家がこぞって米国株高に警鐘に鳴らしています。
株式市場は秋口に売られやすいアノマリーがありますし、「来週、8月22日(月)、オリンピックが閉幕したら危ない」と話す人もいますね。
■日銀がETFをいくら買っても円安材料にはならない
ただ、みんなが警戒しているときに限って意外と上がったりもするんですよね。
WTI原油価格も先週(8月8日~)は45ドル手前まで戻しました。背景にあるのが、9月下旬にOPEC(石油輸出国機構)と非OPECの産油国が来月(9月)、非公式会合を開くと発表したこと。
(出所:CQG)
増産凍結の合意に向けた期待が高まっています。原油高も米国株高を支えている一因なのでしょう。その意味で原油の急落には気をつけたほうがいいかも。
原油が再び大きく崩れるときに米国株も崩れる可能性があります。でも会合は9月。まだ思惑相場は続くでしょう。
米国株はもう少し強い相場が続いてから、スケールの大きな下落が始まるのかも。
日本株も底堅いですね。今月(8月)は4日(木)と10日(水)に日銀が約700億円のETFを購入。
下がっても日銀が700億円を買ってくるとなれば、大きくは下がらないのでしょう。
(出所:CQG)
でも、日本株がいくら上がっても為替は一向についてこないですよね。
黒田バズーカ1、2では外国人投資家が主導する株高だったので、日本株買いと同時に為替リスクをヘッジするための円売りが発生し、株高・円安が同時進行しました。
ところが日銀がいくら買おうが為替ヘッジは発生しません。そのため今は株高でも、米ドル/円は蚊帳の外に置かれてしまう。
通常なら米国株や日本株が上昇しているときはリスクオンで米ドル/円も底堅い。ところが今は株の上昇に米ドル/円が追随してこない。
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一方、株が反落する局面では米ドル/円も下落で反応しやすく、上値が極めて重い展開となっています。
【参考記事】
●株は堅調、ドル/円は上値が重い。弱まる日本株とドル/円の相関、原因は日銀にあり(8月12日、西原宏一)
政府・日銀も為替についてはもう手立てがないのかもしれませんね。だから7月みたいにヘリコプターマネーの議論が出てくる。
それ以外に円安に持っていく手段がなくなってきているということなのかもしれません。
日本はすでに擬似的なヘリマネと言えますし、本格的なヘリマネは法的にムリ。
ヘリマネで盛り上がった7月の円安も107円まででしたし、戻りが弱い。株高には反応しなくても株安には敏感ですから、流動性が薄いこの時期、NYダウが少し下がったりすると、米ドル/円は2ケタに入ってしまうのかもしれません。
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■FOMC議事録、年内利上げのシグナルはあるのか
米小売売上高やPPIでいったんは「年内利上げがないんじゃないか」というムードが漂っていますが、今週(8月15日~)は17日(水)深夜にFOMC(米連邦公開市場委員会)議事録が公表されます。
FED(連邦準備制度)は議事録を通じて市場との対話を試みることがあるので、もし年内利上げがあるのなら、何らかのサインが送られるかもしれないですね。
そうなれば、市場は一時的に米ドル高で反応するのかも。
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ただ、米利上げは株式市場にマイナスですから、結局、米ドル/円はあまり上がらないのかもしれません。
トヨタが想定為替レートを102円まで引き下げたのも円安を押しとどめる要因になりそう。
【参考記事】
●株は堅調、ドル/円は上値が重い。弱まる日本株とドル/円の相関、原因は日銀にあり(8月12日、西原宏一)
先週(8月8日~)も102円台は重かったですし、上には輸出企業の売りがズラッと並んでいるのかもしれませんね。
米ドル/円は、アベノミクス円安の半値である100.60円付近を維持できるかどうかに引き続き注目しながら、戻りがあれば売っていきたいですね。
(構成/ミドルマン・高城泰)
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