■相次ぐM&Aも、米ドル/円110円の壁は厚い
ずっと注目されていた武田薬品のM&Aがまとまると、今度はリクルートがアメリカの大手クチコミ求人サイトを買収すると発表。
市場はサプライズと受け止めたのか、米ドル/円は上昇しました。
【参考記事】
●新興国から資金流出! その行き先は…!? 大型M&Aがドル/円押上げるも攻めきれず(5月10日、西原宏一)
(出所:Bloomberg)
リクルートのM&Aは12億ドル。インターバンクで言えば1200本ですから、インパクトは、せいぜい5銭から15銭程度でしょう。
武田薬品のM&Aは約3万本と、文字通りケタ違いですが、リクルートの一件もサプライズではありましたね。
日経平均も2月以来の水準まで上がってきました。急落していた2月6日(火)に作った窓を埋め、その前日(2月5日)に作った窓も埋めに行きそうですね。
NYダウを見ても堅調です。指数への寄与度が大きいシェブロンやエクソンモービルなどが原油高の影響で買われていることが、要因の1つのようです。
(出所:Bloomberg)
(出所:Bloomberg)
ナスダック総合指数も節目の7000ポイントを割るどころか、1000億ドルの自社株買いを発表したアップルに牽引されて7400ポイントまで戻してきました。
NYダウが堅調でナスダック総合指数も上昇、日経平均も買われており、これだけを見るとリスクオンのようなのですが、新興国通貨は相変わらず軟調で、米ドル/円も110円を越えられない。株と為替で温度差を感じます。
(出所:Bloomberg)
■株と為替の温度差、どちらが正しいのか
株と為替の温度差、どちらが正しいと見ますか?
今年(2018年)1月から2月にかけても、株高なのに米ドル/円は下がっていました。そのときは、結局、米ドル/円が先行指標となり、株価が崩れた。今回も、為替がカギを握っているような印象です。
NYダウを押し上げる材料の1つとなっている原油高ですが、背景にありそうなのがベネズエラ。
石油精製・貯蔵施設の差し押さえなどにより、生産量が30年ぶりの低水準に落ち込んでいるそうです。これが需給をタイトにさせているのかもしれません。
ただ、投機筋のポジション状況を見ると、3週連続してロングが減少。価格とポジションの逆行現象が起きています。少しずつ買い手の利食いが入っているようなので要注意ですね。
【参考記事】
●インフレ率2616%、通貨暴落のベネズエラ。 仮想通貨ペトロを政府が発行して危機脱却!?
(出所:Bloomberg)
■加ドルは英ポンドの軌跡をたどるのか
オイルカレンシーの1つである英ポンドは、先週(5月7日~)、BOE(イングランド銀行[英国の中央銀行])が利上げを見送って、急落しました。
原油高や利上げ、それに、武田薬品のM&Aによる英ポンド買いの思惑と好材料がそろい、買われていただけに振り落としも強烈。
【参考記事】
●武田薬品の英シャイアー7兆円大型買収の行方に注目! 巨額の英ポンド買いの噂も?(4月26日、西原宏一)
(出所:Bloomberg)
同じくオイルカレンシーである加ドルでも、7月と、時期は少し先ですが、利上げの思惑が高まっています。
原油高と景気拡大が追い風のようで、利上げの織り込み度は75%まで上昇してきました。
7月までは、まだ時間がありますし、マーケットは、だいぶ利上げを織り込んできています。英ポンドと同じことになりかねないので要注意ですね。
カナダは、NAFTA(北米自由貿易協定)の再交渉というリスクがありますし、原油が下がったら元も子もない。
加ドル/円のチャートを見ても、レンジを上に抜けてから戻ってきており、ブルトラップ(※)となるリスクにも警戒ですね。
(※編集部注:「ブルトラップ」とは、相場が上方向へブレイクした直後に、下方向へ反転すること)
(出所:Bloomberg)
■中国副首相の訪米。大詰めのイタリア連立交渉
今週(5月14日~)は、経済指標が少なめ。注目は、15日(火)の米小売売上高くらいでしょうか。
あとは政治情勢ですよね。今週(5月14日~)、中国の劉副首相が訪米し、通商協議を行なう予定です。何か漏れ伝わると、材料視されそう。
また、3月の総選挙以降、政治的空白が続いていたイタリアでは連立交渉の合意が近づいているようです。ユーロに影響を与えるかもしれませんね。
ユーロは、やはり上値が重いのでしょう。IMM(国際通貨先物市場)ポジションを見ても、まだロングが積み上がったまま…。
1.25ドルの高値からすでに700pips下げましたが、しばらく上値の重い展開が続くのではないでしょうか。
(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)
(出所:Bloomberg)
■好材料そろうも上がれない米ドル/円
今週(5月14日~)の戦略は、どう考えますか?
株高や日本企業によるM&A、原油高といった好材料がそろっても米ドル/円は110円を明確に越えられず、ダブルトップとなっています。
(出所:Bloomberg)
2月と同じように為替が先行指標となるのであれば、株式市場が崩れて円高が進行することになりますが、売るのは方向性が定まってからでも遅くはない。
今週(5月14日~)前半の様子を見ながら、売り時を探っていきたいと思います。
(構成/ミドルマン・高城泰)
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