■月曜早朝からユーロが乱高下した原因は?
先週(6月25日~)は、29日(金)のEU(欧州連合)サミットで難民問題が合意と報じられてユーロが急騰しましたね。
(出所:Bloomberg)
今日(7月2日)も朝から動いています。早朝にドイツのゼーホーファー内相が合意を拒否と報道されたことからユーロ/円はギャップダウン(窓開け)して取引開始。
ところが、今度はゼーホーファー内相が辞任を表明との報道が出て窓埋めと、ドイツ政治のヘッドラインで乱高下しています。
(出所:Bloomberg)
ゼーホーファー内相辞任の報道を、市場はいったん「メルケル政権の崩壊は遠のいた」と好感したようですが、東京市場の反応はダマシになることが多いため、欧州市場の反応をみたいところですよね。
6月29日(金)の引け間際には、ドイツ銀行がFRB(米連邦準備制度理事会)のストレステストに落第、とのニュースも出ました。
とくにユーロ売りの反応はみられませんでしたが、これにはレパトリ警戒もあるのだと思います。ドイツ銀行が資金不足となれば、在米資産などを売ってユーロに戻す動きが強まる可能性があるためです。
そのため、ドイツ銀行問題は一概にユーロ売りとは言えないのですが、難民問題やメルケル政権への不安はユーロ売りの材料となるのでしょう。
■米ドル/円に三役好転、長期トレンドライン上抜けの可能性
7月2日(月)の東京市場では米ドル/円が一時、111円台を回復しました。これはどういった要因なのでしょうか?
ユーロ/円の上昇にひっぱられたのでしょう。今はユーロ/円がドライバーとなっている印象です。
6月29日(金)のEUサミットに対する反応をみてもユーロ/円主導でした。また、今朝(7月2日)については東京市場でCTA(commodity trading adviser、商品系ヘッジファンド)が米ドル/円を買っていたことも上昇材料となったようです。
(出所:Bloomberg)
このまま112円台に乗せるようだと、日足の一目均衡表がはっきりと三役好転へ。
さらに、2015年6月の高値125円から引いたトレンドラインも上抜けし、テクニカル的には大きく改善することになりますね。
(出所:Bloomberg)
(出所:Bloomberg)
注目ではありますが、このまま米ドル/円がトランプラリー高値の118円台を超えていくような上昇トレンドになるかというと、そこまでのイメージはまだありません。
米ドル/円が上昇するためには米10年債利回りが、株価を崩さないようジワジワ上昇することが必要条件のひとつですが、足もとでは米10年債のショートが積み上がっています。米金利の上昇は難しいのではないかと。
(出所:Bloomberg)
(出所:Bloomberg)
■6日、対中関税は発動されるか。米雇用統計も
今週(7月2日~)の6日(金)は米雇用統計ですが、同じ日にはトランプ政権の対中関税第一弾の発動が予定されています。
雇用統計は堅調な数字が予想されていますが、より注目度が高いのは米中貿易摩擦。
本当にトランプ政権が対中関税を宣言どおりの規模で発動するのか、発動したときに中国が報復関税を発動するのか。
発動が延期されたり、規模が縮小されたりすれば、逆にリスクオンとなる可能性はありませんか?
マーケットには「米中貿易摩擦は口先だけ」との油断もあります。
昨年(2017年)はリスクオフを過度に警戒していましたが、今年(2018年)は反対にリスクオフの織り込みがあまり進まない。
そうであれば、本当に米中が関税を発動したときにはマーケットに負荷がかかると考えています。
■トランプとサウジアラビア国王のホットラインで原油増産か
週末には原油関連のニュースも出ました。火元はトランプ米大統領のツイッター。サウジアラビアのサルマン国王と電話で会談し、200万バレルの増産で合意した、とツイートしています。
【参考記事】
●住友商事・高井裕之氏に聞く原油相場(3) 驚きのサウジ大改革を進める「MBS」とは?
これを受けて今朝(7月2日)のWTI原油は下落へ。ただ、サウジアラビアにはそこまでの増産余地がないのでは…との指摘もあり、実効性には疑問の声も出ています。
(出所:Bloomberg)
11月の米中間選挙へ向けたパフォーマンスかもしれませんね。「ガソリン価格が安くなるよう、がんばっているんだ」と。
2人の電話で増産が決まってしまうようだとOPEC(石油輸出国機構)が形骸化してしまいます。サウジアラビアとしてもそう簡単に増産するわけにはいきませんよね。
先週(6月25日~)にはアメリカが同盟国に対してイランからの原油輸入を停止するよう要請し、WTI原油は74ドルまで高騰していました。
増産要請にサウジアラビアがどう応えるか、実際の生産量を見極めていくには時間がかかりますが、原油上昇はいったん沈静化するのかもしれません。
■今週は豪ドルの戻り売りを狙いたい
西原さんは今週(7月2日~)の戦略をどう考えますか?
今週(7月2日~)は引き続き、対円や対米ドルで豪ドルの戻り売りを狙っていきたいと思います。
【参考記事】
●2018年前半の為替相場を振り返ろう! 「ローリング・ベア」で弱気相場が継続する?(6月28日、西原宏一)
(出所:Bloomberg)
(出所:Bloomberg)
注目は引き続き上海株総合指数。3000ポイントの節目を割った上海総合指数ですが、中国当局に買い支えようという意思はみられませんし、7月6日(金)に米中が関税を発動すれば豪ドルにはネガティブです。
(出所:Bloomberg)
ただ、今週から7月。新しい期に入るため資金フローが変わる可能性があります。新しい期の方向性を確認したいため、週初は高いレバレッジはかけず、トレードは慎重に入りたいですね。
(構成/ミドルマン・高城泰)
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