原則、毎週水曜日に連載しているエミン・ユルマズさんのコラム、「トルコリラ相場の明日は天国か? 地獄か?」ですが、今回は特別に、トルコ中銀の大幅利上げ翌日というホットなタイミングで、緊急寄稿していただきました(ザイFX!編集部)。
■トルコ中銀は6.25%の大幅利上げを実施
昨日(9月13日)行われた政策会合でトルコ中銀は政策金利を17.75%から24%に引き上げました。
表向きは625bp、すでに裏口利上げで上げていたぶんを除くと475bpの大幅な引き上げとなります。
前回のコラムで、トルコ中銀は少なくとも500bpの利上げをすべきと指摘していましたが、この利上げでトルコ中銀は、市場に満額回答をしたと言えます。
【参考記事】
●9月会合でトルコ中銀は500bp利上げ必要!? まさかの無策なら、トルコリラ/円は14円へ…(9月5日、エミン・ユルマズ)
●トルコ中銀が150bpの裏口利上げを実施!? 犠牲祭で小動きも、トルコリラは底堅い!(8月22日、エミン・ユルマズ)
政策会合の直前にエルドアン大統領は、政策金利の引き上げに反対していることをあらためて示す内容の演説を行っていました。
その直後の利上げは、市場に、トルコ中銀が独立であるという強いメッセージを伝える役割もあったと思います。残念なのは、中銀がこんなに強く動けるのであれば、7月に利上げを行えば、効果が今よりも抜群に高かったことです。
利上げ直後にトルコリラが急騰する場面もありましたが、売り圧力も強く、米ドル/トルコリラは、6.0リラのラインを割らずに推移しています。
(出所:Bloomberg)
ただし、事前に利上げ期待で上がっていたぶんも考慮すると、今回の利上げは、トルコリラの価値を約10%押し上げました。
■利上げ直後に大量のリラ売り・米ドル買いが出た理由
トルコリラの売り圧力が強いのは、トルコ人による実需のトルコリラ売り・米ドル買いが最大の要因です。
(出所:Bloomberg)
ブルームバーグのニュースによれば、トルコ人が利上げ直後の1時間で約10億ドル分の米ドル買いを行っていたそうです。私も、利上げ直後に現地のエコノミストの友人にその動きを教えてもらって、ツイッターで共有しました。
■7-9月期以降、利上げとトルコリラ急落の影響が…
今週(9月10日~)は、トルコの2018年4-6月期GDPの発表もありました。トルコ経済は、4-6月期に5.2%のGDP成長率を記録しました。
(出所:Bloombergのデータを基にザイFX!編集部が作成)
2018年6月の選挙に向けて、政府は景気刺激策を行い、ラマダンで年金受給者への特別ボーナスなども給付したので、この数字に違和感はありません。
しかし、お金を印刷し過ぎたことへのしっぺ返しが8月にきて、トルコリラ急落の要因を作ったと考えています。
【参考記事】
●下落止まらぬトルコリラ相場を天才トルコ人ストラテジストが解説! 山場は6月大統領選
トルコ中銀による利上げとトルコリラ急落のGDPへの影響が、7-9月期以降の数字に大きく表れ、トルコの景気に急ブレーキがかかると予想しています。
■トルコと米国との関係が改善されると予想するワケは?
投資家の皆さんが、もっとも気になることの1つは、トルコと米国との関係ですが、私は改善の方向に向かうと予想しています。
エルドアン大統領は、今月(9月)末に国連総会で米国を訪問する予定で、その前にブランソン牧師が釈放されると考えています。
【参考記事】
●トルコ人ストラテジストが分析! 牧師釈放は近そう。ならばトルコリラ/円は19円まで反発(8月15日、エミン・ユルマズ)
そう考える理由は、先週(9月3日~)行われたトルコ、ロシア、イラン首脳による3カ国会談です。
イランの首都、テヘランで開催されたトルコ、ロシア、イランによる3カ国会談でがっちりと握手する首脳。しかし、懸案事項だったシリア問題の溝は埋まらなかったようだ… (C)Anadolu Agency/Getty Images
3カ国の首脳は、イランの首都、テヘランでシリア情勢を協議するために集まりました。問題になっているのは、シリア政府軍(=ロシア、イラン)による北部奪還作戦です。北部にトルコが支援している反政府勢力が支配しているイドリブという町があります。
この町と周辺には、約2百万人のシリア人がいると想定されています。トルコ政府が恐れているのは、奪還作戦による人的被害とトルコに新たな大量の難民が押し寄せることです。
テヘランのサミットでエルドアン大統領は休戦を提案しましたが、ロシアとイランは受け入れませんでした。結局サミットでは、具体的な解決策が1つも得られないまま終わりました。
■米国と関係改善で、トルコリラ/円は20円超えを予想
この問題は、エルドアン政権にとって外交的に大きなジレンマを意味します。
米国と関係が悪化しているため、ロシアやイランに擦り寄ったのはいいですが、シリア問題でこれらの国とトルコの国益が衝突しているのです。トルコが再び、米国に顔を向けなければいけない状況になっています。
今月(9月)の国連総会は、そのいいきっかけだと考えます。国連総会の前に、ブランソン牧師の釈放があると予想しているのはそのためです。
昨日(9月13日)のトルコ中銀の利上げに続いて、米国との関係改善もあるとすれば、トルコリラは対円で20円を超えると予想しています。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:トルコリラ/円 日足)
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)