■ユーロは売り一色のムードが後退し、反発基調に
今週に入り、為替相場に変化が現れてきた。ユーロは売り一色のムードが後退し、対米ドル、対円でも反発してきた。
また、「キャリートレード」が行われている可能性が濃厚なユーロ/豪ドルでさえ、買い戻しが優勢となっている(「過去最高のユーロ・ショートはバブルか?ユーロキャリーが広がりつつある可能性も」を参照)。
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現執筆時点では、ユーロ/米ドルは1.2972ドル、ユーロ/円は100.06円、ユーロ/豪ドルは1.2453ドルまで、それぞれ反発する場面が見られている。
■先週の「S&Pショック」を機にユーロの買い戻しが始まった
もっとも、このコラムでも重ねて指摘してきたように、ユーロのショートポジション(売り持ち)が過大に積み上がっていたことから、その決済に迫られ、ユーロの買い戻しはいつあってもおかしくない状況だった。
そのきっかけとなったのは、先週の「S&Pショック」であった。
一般的には、好材料が出てからユーロの買い戻しが見られるようになったとされているが、実際のところは、「悪材料出尽くし」による買い戻しといった側面が強い。それを後追いするような形で、ユーロにとっての良い材料が出始めた。
皆さんもご存知のように、ユーロにプラスに作用した材料としては、IMF(国際通貨基金)の増資やギリシャ政府が民間債権者との協議を再開したこと、フランス、スペインの国債入札が順調に進んだことが挙げられる。
だが、ここで注意していただきたいのは、IMFの増資とギリシャの債務交換協議の行方が、現執筆時点でまだはっきりしていないことだ。特に、後者の債務交換協議のほうは難航していると聞こえてくる。
それにも関わらず、マーケットはこういったものを「好材料」として解釈している。これこそが「値動きの後追い」であり、「解釈の後づけ」にほかならない。
■ユーロ安一巡のシグナルが先週末に出ていた
じつは、ユーロ売りが一服してリバウンドしてくるシグナルが先週末時点で点灯しており、トレーダーならば見逃せない状況にあった。
そのロジックについては、次の文章によって説明できる。後づけではないことを証明するために、筆者が発行している会員向けのレポートから直接引用させていただこう。
まずは、1月16日(月)の朝方に発行した週報より、ユーロに関する部分である。
「ユーロサイド、悪材料出尽くし? 想定範囲とは言え、S&PによるEU諸国、特にフランス格下げ決定が依然マーケットに衝撃をもたらしている。もっとも、フランスの格下げが一番危惧されただけに、先週末ユーロを初め、諸外貨の急落も当然の成り行きと見るが、かなり広い範囲で想定されるだけに、EUサイドの悪材料は一旦出尽くした感がある。
対照的に、昨年21日実施されたECBによる3年物長期流動性供給の実施がEU銀行の資金調達環境を大幅に改善し、先週イタリア、スペインの国債入札の成功もあってEUの状況はむしろ落ち着きを見せている。
しかし、マーケットは年末年始にかけて専らEUの情勢悪化シナリオを織り込み、S&Pの決定がさらに拍車をかけることとなったが、売りポジションが極端なまでに積み上げられている状態は、行き過ぎ感を否めない。
勿論、引き続きギリシャデフォルトの可能性、或いはEU銀の資本増強計画の難航など悪材料がこれからもユーロの頭を押さえる公算が大きいが、ポジション整理の需要が高まった分、前記EU状況の落ち着きがこれから材料として浮上してくる確率も高まる。『S&Pショック』から一旦立ち直るか」
さらに…
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