欧州問題が再びマーケットの焦点となっている。
現職フランス大統領の敗北からギリシャ再選挙まで政局不安が続き、常に懸念されてきたギリシャのEU(欧州連合)離脱問題に加え、スペインの銀行問題も浮上した。
EU危機は一段と拡大しているように見える。
■EU危機の深刻さが実感できないユーロ/米ドルの値動き
ところで、肝心の為替レートは、ファンダメンタルズの激動と比べ、つまらないほど静かな値動きだ。ユーロ/米ドルの1.2900ドルを割るか割らないか程度の下落ぶりでは、とてもEU危機の深刻さが実感できない。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)
一般論として、米QE3(量的緩和策第3弾)の可能性が米ドル全体の頭を重くしているといった見方は多い。
一方、ドル資産はリスク回避先と見られる傾向も強いため、最近の株の調整具合からは、本来は米ドルがもっと買われてもおかしくないとも言える。
今のところ、株安に敏感に反応したのはむしろ円という見方も根強い。米ドル/円をはじめ、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)全般のパフォーマンスから、米ドルよりも円がリスク回避先としての役割を果たしているという見方だ。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨 VS 円 日足)
両論ともそれなりに理屈は合っているが、見逃されやすい要素として、以下の2点を指摘しておきたい。
■EUの混乱が深刻化すればするほどユーロは買われる!?
まず、第1に「危機こそ強い」という現象だ。
ファンダメンタルズが悪化したからこそ、通貨が逆に買われた好例は他ならぬ、日本の円であろう。
バブル崩壊後、企業のデレバレッジと資金の国内還流が大きな流れとして円高に寄与したことは記憶に新しい。
(出所:米国FXCM)
(出所:米国FXCM)
いわゆる「理外の理」である相場の理屈はなかなかリアルタイムでは理解されにくいが、往々にしてその後よく検証すれば、実に理に適う部分が多いのだ。
今の欧州で、同じ現象が起こっていると言われたら、みなさんは納得するだろうか。
また、同じ理屈で推測していくなら、今のユーロは「買われすぎ」ではなく「売られすぎ」で、EUの混乱が深刻化すればするほど、これからユーロは買われるだろうといった結論に同意できるだろうか。
かなりクレイジーな見方だと思われるだろうが、2005、2006年に「不況だからこそ円高」といった見方が嘲笑されたように、もしかしたら相場の真実はクレイジーの方に近いのかもしれない。
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