■ユーロ/米ドルはもう少し上昇余地があると考えたい
前回のコラムの中で、米ドル/円は、ポジションがあまり溜まっていないので、下落リスク(米ドル安・円高)はそれほどないが、ユーロ/米ドルはポジションが、まだかなりショートなので、もう少し上昇(ユーロ高・米ドル安)するかもしれないという予想をしました。
【参考記事】
●日経平均2万円達成で官製相場も終盤に!? 調整済みのドル/円よりユーロ/ドルに注意(5月7日、今井雅人)
直近の動きを見てみると、大体そのような動きになっていると思います。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 4時間足)
直近のIMM(国際通貨先物市場)のポジションの様子を見ても、あまりショートポジションが減っていません。

(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)
であれば、もう少し上昇の余地はあると考えておいた方が良いのではないかと考えています。
■GPIFなどが米ドル/円の利益確定売りを飲み込んだか
そこで、1つ疑問があります。
IMMの米ドル/円ポジションを見ると、2015年に入って米ドル買い・円売りポジションが、段階的に減ってきていたにもかかわらず、相場は崩れませんでした。

(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 週足)
つまり、投機筋が、米ドル/円の買いポジションを減らすために米ドル/円を売っても、米ドル/円は下がらなかったということになります。
それは、どうしてでしょうか?
おそらく、米ドル/円が120円を達成したことで、投機筋の中に高値警戒感が出てきて、1回利益を確定しようという動きが出たのでしょうが、その間も、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)のような公的資金から断続的に米ドル買い・円売りが出てきたので、利益確定の米ドル売りを飲み込んでしまったのだと思います。
■ユーロ/米ドルはショートカバーの影響で上昇
一方、ユーロ/米ドルは、売り材料が満載だったため、投機筋は全力で売りを仕掛けてきたのですが、どうも分が悪くなってきました。
そのため、ユーロ/米ドルの買い戻しを少しずつ出しているのですが、米ドル/円であったような実需の米ドル買いが出てこないため、相場もショートカバーの影響で上がってしまうという状態になっています。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 週足)
おそらく、市場では、このようなことが起きてきたのではないかと私は考えています。
そう考えれば、ユーロ/米ドルは、まだ上昇する余地があるという見方もできるということではないでしょうか。
■株価の「5月急落説」は、考えにくいか
さて、金融市場全体に目を向けてみます。
一部の関係者から株価の「5月急落説」などが出ていますが、これまで株価を上げてきたのが、GPIFのような長期投資家で、日本の個人投資家のような人たちは、むしろすでに株を売ってしまった人が多い状況を考えれば、相場が急落するということはあまり想像できません。
日経平均が2万円に達したことで、市場に達成感が出たことはそのとおりだと思いますが、だからと言って、大きく反落するような展開ではないと思っています。

(出所:株マップ.com)
原油価格は、60ドル近辺で安定してきています。

(出所:米国FXCM)
為替相場も、まだ大きな動きが出るとは思えません。
そんな中、ユーロ/米ドル、ユーロ/円はポジション調整の影響で、もう少し上昇する可能性があると考えておきたいと思います。
■ギリシャ問題の進捗いかんでユーロはさらに上昇へ
最後に、ギリシャの状況を確認しておきます。
ユーロ圏諸国は、5月11日(月)に財務大臣の会合を開き、ギリシャへの対応を協議しました。
これまでより、前進は見られましたが、いまだ合意には至っていません。
報道されているところによれば、ギリシャは税収を増やすために付加価値税の増税は実施すると言っているものの、EU(欧州連合)諸国が求める年金支給額のカットなどにはまだ抵抗しているようです。
5月12日(火)が期限であったIMF(国際通貨基金)への約7億5000万ユーロの返済は実施したようですが、その内、約6億5000万ユーロは、ギリシャがIMFに保有している準備金を取り崩して返済に充てました。
この分に関しては、数週間後に戻さなければいけないようです。
これから月末には、公務員給与や年金の支払いが控えています。また6月に入ると5日(金)、12日(金)、16日(火)、19日(金)とIMFへの返済期限が次々とやってきます。
EUとの支援協議で合意できれば、保留状態の約72億ユーロの融資が実施されるので、まさに、この協議が生命線となってくるわけです。合意されたとなれば、一時的かもしれませんが、さらにユーロが上昇するという展開が見られそうです。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)
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