ザイFX! - 初心者必見のFX総合情報サイト

「トルコリラ/円」スワップポイント比較
----年--月--日(-)日本時間--時--分--秒
陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」

ドラギ・バズーカ失敗で黒田氏意気消沈!?
「中銀の裏に道あり」説、またまた的中!

2016年03月11日(金)17:35公開 (2016年03月11日(金)17:35更新)
陳満咲杜

FXトレーダー・羊飼いに聞く、初心者におすすめのFX口座の選び方とは?

■ドラギ・バズーカどころか、ドラギ・核爆弾炸裂!

 昨日(3月10日)、「ドラギ・バズーカ」は炸裂した。ECB(欧州中央銀行)は主要3金利の利下げを実行し、QE(量的緩和策)規模と買い入れ範囲の拡大も同時に実施した。

 ここまで踏み込むと、いつもの「ドラギ・マジック」はもとより、「ドラギ・バズーカ」という言い方でも軽く感じるほどだ。緩和戦争の最終兵器、つまり核爆弾が持ち出されたという市場関係者がいるくらいである。

 この決定に反応し、ユーロは取りあえず暴落し、たった数分でユーロ/米ドルは120pipsの下落を記録、東京時間22時40分前後に1.0820ドルの安値に達した。ユーロの下落と相俟って、金は1236ドルの安値をつけ、ユーロ/円も100pipsを超える下落を記録した。

ユーロ/米ドル 1時間足
ユーロ/米ドル 1時間足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 1時間足) 

ユーロ/円 1時間足
ユーロ/円 1時間足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/円 1時間足

 ウォール街は総じてECBの利下げを想定していたものの、3つの金利(リファイナンス金利、上限金利の限界貸出金利、下限金利の中銀預金金利)の同時利下げをビッグサプライズととらえ、シティバンクは緊急ストラテジーを出し、ユーロ売りを推薦したほどだった。同ストラテジーは以下のとおりだった。

●1.0879ドル前後ショート、ターゲットは1.0400~1.0500ドル、ストップは1.1080ドル

 しかし、このストラテジーを見て、筆者は違和感を覚えた。

 なぜなら、ユーロは急落したものの、マーケットが本当にECB政策をもってユーロ売りを仕掛けるにしては、なお物足りないと感じていたからだ。

 また、少なくとも1.08ドルの節目を割らない限り、ユーロ安一辺倒とは言えず、また、実際、1.08ドルの節目はなかなか割れなかったから、言われるほどマーケットにはユーロの安値を追う勢いが感じられなかった。

 何しろ、1.08ドルの節目は心理的大台であるほか、マーケットのサポート密集エリアであるから、この節目を下回ることが先決条件であった。

■ドラギ氏の「余計」な一言で相場は大逆転!

 その上、筆者は今年(2016年)の為替の動向が中央銀行の思惑の逆に動く2016年2月19日コラムをご参照)と考えているから、ドラギさんの会見で何らかのメッセージが発信され、相場の逆転をもたらすのでは…と期待していた。そのとおり、ドラギさんは期待を裏切らず、「余計」な一言で相場の大逆転を引き起こした。

【参考記事】
2016年は「中銀の裏に道あり、花の山」。為替は中央銀行の思惑と逆に動く!(2016年2月19日、陳満咲杜)

 氏は「一段の金利引き下げが必要になるとは思わない」と言い、日銀が導入している預金金利の階層構造の可能性も否定した。

 これ受け、マーケットは一斉にユーロショートポジションを手仕舞い、今度は逆に壮大なショートポジションの踏み上げが見られた。状況は昨年(2015年)12月のECB会合後とそっくりであった。

■歴史は繰り返す、前例を思い出した者が勝つ

 シティバンクさんのストラテジーが踏み上げられるに違いないと考え、ここぞと筆者もストラテジーを出した。もちろん反対のロングだ、内容は以下のとおり(23:03前後)。

●1.1035ドルで成行の買い、ターゲットは1.1200ドル、指値の買いは1.0970~1.0990ドル、ストップは1.0840ドル

 このストラテジーが成功する確率は非常に高いと考え、これを出した後、筆者はパソコンの電源を切り、寝た。

 なぜなら、ECB政策をみて一斉にユーロ売りを仕掛けた筋が多かっただけに、この踏み上げは簡単には終わらず、また、値幅が拡大していく公算が高かったからだ。その上、前例があったから、より実行しやすかった。

 その前例とは、言うまでもないが、昨年(2015年)12月3日(木)ECB金利決定後の大逆転だ。

 当時もユーロは1.0506ドルの安値をつけたあと、一晩で最大475pipsの上昇幅を達成していたから、昨日(3月10日)、1.0821ドル安値を起点とした切返しは、400pip程度と考えても1.1221ドル前後までの余地があり、自分の1.12ドルのターゲットは達成されるはずだと自信を持っていた。

ユーロ/米ドル 5分足(2015年12月3日)
ユーロ/米ドル 5分足(12月3日)

(出所:CQG)

ユーロ/米ドル 5分足(2016年3月10日)
ユーロ/米ドル 5分足(3月10日)

(出所:CQG)

 実際昨日(3月10日)の高値は1.1218ドルだった。 

ユーロ/米ドル 日足
ユーロ/米ドル 日足

(出所:ヒロセ通商

「歴史は繰り返す」ということわざが、まさに昨日(3月10日)の市況を形容するにはぴったりだ。

 あの口先介入能力の高いドラギ氏がどうして口を滑らせたかと市場関係者は驚きを禁じ得ず、また、愕然として相場を見ている間に、すばやく前例を思い出した者が割と簡単に勝っていた。この意味では、相場における勉強は過去のケース・スタディにあると言っても過言ではなかろう。

 筆者はドラギ氏の失敗云々ではなく、マクロの視点で今回の市況をとらえるべきだと思う。何しろ、2016年2月19日(金)のコラムにて指摘させていただいたように、「中銀の裏に道あり、花の山」だから、冷静に相場の反騰を確認してからショート筋を踏み上げていくことは、本来、誰でもできる簡単な戦略と戦術だと思う。ECBも日銀も前例を作ってくれていたから、なおさらだ。

【参考記事】
2016年は「中銀の裏に道あり、花の山」。為替は中央銀行の思惑と逆に動く!(2016年2月19日、陳満咲杜)

■ドラギ氏の失言がなければどうなった?

 ということになると、1つ仮説を持ち出したい。それは、昨日(3月10日)、ドラギ氏が「失言」しなかったらどうなったかである。

 結論から申し上げると、筆者は同じ結果になると思う

 つまり、ドラギ総裁の言葉がなければ、ユーロは現在の水準にないと思うが、ユーロ売りがガンガン行われているとも思えず、安値圏での変動を経て、また、切り返してくる公算が高いと思う。

 何しろ、今年(2016年)1月末の日銀の失敗を思い出してほしい。

 マイナス金利付きQQE(量的・質的緩和策)に踏み切る日銀の政策に反応し、米ドル/円は発表当日(1月29日)に121.69円の高値をつけたものの、その後、一転して急落、「9連陰(※)」をもって、2月11日(木)に110.94円まで下落した経緯があった。

 だから、今回、ECB決定後のマーケットの反応も同じになる公算が大きいと思っていた。

(※編集部注:各社が提供しているチャートによって、9連陰になっているものとなっていないものがある。以下のザイFX!のチャートでは微妙になっていない)

米ドル/円 日足
米ドル/円 日足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足

 要するに、中央銀行の思惑を逆張りすることが今年(2016年)の戦略として正解であれば、ECB会合後のメインストラテジーはユーロ売りではなく、ユーロ買いのほうが正解であった。

 違いは当日やるか、それとも後日やるかのみだった。このあたりのことを悟れないと、一生相場の真実に近づけないかもしれない、曰く、相場は理外の理だ。

■黒田総裁はおそらく動揺。日銀マイナス金利拡大はない!?

 ドラギ氏の今回の失敗をみて、もっとも意気消沈している方は日銀総裁の黒田さんに違いない。マイナス金利の再拡大を企てる黒田さんにとって、ECBが成功してくれたら良かったところだが、結局、今回も不都合な真実が突きつけられた形となった。

 すなわち、マーケットは量的緩和策にもう、うんざりしているのだ。もう効かないからやめてくれ、とマーケットの抗議と報復が凄まじいことになっている。

 だから、表の強気と裏腹に、日銀内部も黒田さんご自身も動揺しているはずだ。

 大胆に予想しておこう。

 まず、おそらく、さらなるマイナス金利の拡大はもうない

 次に、仮にあったとしても、前回と違って、当日中に米ドル/円が売られ、その後も暴落していくだろう。なぜなら、学習機能のない中銀と中銀総裁に罰を…とマーケットが一斉に動くはずだからだ。

 ちなみに、米ドル/円は次回の日銀会合を待たずにすでに動いている。そう、ベア(下落)トレンドへの復帰である。

 日銀や黒田さんがこれからどう動くのであれ、米ドル/円は105~106円の打診をターゲットとするだろう。とはいえ、筆者は学習能力のない日銀に秘かに期待している。なぜなら、高いところで米ドル売り・円買いするチャンスを提供してくれるからだ…はい。市況はいかに。

セントラル短資FX「FXダイレクトプラス」
人気のザイFX!限定タイアップキャンペーンをPickUp!
FX初心者のための基礎知識入門
トルコリラスワップポイントランキング ザイ投資戦略メルマガ 新しいFXの自動売買!「世界通貨セレクト」の3つの魅力とは?《トライオートFX》
トルコリラスワップポイントランキング ザイ投資戦略メルマガ 新しいFXの自動売買!「世界通貨セレクト」の3つの魅力とは?《トライオートFX》
『羊飼いのFXブログ』はこちら
↑ページの先頭へ戻る
バイナリーオプション比較