■マクロン圧勝でユーロは「セル・ザ・ファクト」か
週末、5月7日(日)のフランス大統領選挙の決選投票は、マクロン候補が予想どおりに圧勝しました。
先月(4月)、オプション市場ではBrexit(英国のEU離脱)決定時以上に警戒感が強まっていましたが、第1回目投票を波乱なく通過したことでルペンリスクは後退。
マーケットは一転してマクロン勝利を織り込みにいき、ユーロ/円やユーロ/米ドルは急騰しました。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ円 日足)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)
マーケットはマクロン当選を十分に織り込んでいるため、今週(5月8日~)は、セル・ザ・ファクトによるユーロ下落を予想しています。
FOMC(米連邦公開市場委員会)の利上げ後に、セル・ザ・ファクトで米ドル/円を売ったのと同じ戦略ですね。
【参考記事】
●イベント重なる3月15日に注目! FOMCで米利上げ決定、セル・ザ・ファクトとなるか(3月6日、西原宏一&大橋ひろこ)
●セル・ザ・ファクトによる米ドル安が継続。ドル/円は111.60円、節目110円も視野に?(3月20日、西原宏一&大橋ひろこ)
IMM(国際通貨先物市場)のポジションを見ると、昨年(2016年)から積み上がっていたユーロ売りのポジションは、ほぼスクウェアの水準まで戻っています。
(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)
ユーロ上昇が続くなら、今度はユーロ買いに転じることになりますよね。
■ユーロ再上昇にはテーパリングが必要
短期的には先週(5月1日~)までのユーロ高が調整するだろうと思いますが、中長期となると別。
ECB(欧州中央銀行)のテーパリングが本格的にテーマとなってくるなら、もう一段のユーロ上昇もありそうですが、それが今すぐテーマとなるかどうかはまだわかりません。
ユーロ/円の週足を見ると、一目均衡表の雲を勢いよく上抜けて強い形。
これを見ると、まだ上昇余地があるように見えますが…。
(出所:Bloomberg)
ユーロ/円は、昨年(2016年)12月FOMCでの高値124.10円がレジスタンス。8日(月)の朝にいったんは上抜けしましたが、すぐに反転しています。
ユーロ/円では目先、この124.10円が注目ですね。
(出所:Bloomberg)
それとともに気になるのが、なかなか定着できないユーロ/米ドルの1.10ドル。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 4時間足)
いずれにせよ、ユーロの買い手にとってフランス大統領選が終わった5月8日(月)は、いったん手仕舞いを考える日。さらなる上昇には新たな燃料が必要でしょう。
■株高牽引による円安シナリオもありそう
5月5日(金)の米雇用統計は強い数字でした。
6月の利上げは確実とみる人が大半ですね。
利上げの織り込み度も、ほぼ100%まで上昇しました。しかし、それでも米ドル/円は113円台に定着できません。
マクロン当選でセル・ザ・ファクトとなり、先週(5月1日~)までのリスクオンが調整するのならば、米ドル/円が落ちたところは買っていいと思います。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)
111円台があれば拾いたいですが、8日(月)の日経平均は強いですね。上窓を開けて始まり、年初来高値を更新しました。
(出所:Bloomberg)
米国株市場ではS&P500の空売り比率が高まっており、今後はその踏み上げによる上昇も考えられます。
そうなると、米国株上昇→日本株上昇→米ドル/円上昇という「株高牽引による円安シナリオ」もありそうですよね。
【参考記事】
●セル・イン・メイで暴落イメージの5月だが、なぜ、今年は上昇を警戒すべきなのか?(5月1日、西原宏一&大橋ひろこ)
十分ありえると思います。
■豪ドルが下落! 「普通のリスクオン」ではない点に警戒!
ただ、今回のリスクオンが「普通のリスクオン」ではないことを示すのが豪ドルの下落。
普通のリスクオンであれば、豪ドルは先週(5月1日~)、上がってしかるべきですが急落しています。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/米ドル 4時間足)
原油、それに銅などのコモディティが下げていることが大きいようですね。サウジアラビアの副皇太子が「国家予算の前提としている原油価格の想定シナリオは45ドルから55ドル」と発言したことも、下値余地を意識させたようです。
原油先物市場ではファンド勢が買いポジションを手仕舞いし、WTI原油は一時、43ドル台まで下落しました。
(出所:Bloomberg)
コモディティの下落がこのまま続くのなら、豪ドルも続落するのでしょう。
CRBインデックス(商品市況全体の動向を示す指数)は、昨年(2016年)8月の安値水準を割り込む直前まで下げてきました。
ところが、CRBインデックスと逆に動きやすいドルインデックスは、上がっていないんですよね。
(出所:Bloomberg)
ユーロ高でドルインデックスも下げているためでしょうね。
しばらく、原油や銅などコモディティの動向に注目したいと思います。
コモディティ市場でのイベントとしては、5月25日(木)にはOPEC(石油輸出国機構)総会が控えています。今のところ、減産合意が継続されるだろうとの見通しが優勢ですが、すでに減産延長がコンセンサスなので新たな買い材料とはなりません。
ここからは、OPEC加盟国による減産に向けた発言が注目される展開となりますが、25日(木)は減産延長で合意しても、材料出尽くしで原油が売られる可能性も……。
■米ドル/円の押し目買い戦略を継続
今週(5月8日~)のイベントに目を向けると、9日(火)に韓国大統領選挙、11日はBOE(イングランド銀行[英国の中央銀行])の政策金利発表。BOEの政策変更はないでしょう。
韓国大統領選は注目こそされているものの、マーケットへの影響という面では不透明です。
先週(5月1日~)、トランプ大統領が金正恩との会談の可能性を示唆して驚かせましたが、実際に北朝鮮外務省の担当者が欧州入りし、米国側と接触するようです。地政学リスクも後退しそうですね。
フランス大統領が決まり、北朝鮮リスクも大きく後退、6月の米利上げも100%織り込まれているとなると、今週は次のテーマを模索する1週間でしょうか。
ユーロ圏のテーパリングやコモディティ市場の下落などに目を向けながら、戦略としては米ドル/円の押し目買いでいきたいと思います。
(構成/ミドルマン・高城泰)
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