アナリストの過半数は円安を予想
アナリストたちが2018年の為替相場をどう予想していたか、覚えているだろうか?
ザイFX!が2017年末に行なった専門家26名への調査では円安予想が50%を超えていた。その内訳を見ると、「2018年末の米ドル/円は121円~125円台」とする予想が約30%で最大派閥を形成、116円~120円台を予想する声と合計すると過半数を超える。
つまり、専門家は今年(2018年)、円安方向を見ている方が多数派だったということになる。
【参考記事】
●ビットコインはバブルか? ザイFXとウォール・ストリート・ジャーナルの調査結果に違いあり
希少な円高予想をザイFX!に記していた人は誰?
ところが、ふたを開けてみると今年の米ドル/円は1月8日に113円台をつけてからは下がるだけ。まだ2月も終えていないが円高傾向が濃厚となっている。
ここで注目したいのが、2017年12月に更新された元シティバンクのチーフディーラー・西原宏一さんの連載記事だ。
「2018年後半の米ドル/円はユーロ/米ドル同様、米ドルの上値は重く、じりじりと105円方向に下落する可能性が高い」(2017年12月21日更新「ヘッジファンドの思惑」より)
【参考記事】
●2018年初頭に注目したいのはユーロ/円! 米中間選挙に向けて米ドル/円は105円へ(2017年12月21日、西原宏一)
多くの人が2018年の為替相場を円安と予想する中、西原さんは数少ない円高派だった。なぜ、西原さんは円高を予見できたのか? その理由を日々配信される西原さんの有料メルマガ「ザイFX!×西原宏一 FXトレード戦略指令!」に残された文章からたどってみよう。
FXトレード戦略指令!:2017年11月8日配信
115.00円のオプションをバックにしてのショート
こんな一文が送られたのは、2017年11月8日のことだった。これは日経平均が26年ぶりに2万3000円台を回復する前日のこと。株式市場が上り調子だったから円安方向を見ている人が多かった時期だ。
しかし、西原さんはこの日に米ドル/円のロングを決済するだけでなく、あまつさえドテン(※)している。
(※執筆者注:「ドテン」とは、買いから売りへ、あるいは売りから買いへとポジションをひっくり返すこと)
プロのオプション分析が配信されていた
その理由はオプションにあった。これについては西原メルマガの共同執筆者である元HSBCチーフトレーダーの竹内典弘さんが同日朝、こう配信してくれていた。
FXトレード戦略指令!:2017年11月8日配信
バブル崩壊後の高値を更新する日経平均株価に対しこう着感を強めるUSDJPY、オプション市場に目を転じると、来週まで114.50-115.00まで約10bio(ビリオン)の満期が控えている。
メルマガ:115.00という節目でもあり、今年に入っての戻り高値を検証すると、1/19(115.62)、3/10(115.51)と集中している。レジスタンスとしてもやや意識されるレベルで、来週までの満期額を考慮すると、ガンマの供給もありやや胸突き八丁
(出所:MetaQuotes Software社のメタトレーダー)
115円に10億ドル規模の巨大なオプションが設定されているため、115円を超えて大きくは上がることはないだろう、というヨミだ(オプションを活用したトレード方法については、西原さんの新著『ザイFX!×西原宏一が教える FXトレード戦略 超入門』に詳しいので参考に!)
売り始めた翌日、日経平均は高値をつける
西原さんが113円台後半で売り始めた翌11月9日、日経平均は468円高から390円安へと1日のうちに850円幅の乱高下と大いに荒ぶる。結局、この日の日経平均が2017年の高値となり、米ドル/円も11月末、111円台へ向かっていった。
FXトレード戦略指令!:2017年11月20日配信
トランプ大統領選から1周年である11月9日が日経のトップをつけた可能性が高まっています。ドル円も何度かご紹介させていただいた114円台後半のレジスタンスが抜けない限りはショートで回すという方針も変わらず。この1週間で方針が変わっていないので、ドル円と日経平均先物のショートというポジションも変わらず
(出所:MetaQuotes Software社のメタトレーダー)
「売り限定」の短期取引を繰り返す
この間、西原さんは一貫して米ドル/円のコア(核となるポジション)ショートを保有しながら、「売り→買い戻し」と短期での売り取引も繰り返していた。
FXトレード戦略指令!:2017年11月21日配信
ドル円の4時間足のRCIは中期長期は2重底ですが、短期のみ反発中。まだ短期が反落し始めていませんが、時間軸をさげるとトップアウト(※天井をつけること)しそうであるため昨日買い戻したポジションの一部だけ112.65円レベルで少額のみショートを追加。112.00円レベルではまだ買い戻す予定
(出所:MetaQuotes Software社のメタトレーダー)
年初に手仕舞うも即座に売り再開
ショートポジションをいったんスクウェアにしたのは、年が明けた2018年1月5日だった。
FXトレード戦略指令!:2018年1月5日配信
ドル円のショートを112.75-80円でスクエアに
年初、日経平均が2万4000円に達するなど猛烈に上昇、米ドル/円もつられる形で上昇していたためだが、西原さんはすぐに売り直す。
FXトレード戦略指令!:2018年1月10日配信
米金利上昇の影響が限定的だったことから、ドル円を112.30-35円で打診売り。結局年末年始のポジションにもどりつつあります。今週SQまでの動きを確認したいので、下値を叩かず、戻りがあれば少額ずつ追加するスタンスで
荒れた2月相場の原因は?
コアのショートは維持しながら、売りの短期取引を繰り返していったのは昨年同様。しかし、2018年2月初旬、米金利が急騰し、NYダウは高値から10%ほど暴落、日経平均や米ドル/円も下げていく。
ここで注目されたのがVIX指数だ。ざっくり言えば、「ボラティリティの小さな相場が続いているから、『低ボラが続くほど儲かる商品』をたくさん買っておこう」と考えた投資家のポジションが一斉に損切りさせられる動きが起きたのだ。
【参考記事】
●NYダウ、史上最大の暴落にVIX指数の影。ビットコインも真っ青。2日で96%下落って!?(2018年2月8日、ザイFX!編集部)
(出所:MetaQuotes Software社のメタトレーダー)
値動きの荒い展開も予想済みだった?!
しかし、この動きすら、西原さんは2017年末時点で予期していたフシがある。
「2017年はマーケットのコンセンサスとは裏腹に、米ドル/円は値幅を伴わず、ボラティリティの低い相場に終始しました。こうしたマーケットが続くと金融市場ではオプションの売り手が増え、一定の時間が過ぎると、ボラティリティの反発がオプションの買い戻しを誘引し、結果、為替市場のボラティリティを大きく高めるという展開になりがちです。そのため、2018年の米ドル/円は、マーケットのコンセンサスと相違し、値幅を伴って大きな動きとなるのではないか? と想定しています」(2017年12月21日更新「ヘッジファンドの思惑」)
【参考記事】
●2018年初頭に注目したいのはユーロ/円! 米中間選挙に向けて米ドル/円は105円へ(2017年12月21日、西原宏一)
西原さんが想定していたのはオプションだったが、「低ボラを予想するポジションの巻き戻しが相場のボラティリティを高めた」という予想は、現実に起きたこととまったく相違しない。
「今年のテーマは通商政策」と予想
西原さんが2017年末時点で105円という大胆にも思える予想を出していた根拠のひとつが、この「低ボラへの油断」であり、もうひとつがトランプ政権の通商政策だった。
「2017年は通商政策に注目が集まっていませんでしたが、中間選挙を迎える2018年には、通商政策にもマーケットの注目が集まると想定しています」(2017年12月21日更新「ヘッジファンドの思惑」)
【参考記事】
●2018年初頭に注目したいのはユーロ/円! 米中間選挙に向けて米ドル/円は105円へ(2017年12月21日、西原宏一)
ただ、こちらは時期が少しずれた。西原さんは通商政策が市場のテーマとなるのは中間選挙前の初秋と予想していたが、実際には1月からテーマとして浮上。米ドル安を加速させることとなった。
FXトレード戦略指令!:2018年2月16日配信
105円台に突入すれば、コアのショートを含め少しずつドル円を縮小し、下げ渋るようであれば、いったんスクエアまで持っていこうと考えています。
(出所:MetaQuotes Software社のメタトレーダー)
ターゲット到達で大半を手仕舞い
1月10日に再開した米ドル/円の売りポジションの大半を手仕舞ったのは2月16日。西原さんが2018年のターゲットにしていた105円台へ突入した日だった。
いったんはリバウンドを想定する西原さんだけど、2017年末の予想では「株が調整局面に入るようだと、105円を割り込んで急落するリスクもはらんでいる」としていた。円高はまだまだ加速する可能性はありそう。
西原さんは予想するだけのアナリストではなく、自分で取引も行なうディーラー。日々配信されるメルマガでは西原さんのポジションが配信される。上図のようにストップの位置も必ず書かれているから、リスク管理も安心だ。
「今年の相場って難しい」と悩んでいる人、西原メルマガを参考にしてみては。
(文/ミドルマン・高城泰)
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