■ユーロ急落! 主犯は日本の機関投資家か
先週(5月28日~)は29日(火)にイタリア国債の利回りが急騰し、ユーロが急落しました。
対米ドルでは1.15ドル割れ寸前まで、対円でも124円台まで下げています。
(出所:Bloomberg)
(出所:Bloomberg)
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原因はイタリアで新政権の組閣が難航したことでしたが、これを見て慌てた投資家が、イタリア国債を投げ売りしたようですね。
【参考記事】
●イタリア政局混迷でユーロ/円は120円へ下げ足を速める展開! ドル/円も続落中!(5月31日、西原宏一)
日本の投資家は、昨年(2017年)末時点で6兆円近いイタリア国債を保有していると報じられていました。
この本邦投資家が投げ売りしたのではないか、との指摘もあるようです。
おそらく、そうなのでしょう。大手銀行は、3週間ほど前からイタリア危機に警告を発していたのに、たかをくくっていた投資家が多かったようです。
しかし、イタリアでは新たな組閣案がまとまり、政治空白は解消へ向かっています。イタリア危機も第1段階は終えたのではないでしょうか。
■「Quitaly」、ドイツ銀行、米欧貿易戦争の兆候
でも、「Quitaly」(※)なんていう言葉も生まれたくらいですから、まだまだ油断はできないですね。
スペインでもラホイ首相に対する不信任案が可決され、首相が交代しました。
(※編集部注:「Quitaly」とは、Quit【立ち去る】+Italyの造語でイタリアのEU脱退の意味。ほかにも同じ意味で、Italy+Exit【離脱】の造語で「Italexit」(イタレグジット)という言葉もある)
ヨーロッパでは、ドイツ銀行に格下げのニュースが出ています。
ドイツ銀行の株価は最安値を更新していますね。
(出所:Bloomberg)
不安要因が多いのですが、特に気にしているのが貿易戦争の再燃です。春の時点では米中の貿易摩擦でしたが、今度はアメリカとEU(欧州連合)。
トランプ政権は、6月からEUに対して鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の追加関税を課しました。EUは、早ければ6月20日(水)にも報復関税を課す方針で、貿易戦争の激化が懸念されます。
トランプ政権は、中国の知的財産侵害に対しても、制裁関税の最終案を6月15日(金)までに発表するようです。
リスクオフ要因が目に付きますが、昨年(2017年)も北朝鮮やフランスでの極右政党の台頭などリスクオフ要因が満載でした。
それでも米国株は上昇し、NYダウの月足が陰線となったのは3月だけです。今年(2018年)も同じようにリスクを乗り越えて上昇するというシナリオは考えられませんか?
■リスクオフに対する備えが不充分な可能性
昨年(2017年)は、リスクオフに備えてヘッジの動きが活発になり、下げる場面もありました。
ところが、今年(2018年)は、「去年は大丈夫だったから、今年も大丈夫だろう」と油断し、ヘッジが不充分となっているフシがあります。
そのせいで今回のイタリア政局のように、危機が具現化したとき、ショックが大きくなっています。「去年は大丈夫だったから」と油断しない方がいいのではないでしょうか。
リスクオフの円高に要警戒、ということですね。今週(6月4日~)のイベントに目を移すと、7日(木)に日米首脳会談が、12日(火)には米朝首脳会談が予定されています。
米朝首脳会談で平和裏な解決の道筋が見えてくると、リスクオン的に買い戻しが入る可能性もありませんか?
可能性はあると思いますが、延期とされていた米朝首脳会談が当初の予定通りに開催されるとのニュースが流れた6月2日(土)の早朝、米国株市場はまだ開いていましたが、大きく反応していません。
北朝鮮リスクがそれほど強く意識されていないのではないかと思います。
(出所:Bloomberg)
■貿易戦争の激化によるリスクオフ円高に警戒
イタリア、スペイン、ドイツ銀行に貿易戦争、そして北朝鮮の核問題――話題が多いですね。
こうした話題を、まだマーケットは消化しきれていないように見えます。特にアメリカとEUの関税ですね。
春先には米中の貿易戦争が大きなテーマとなり、円高・米ドル安が進みました。今後、対EUでの摩擦が深刻になれば、リスクオフ的な動きが強まるのではと思います。
【参考記事】
●輸入関税に反対してきたコーン氏が辞任! ドル/円は上値重く、105円決壊なら100円へ(3月8日、西原宏一)
そうすると、今週(6月4日~)の戦略は?
(出所:Bloomberg)
ユーロ/円は先週(5月28日~)、124円台をつけましたし、イタリアの政局がとりあえず落ち着いたこともあり、今週(6月4日~)は、反発に警戒でしょうか。
戻りがあれば売りたいですが、それよりも米ドル/円の売りを中心に考えていきたいと思います。
(構成/ミドルマン・高城泰)
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