■ついていけないほど速かった円安の進行
みなさん、新年おめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
さて、新紀元が開かれる2013年を迎えてまず安心しているのは、「マヤ予言」がハズレて太陽がいつものとおり東から昇っていること、次に、やはりユーロ崩壊といった「予言」も現実になっていないこと、ではないだろうか。めでだし、めでだし。
ところで、めでだしというのもつかの間、年末年始、ちょっとのんびりしていたトレーダーなら、また別の悩みで頭を抱えるようになったのではないだろうか。
それはほかならぬ、円安の進行スピードが速すぎて、ついていけなくなり、あっと言う間に我々のターゲットに接近してきたことだ(何を隠そう、こういっている筆者もその1人だ)。
今朝(1月11日朝)のレートを参照すると、2012年最後のコラムにおいて提示した米ドル/円のターゲット(90円~92円)はもう目の前、ユーロ/円は118円台、英ポンド/円は144円台、豪ドル/円は94円台と、予想より速いスピードで円安トレンドが押し進んだ。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)
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アベノミクスやアベトレードといった単語を持ち出して、今では誰でも円安の原因を説明できるが、肝心のスピードに関しては、実は隠れた理由があると思う。
■「相場は大衆の意表を突くもの」と割り切る
トレンドの進行スピードに関して、「押し目買い待ちに押し目なし」といった相場格言を持ち出してごまかしてしまえばそこまでだが、正しい予測ができたにもかかわらず、だいぶ取引チャンスを逃してしまったとしたら、そこで悔しい気持ちが湧かないと言ったらウソになる。
しかし、注意深い読者のみなさんなら、こういったリスクにも備えているだろう。
というのは、2012年12月7日(金)のコラムでは、ユーロ/円の上値ターゲットを説明する際に、以下のことを書き加えていた。
「進行スピードも大衆の想定より早いのではないかと思う(もっとも、大衆の思うとおりにいかないのは相場の常であるが…)」
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●ユーロ/円は138円台へ上昇の可能性あり。それを示唆する2つの条件とは?(2012年12月7日、陳満咲杜)
ということは、ミクロ的に言うと、相場は常に大衆の意表を突く習性を持つから、「円高が続く」と世間が危惧しているうちに円安に逆転したり、「円安トレンドに乗りたいが『適切な』エントリーポイントを待ちたい」とみなが思っているうちにトコトン円が売られていく、といったケースはある意味では想定済みであり、割り切るしかない。
また、マクロ的に言うと、相場は人生や恋のごとく、悩みが絶えず続くものだから、悩まされるからこそ魅力的であることを再認識しておきたい。
■今回、円を売っていたのは投機筋ではない!
それでも悔しい方がいらっしゃるなら、少し慰めの分析をしておこう。CFTC(商品先物取引委員会)の統計データから見ると、究極の投機筋と言われる先物のディーラーたちも、もしかしたら我々と同じく、実は今回の円安スピードに乗れていないのではないかと思う。
CFTCが発表した2012年12月分の円のポジション動向は、以下のとおり。
これを見てわかるのは、円売りポジションは、実は円安トレンドと比例して拡大したのではなく、実は縮小していたということである。
ということは、一般的に投機筋と言われる人々は、年末から本日までの過激な円売りの「ご本尊」ではない可能性が濃厚だ。
「シカゴ筋(投機筋を呼ぶアダナ)も乗っていないのなら、我々一般投資家なんかがついていけるわけがない…」といったグチを言っても良いのではないかと。
となると、誰が円をガンガン売っているのだろうか。
銀行ディーラーたちだろうか。いや、銀行の人々のはずはない。銀行はあくまで売買の仲介で、為替リスクを取らない。
では、日本人を始めとする世界の投資家か。残念ながら、そのはずもない。個人投資家たちのオーダーは直接インターバングに入ってこられないし、金額ベースから見ても巨大な為替相場に決定的な影響を与えない。
■チャートを見ない人々が円を売っている!?
投機筋でも、銀行でもなければ、残るは1つしかない。チャートを見ない人々だ。
バリバリのチャート派のシカゴ筋や、生業である銀行ディーラーはもちろん、チャートを見ないで売買する個人投資家もまずいない現在、一体誰がチャートを見ないで取引をするのだろうか。そんなバカなことをやる人々がいるのだろうか。
答えはYESだ。ズパリ、実需筋である。
一口に実需筋と言っても、プロの生保関係者から、素人の一般事業者まで多種多様であるが、みながチャートを見ないで売買するということはあり得ない。
したがって、ここで言う「チャートを見ない」ということはあくまで比喩であり、高値でも追い続け、コストを無視してまで円売りに走る状況を指している。
多種多様の実需筋の台所事情は推測でしかわからない部分が多いが、コストを度外視している場合、それは何かに迫られて取引しているのが世の常で、法人である実需筋も例外ではないはずだ。
したがって結論から言うと、2012年年末から本日(1月11日)までの実需筋による円売りは、儲けるための布石や行動ではない。彼らはあわてて損切りしているはずなのだ。
言い換えれば、今回の年末年始相場を「法人様踏み上げ相場」と名づけられると言っても過言ではなかろう。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
■「押し目買い待ちに押し目なし」の対処法とは?
では、なぜ彼らが損切りに急ぐのか。彼らの損切り後はどうなるのか。このあたりの話もなかなかおもしろく、また詳しく話したいので次回に譲るが、「押し目買い待ちに押し目なし」のリスクにどう対応するかについて、少し触れておこう。
このコラムを継続して読んでくださった読者のみなさんは、米ドル/円の79-80円台、豪ドル/円の82-83円台、そしてユーロ/円に至っては95-96円台を拾っていたはずだ。
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(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/円 日足)
問題は、どれぐらいの枚数を持っていたかだ。
そして、当然だいぶ利益を計上し、利益確定したと思うが、「利食いが速すぎたかどうか」といった「伝統的」な問題だけではなく、「利食いが速かった」という悔しさが発生するのを防ぐために、以下の2点を実行しておくことが重要だ。
1.相場における大事な節目においては、ポジションは必ず複数を持つ。
2.うまく乗れた相場だからこそ、最低でも1枚のオープンポジションを手元に残す。
そうすれば、今回の「法人様踏み上げ相場」についていけなかったとしても、大した悔しさは残らなかったはずだ。
気持ちが落ち着けば、次の正しい判断につながり、好循環が生まれてくる。
相場における戦略や戦術は人生も恋にも通用するから、ぜひ活用していただきたい(念のために言うが、彼女を何人も作って最低1人を手中に収めよ、といった次元の話ではないので、ご注意)。
何? 偉そうに言っているあなた自身は、円売りポジションをいくらで何枚持ってるって?
ご想像に任せる!
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