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ビットコインの衝撃(2) マウントゴックスの
真の罪とは? 高値1242ドルは自作自演?

2015年09月07日(月)13:21公開 (2015年09月07日(月)13:21更新)
ザイFX!編集部

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「ビットコインの衝撃(1) マネパでビットコインが買えるように!?そもそもビットコインとは?」からつづく)

■ビットコイン上昇は「自作自演」!?

 2013年につけた1242ドルの高値──この高値をつけたことは、バブル感を漂わせながらも、ビットコインへの期待の高さを感じさせ、再度の中長期的な上昇への夢をふくらませてもくれる。

 しかし、この高値そのものが虚構だった可能性がある。2014年に経営破綻した取引所「マウントゴックス」(Mt. Gox)による「自作自演」の疑いがあるのだ。

 多くの人にとって、ビットコインから連想されるのはマウントゴックスだろう。マルク・カルプレス元CEOが逮捕されたとき、新聞記事には「ビットコイン、社長立件へ」「『ビットコイン』逮捕」「ビットコイン事件」など、あたかもビットコイン=マウントゴックスであるかのような見出しが立っていた。

 もちろんビットコイン=マウントゴックスではないし、カルプレス容疑者の逮捕をビットコインコミュニティは大して気にしてもいない。マウントゴックスに関心を持つのはマウントゴックスにビットコインや現金を預けていた債権者くらいで、マルク・カルプレス元CEOの逮捕が報じられてもビットコイン価格に影響は見られなかった。 

カルプレス元CEOの逮捕時の値動きを表示したビットコイン/米ドル 日足(クリックで拡大)
マルク・カルプレス元CEOの逮捕時に影響を受けなかったビットコイン/米ドル価格

 

(出所:ビットバンクトレード)

■以前から指摘されていた内部犯行の可能性

 ビットコインコミュニティが動揺していないのはマウントゴックス事件が「ビットコインのしくみの欠点」ではなく、「カルプレス容疑者個人の問題」であることが早くから周知されていたからだ。

 ビットコインセキュリティの専門会社「Wizsec」(ウィズセック)はカルプレス容疑者の逮捕前から、内部犯の可能性を示唆するレポートを公開してもいた。

 2015年1月、スイスショックにより、世界的な大手FX会社だったアルパリが破綻した。だからといって、「FXは危ない!」という声は聞こえてこない。あくまでもアルパリ1社の問題だ。マウントゴックス事件についても基本的には同じようなものと考えていいだろう。

【参考記事】
ユーロ/スイスフランが約3800pips大暴落! スイス中銀が防衛ラインの撤廃を発表!
スイスショックでアルパリUKが破綻! スイスフラン大暴騰で損失をカバーできず
ついに破綻も! スイス中銀の爆弾発言は欧米のFX会社にどう影響したのか?

 マウントゴックスはたまたま渋谷を拠点としていたため、日本での扱いが大きくなってもいるのだろう。

2015年2月には香港のビットコイン取引所「マイコイン」で460億円相当のビットコインが紛失する事件もあったが、日本ではまったく話題になっていない。

■ビットコイン紛失事件の真相とは?

 では、マウントゴックスでは何があったのか。当初、カルプレス容疑者は「システムに弱いところがあって、ビットコインがなくなった」としていたが、実際はそうではなかったようだ。

 一部は実際に盗難されたようだが、今回の逮捕容疑は業務上横領。カルプレス容疑者が口座を不正に操作して利用者から預かったビットコインや資金を私的に流用した、ということになる。今回の逮捕容疑の金額は3億円超だが、カルプレス容疑者の個人口座には数十億円が残されているとの報道もある。 

マルク・カルプレス容疑者来日から逮捕までの概略
マルク・カルプレス容疑者来日から逮捕までの概略

■過去にはFX業界でもよくあった犯罪

 FXで言えば、「FX会社の社長が預かったお金を持ち逃げした」といったところか。ここ数年にFXを始めた人は「そんなこと、あるはずがないだろう」と思うかもしれないが、過去には実際、この手の事件が頻発、社会問題化した時期がある。

 1998年から2005年まで、つまり外為法改正で為替取引が自由化されてから、金融先物取引法改正でFX会社が登録制になるまでの間、FX会社の経営に認可も登録も必要がない無法地帯だった時期のことだ。

今のビットコインが置かれた環境はFX業界が無法地帯だったころと似ていると指摘する人は多い。FX業界が金融庁の監督下に置かれるまでには7年の歳月を要したが、ビットコインではすでに規制の議論が始まっている。 

FX業界規制の流れ
FX業界規制の流れ

■FX会社がビットコインを取り扱うのはいつか

前回紹介したマネーパートナーズとアメリカの大手ビットコイン取引所Kraken(クラーケン)の提携協議開始に示されているように、ビットコインに高い関心を示すFX会社は多い。そうした動きが表に出てこないのは、金融庁など「お上」の態度を慎重に見極めているためだ。

【参考記事】
ビットコインの衝撃(1) マネパでビットコインが買えるように!?そもそもビットコインとは?

「お上の姿勢が明確になれば、あるいは先行したマネーパートナーズの動きをお上が黙認するようなら、今すぐにでも始めたい」といった声は複数のFX会社から聞こえてくる。

 すでに金融庁の監督下に置かれているFX会社は本業への影響を懸念して、お上の動向を気にせずにはいられないが、「ビットコイン専業」ならば顔色をうかがう必要はない。

 日本でもKrakenをはじめ、BTCボックスやビットバンク、コインチェック、bitFlyerなどのビットコイン取引所がサービスを開始している。中にはレバレッジ取引やショート(売り)が可能な取引所もあり、FXのようにビットコインを取引できる時代は、すでに始まっている

金融庁監督下のFX・証券会社と、まだ法規制のないビットコイン専業会社
金融庁監督下のFX・証券会社と、まだ法規制のないビットコイン専業会社

■マウントゴックスがビットコイン価格を吊り上げか

 ところで、マウントゴックスの「罪」としては、不正な価格形成を行なっていた疑いがあるという面も大きい。

 先ほど紹介したように、ビットコインセキュリティの専門会社・ウィズセックはマウントゴックスのビットコイン消失事件について、当初から内部犯の犯行を示唆するレポートを発表していたが、それに加えて、マウントゴックスによる価格操作を示唆するレポートも発表している。

 ビットコインが飛躍的に上昇したのは2013年。前回も紹介したように、1242ドルへの上昇については、一般的にはビットコインの魅力に気がついた中国人の「爆買い」によるものとされている。

【参考記事】
ビットコインの衝撃(1) マネパでビットコインが買えるように!?そもそもビットコインとは?

 しかし、実態は違う可能性がある。

 2013年の上昇をより細かく見ると、2つの上昇波がある。年初10ドル台から4月の266ドルへと向かう上昇第一波と、その後、調整局面を挟んで、7月末から11月の1242ドルへと向かう上昇第二波だ。 

2013年のビットコイン/米ドル 日足(クリックで拡大)
2013年のビットコイン/米ドル(BTC/USD、マウントゴックス) 日足

(出所:bitcoin charts)

 4月から7月までの調整局面で引いたトレンドラインを上方にブレイクしたのは7月28日(日)。この日、マウントゴックス内部で「ウィリー」(Willy)が動き出した。ウィリーとはボットの1つ。そして、ボットとは、自動売買プログラムのようなものだ。

■2つの自動売買プログラムが大量購入

 ウィズセックのレポートによれば、マウントゴックスは「ウィリー」と
「マルクス」という2種類のボットを利用していた。

 架空の250万ドルが複数の口座に割り当てられ、ボットが5分から10分おきに10~20ビットコインをひたすら買っていく。資金が尽きれば別の口座で買っていく。このボットが動き始めたのは、2013年7月28日(日)15時14分。まさにトレンドラインを上方にブレイクした日だ。 

2013年7月下旬~8月上旬のビットコイン/米ドル 2時間足(クリックで拡大)
2013年7月下旬~8月上旬のビットコイン/米ドル(BTC/USD、マウントゴックス)2時間足
 

(出所:bitcoin charts)

■57万ビットコインをマウントゴックスのボットが購入

「ウィリー」と「マルクス」は7月28日(日)以降、頻繁に顔を出し、市場に下落の兆しがあるとビットコインを買っていった。その合計はウィズセックの推計によると、7月から11月までに合計57万ビットコイン。「システムに弱いところがあって」紛失したとカルプレス容疑者が説明した65万ビットコインに近い水準である。

 したがって、2013年7月から11月までの上昇第二波はウィリーとマルクス、2つのボットによる価格押上げだった可能性があるわけだ。もし、ウィズセックのレポートのとおり、1242ドルの高値がマウントゴックスの押し上げた価格だったとすると、チャート分析などを全面的に見直す必要がある。 

ビットコイン/米ドル 2時間足(クリックで拡大)
ビットコイン/米ドル 2時間足
 

(出所:bitcoin charts)

■取引自体をP2P化する取り組みも

 だが、今後同じようなことが他の取引所であるかというと、それは疑問だ。2013年当時のマウントゴックスは世界の取引高の70%を占める圧倒的な巨人。マウントゴックスの価格が他の取引所に与える影響も大きかった。

 しかし、今は70%ものシェアを占める取引所は存在しないし、取引高も増加している。ひとつの取引所が価格を操作しようとしても、アービトラージ(裁定取引)のネタにされるだけだろう。

 ビットコイン自体はP2Pネットワークによる管理者不在のしくみだが、シェア70%を握る中央集権的な取引所が存在してしまったために起きたのが、マウントゴックス事件とも言えるだろう。

 その反省もあってか、最近ではそもそも取引所を廃する動きもある。買いたい人・売りたい人同士を直接つなぐ「P2P取引所」の試みだ。

 動画をダウンロードするのにどこかのウェブサイトにアクセスしてダウンロードするのではなく、欲しい動画を持っているユーザーを探して直接ダウンロードさせてもらうのとイメージは同じだ。 

「従来のビットコイン取引所取引」と「P2P取引所取引」のイメージ

■属人的な犯罪を防ぐしくみが待たれる

 ビットコイン取引所はまだまだ発展途上。円であれ米ドルであれ、フィアット(既存の通貨)を絡ませる以上、会社の資産と顧客からの預かり資産を分けて管理する「分別保管」はもちろん、FXのような信託銀行に顧客の資産を信託する「信託保全」などのしくみを導入するよう、規制することが必要なのは間違いない。

 金融商品取引法の対象にビットコインなどの暗号通貨を含めるのか、あるいは新たな法律を作るのか、いずれにせよ、それまでは取引所の自主的な取り組みに委ねるしかない。日本でもビットコイン取引所が登場しているが、現在、信託保全を行なっている取引所は皆無だ。

 ホームページ上などで「分別保管しています」と言われても、カルプレス容疑者のような属人的な犯罪の可能性はゼロにはならない。マウントゴックス事件があった以上、取引所内部に悪意を持った人がいても不正が起きないしくみが必要だ。

 日本でもビットコイン取引が増加しているのは将来性への期待、トレード対象としての魅力を感じている人も多いのだろうが、それは今のところ、海外FX会社での取引と同じく、自己責任の世界となる。慎重派の人は政府の規制を待ってから、ということになるだろう。

「ビットコインの衝撃(3) 1日10%も変動!?FXでなく、暗号通貨を取引する3つの理由」へつづく)

(取材・文/ミドルマン・高城泰)

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