■年初から大荒れ! フラッシュ・クラッシュの真相は!?
1月3日(木)、米ドル/円が数分で3円以上暴落するフラッシュ・クラッシュが発生しました。2019年は波乱の幕開けですね。
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アップルの業績予想の下方修正や米政府機関の一部閉鎖などが原因とされています。
しかし、政府機関の閉鎖は今も続いているのに市場は反発していますから、あまり関係ない。日本勢の正月休みを投機筋に狙われたのでしょう。
108円の下にストップがたまっているという話は年末からささやかれていました。年末時点では2円弱離れていたので108円を崩すのは難しいかと思っていたのですが、流動性が薄いシドニー時間に狙われて急落した、というのが真相だと思います。
■パウエルFRB議長のハト派発言で株価反発
ただ、1月4日(金)のNYダウは746ドル高と大きく反発、週が明けた今日1月7日(月)の日経平均も前場で2万円を回復しています。まだ戻すのでしょうか。
(出所:Bloomberg)
(出所:Bloomberg)
1月4日(金)には、日本の年金が米ドル/円を107.50円前後で買っていたようですし、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長がハト派的な発言をしています。
これ以上の株安を避けたいトランプ米大統領は、米中関係の融和ムードを演出してくるかもしれない。
米10年債利回りも、一時2.5%台まで突っ込みましたから、さすがに下がり過ぎ。そうしたことを考えると、株価は、もう一段の反発が考えられます。
(出所:Bloomberg)
1月4日(金)の米雇用統計は、NFP(nonfarm payroll、非農業部門雇用者数)が予想を大きく上回る31万人増と非常に強い結果でしたが、直後の講演でパウエルFRB議長は、利上げの一時停止やバランスシート縮小の修正をほのめかしました。
FRBの責務は、雇用の最大化と物価の安定。株価対策は範疇の外ですが、これだけ株価が下がると気にしないわけにはいかないですね。
1月4日(金)の米雇用統計はNFPが非常に強い結果だったが、直後の講演でパウエルFRB議長は利上げの一時停止やバランスシート縮小の修正をほのめかした (C)Bloomberg/Getty Images News
そもそも中立金利に近づいているとパウエルFRB議長も認めていて、市場も、さらなる利上げは難しいのではと思っている中、2018年12月に利上げし、さらには今年(2019年)2回の利上げを示唆したことが株価の急落、フラッシュ・クラッシュを招いた、とも言えます。
【参考記事】
●炭鉱のカナリアが米国株急落を再度警告! 2019年の米ドル/円は105円台に下落か(2018年12月20日、西原宏一)
●もし、パウエルFRB議長解任なら株高に!? 2019年のテーマは米国経済失速でドル安(2018年12月24日、西原宏一&大橋ひろこ)
■ボラ高の1年なら米ドル円は100円割れにも要注意!
この対談でも再三、警告していたことですよね。西原さんはよく、「翌年の予想は年前半のうちに達成しやすい」と話していましたが、今年(2019年)は3日で達成してしまった感じもありますね。
年末に更新したザイFX!のコラムで「2019年の米ドル/円は105円台へ下落か。リスクオフ相場到来なら100円近くまで想定」と書きましたが、100円まで落ちたとしてもボラティリティは10%ほど。
今年(2019年)は、ボラが高まると予想していますから、株の下落を伴えば100円割れの可能性も想定しています。
【参考記事】
●2019年の米ドル/円は105円台へ下落か。リスクオフ相場到来なら100円近くまで想定(2018年12月27日、西原宏一)
ただ、米ドル/円やクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)は長い下ヒゲを作っています。足もとでは反発に注意が必要ですね。
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2016年10月の英ポンド、2015年1月のスイスフランでフラッシュ・クラッシュが発生した後は、方向感のない相場が続きました。米ドル/円も、しばらくはフラフラするのかもしれません。
ただ、今年(2019年)の大局観として米ドル安の見通しに変更はありません。
【参考記事】
●原油上昇と金反落が米ドル/円をサポート。105円突破すれば109円台へ上昇濃厚!(2016年10月13日、西原宏一)
●ポンド殺人事件の謎を追う! 暴落の真相は?スプレッドが狭いままだったFX会社発見!
●ユーロ/スイスフランが約3800pips大暴落! スイス中銀が防衛ラインの撤廃を発表!
●通貨安戦争からスイス脱落、カナダ参戦! ECBのQEが予想どおりならユーロ反発も(2015年1月22日、西原宏一)
■2019年のゴールドは三角保ち合いを上放れか!?
米ドル安になるのなら、逆相関となりやすいゴールドが注目ですね。
ゴールドは株式市場とも逆相関しやすいのですが、昨年(2018年)はNYダウが史上最高値を更新し続けた時期でも底堅く推移し、三角保ち合いを形成しています。
米株高と米ドル高のダブルパンチにもかかわらず、下値は切り上がっていたことを考えると、今年(2019年)、米ドルと米株の下落トレンドが鮮明になれば、ゴールドは三角保ち合いを上放れし、力強い上昇トレンドを描くかもしれません。
(出所:Bloomberg)
【参考記事】
●反発するゴールドと逆相関の米ドル/円は戻り売り方針! 米ドル高相場は終焉へ!?(2018年11月19日、西原宏一&大橋ひろこ)
■短期で豪ドル/米ドルの買い、中期で米ドル/円の売り
今週(1月7日~)の戦略としては、短期で豪ドルの買いも、いいかもしれません。
ユーロ/豪ドルが顕著なのですが、フラッシュ・クラッシュで長い上ヒゲをつけたものの、翌日は長い陰線となり、全戻しどころか、さらに下げています。
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リスク資産のオセアニア通貨が買い戻されている、ということですね。
この巻き戻しが、もう少し続くなら、豪ドル/米ドルを短期的に買っていきたい。
ただ、今年(2019年)のテーマは米ドル安。中期ポジションとしては、米ドル/円が反発したところで戻り売りです。
武田薬品によるシャイアーの買収も1月8日(火)には完了すると見られ、そうなれば円売りが出てくるとの観測が出ています。もし、それで上がることがあれば売り場になると考えています。
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(出所:Bloomberg)
今年(2019年)は、チャンスの多い1年になりそうですね。
ボラティリティが高まれば収益チャンスは増えますが、一方で退場リスクも高まります。資金管理には気をつけながら取引していきましょう。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
(構成/ミドルマン・高城泰)
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