■想定以上にハト派的なFOMC受け米ドルが下落
先週(1月28日~)の注目だったFOMC(米連邦公開市場委員会)では利上げ打ち止めの可能性が高まり、バランスシート正常化についても柔軟に対応するとして、米ドルが売られました。
【参考記事】
●FOMCのハト派的な内容に市場は驚き!? 米ドル/円は104円に向けて下落再開へ(1月31日、西原宏一)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 4時間足)
「経済情勢が悪化した場合には」との条件付きですが、QE(量的緩和)再開を連想させる文言さえありました。想定以上にダビッシュ(ハト派的)なFOMCでしたね。
ただ、ここからの中期見通しは、2つの意見に割れています。「利上げ打ち止めで米ドル売りが進む」とする意見と、「ハト派転換により株式市場が上昇、つられて米ドル/円も上がる」とする見方です。
ロジック的には日米金利差もあり、株高とともに米ドル/円が上昇するように思えます。もちろんリスク要因が表面化すれば、話は違うのでしょうが。
昨年(2018年)10月までの相場を振り返ると、株式市場は堅調で、日経平均は27年ぶりの高値となる2万4000円台まで上昇しました。しかし、米ドル/円は115円すら超えていません。
株式市場が戻したとしても、米ドル/円が大きく上がっていくようなイメージは持ちづらいですね。
【参考記事】
●加ドル/円窓開け急騰! クロス円が強い! 日経平均27年ぶり高値達成でドル/円は…(2018年10月1日、西原宏一&大橋ひろこ)
■米中貿易協議、両国の隔たりは大きい
リスク要因も見え隠れしていますね。先週(1月28日~)、米中の閣僚級協議が行われましたが、中国が米国から大豆を買うことを決めたくらいで両国の隔たりは大きいようです。
貿易協議の猶予期間は、3月1日(金)まで。2月末には米中首脳会談も開かれるようです。
写真は2017年9月に中国・北京で行われた米中首脳会談後の共同記者会見でのもの。2019年1月30日~31日に米中閣僚級協議が行われたが、両国の隔たりは依然として大きい。2月末には米中首脳会談が開かれる模様 (C)Bloomberg/Getty Images
トランプ米大統領としては、昨年(2018年)末のような株式市場の急落は避けたい。米中の融和ムードを演出するでしょうし、ショートカバーで株式市場が上昇する場面があるだろうとは思います。
ただ、米中の交渉がまとまり、最終的な解決に至るとはとても思えません。
【参考記事】
●米中融和で戻り余地大きいのは日経平均!? 英国は、EU離脱延期の可能性が高まる?(1月21日、西原宏一&大橋ひろこ)
米中融和ムードが高まり、株式市場での買い戻しが続くなら1月、2月とリスクオンが続くことになります。その分、交渉が不調に終わったときなどの売られ方が強くなる。気をつけないといけないですね。
米中協議が終われば、日米のTAG(物品貿易協定※)交渉も本格化しそうです。
(※編集部注:「物品貿易協定」とは、輸出入する物品にかかる関税の引き下げや撤廃について定める協定のこと。金融やサービスなど物品以外の分野は交渉範囲に入らない)
■日米交渉で為替条項が盛り込まれる可能性が高まった?
先週(1月28日~)、注目されたのが浅川財務官。日米交渉の争点になるであろう為替条項について、「ちょっとしっくりこないところがある」と発言しました。
この発言は、逆に為替条項が盛り込まれる可能性の高まりを連想させます。
為替条項が盛り込まれれば円高圧力になりますね。
今週2月5日(火)に、トランプ米大統領の一般教書演説がありますが、重要なのは2月15日(金)が期限となっているつなぎ予算の行方。再び政府機関が一部閉鎖されるリスクが意識されそうです。
政府閉鎖の影響で止まっていたIMM(国際通貨先物市場)ポジションの発表は再開されましたが、出てきたのは2018年12月24日(月)集計分の数字だけ。今後、火曜日と金曜日ごとに1週分ずつ発表して、遅れを取り戻していくようです。
気をつけたいのが、チャイニーズニューイヤー。中国の春節のため、今週(2月4日~)はアジア市場の流動性が薄くなります。
フラッシュクラッシュほどのことはないと思いますが、動く可能性があり、要注意ですね。
【参考記事】
●フラッシュ・クラッシュで米ドル/円が暴落! 株の下落を伴えば、100円割れの可能性も!?(1月7日、西原宏一&大橋ひろこ)
●フラッシュ・クラッシュの真犯人はトルコリラ!? クラッシュ時もスプレッドが優秀なFX会社は?
●フラッシュクラッシュのロスカット等未収金は過去3番目の規模! 25%がくりっく365から発生
●凄腕FXトレーダー3人の2019年相場予想! 米ドル/円クラッシュ後の動きはどうなる?
英国については、いかがですか。
ブレグジット修正案の英議会採決が終わり、ゴールドマン・サックスはノーディール・ブレグジット(合意なき離脱※)の可能性を10%から15%へ引き上げました。
日産自動車は、英国で生産予定だった「エクストレイル」次期モデルの生産を英工場から九州工場へ切り替えると発表しましたし、不透明感は晴れませんね。
(※編集部注:「合意なき離脱」とは、2年間の交渉で合意に至らず、何の取り決めもないまま、英国がEUを離脱すること)
■米ドル/円が110円を大きく超えるのは厳しそう
強い動きをしているのが、先週(1月28日~)もお伝えしたカナダドル。
米国の利上げ打ち止めにより、金融要因から考えるとゴールドや原油などのコモディティ市場が強含むことになりますし、そうなればカナダドルには、まだ上昇余地があるのかもしれません。
【参考記事】
●注目のFOMCは「バイ・ザ・ファクト」に注意! 6週連続陽線のポンド/ドル、1.40ドルへ!?(1月28日、西原宏一&大橋ひろこ)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/カナダドル 日足)
英ポンドは対米ドルで1.32ドル台まで急騰したこともあり、英ポンドのロングもいったん小休止。
今週(2月4日~)はチャイニーズニューイヤーでもあり、少し材料に欠ける展開となるかもしれませんが、米ドル/円が110円を大きく超えるのは厳しいでしょう。110円近辺をめどに米ドル/円の戻り売りでしょうか。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)
(構成/ミドルマン・高城泰)
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