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西原宏一の「ヘッジファンドの思惑」

VWショックでユーロ圏経済に暗雲! ECB
追加緩和期待が高まりユーロは1.05ドルへ

2015年09月24日(木)16:23公開 (2015年09月24日(木)16:23更新)
西原宏一

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■ユーロ/米ドルは長期の調整局面から脱してきた

 みなさん、こんにちは。

 2015年初頭のユーロ/米ドルは、1月22日(木)にECB(欧州中央銀行)がQE(量的緩和策)導入を決定したことにより、想定以上のスピードで1.04ドル台ミドルまで急落。

【参考記事】
ドラギマジック炸裂! ECBが予想以上のオープンエンドQEを決定してユーロ急落!(1月29日、西原宏一)

 その後、ユーロ/米ドルは暴落の反動で、調整局面が長期化していましたが、それも6カ月経過してようやく終了。ユーロ/米ドルは再び動意をみせてきました。

■フォルクスワーゲンショックで、ユーロ圏経済は停滞へ

 ユーロ/米ドル反落のきっかけは、ドイツの大手自動車会社のスキャンダル

ユーロ/米ドル 2時間足
ユーロ/米ドル反落のきっかけはドイツの大手自動車会社のスキャンダル

(出所:米国FXCM

独VW、米国内で一部車の販売を停止=排ガス規制の不正回避で

ドイツ自動車大手フォルクスワーゲン(VW)は20日、米環境保護局(EPA)から排ガス規制の不正回避を指摘されたことを受け、米国内の販売店に対し、同社のディーゼル車の一部の販売停止を指示した。

同社のウィンターコルン社長は「顧客の信頼を裏切ったことを深くおわびする」との声明を出し、この問題に関して外部調査を依頼したことを明らかにした。

EPAは18日、同社の一部車が排ガス規制を不正に回避するためのソフトウエアを搭載していたと指摘。同社に科される制裁金は、最大180億ドルに達する可能性もあるという。

VW社の広報担当は、該当車の一部販売停止を認めたが、具体的な台数については明らかにしなかった。

ウィンターコルン社長は「内規や法律に対する違反を容認するようなことはしない」と強調し、関係当局に全面的に協力する姿勢を示した。

出所:ロイター

 このフォルクスワーゲン(VW)の排ガス不正問題は、米国に続き欧州やアジアで販売された車両についても調査の動きが拡大。

 混乱の中、ウィンターコルン会長(68)は辞任を表明。創業78年のフォルクスワーゲンの歴史上、最大のスキャンダルに発展したこの不正操作は、ドイツに限らず、ヨーロッパの自動車メーカーの株を軒並み急落へと誘引。

 このフォルクスワーゲンショックは、金融市場に置き換えれば、LIBOR(ロンドン銀行間取引金利)スキャンダルと同様の重大な事件に発展。

(※編集部注:「LIBOR」とは、国際的な金融取引の際に基準となる金利のこと。2012年6月ごろ、この金利が操作されているという疑念が持ち上がっ た。この金利は複数の銀行が関与しなければ操作できないしくみとなっていたことから、世界中の銀行を巻き込んだスキャンダルとなった)

【参考記事】
下落が収まらないユーロクロス。LIBORの不正操作問題でポンドの下落余地拡大!(2012年7月5日、西原宏一)

 この事件により、質実剛健で誠実な工業国のドイツのイメージも大きく傷つきました。この混乱は、当然通貨にとってマイナスとなり、じわじわとユーロは軟調な展開に。

■ユーロの下落はECBの追加緩和期待拡大も背景

 ユーロがじわじわと下落を再開している背景にはフォルクスワーゲンショックのみならず、ECBの追加緩和期待が拡大していることが挙げられます。

【参考記事】
FOMCは超ハト派で肩透かし…。市場の注目は日銀とECBの追加緩和にシフトか(2015年9月22日、西原宏一&松崎美子)

 フォルクスワーゲン株が急落し、ユーロ圏経済に暗雲が立ち込める中、ECBが量的緩和を当初の終了予定日である2016年9月末よりも大幅に延長し、2017年半ばまで継続するとの予測が台頭

 この予測が拡大している要因のひとつには、ECBがインフレターゲットを達成するには追加緩和が必要であるとの見方が挙げられます。

 予想をはるかに超える原油の急落もあり、現状のままだと、ECBのインフレ予測に到達するのは困難な状況に陥っていることは事実。

NY原油先物 日足
NY原油先物 日足

(出所:米国FXCM

■株の下落局面におけるユーロの動きに変化あり

 一方、過去数カ月、ユーロはファンディング通貨(※)として動く傾向があり、グローバルに株が急落すると、ユーロが反発する傾向が続いていました。

(※編集部注:「ファンディング通貨」とは資金調達通貨のこと。金利の低い通貨で資金を調達し、金利の高い通貨や株式などで運用するキャリートレードで用いられる)

 特徴的なのは、8月24日(月)のチャイナショック時におけるユーロ/米ドルの急騰。

 NYダウが200週移動平均線が位置する重要なサポートである、1万5350ドルに急接近するほどの急落をみせた局面で、ユーロ/米ドルは1.1712ドルまで急騰しています。

【参考記事】
NYダウはさらに暴落するリスクあり!? 株高のカギを握る本邦当局の一手とは?(8月27日、西原宏一)

NYダウ 週足
NYダウは重要サポートの200週移動平均線に急接近するほど急落

(出所:CQG)

ユーロ/米ドル 1時間足
NYダウが急落でもユーロ/米ドルは急騰した

(出所:米国FXCM

 ただ、今回のフォルクスワーゲンショックでは、ECBの追加緩和期待を背景に、欧州株の下落とともにユーロ/米ドルも反落へ。

 ユーロ/米ドルは長期に渡って、200日移動平均線をレジスタンスとして、下落を続けていましたが、2015年3月からの調整局面が長引き、何度か200日移動平均線を越える局面もありました。しかし、今回のフォルクスワーゲンショックで再びこの長期移動平均線を割り込んできました

ユーロ/米ドル 日足
フォルクスワーゲンショックで200日移動平均線を再び割り込んできた

(出所:米国FXCM

 足元のユーロ/米ドルは、当面、1.0800~1.1100ドルがサポートとなり下げ渋る展開もあるのでしょうが、ECBの追加緩和期待を背景に下落余地は1.05ドルまで拡大

 ECBの追加緩和期待の高まりで、再び動意をみせてきたユーロ/米ドルに注目です。


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今井雅人