■米雇用統計前に異変! 英ポンド/米ドル突然の暴落
FRB(米連邦準備制度理事会)の幹部たちは相変わらず「言いたい放題」であり、市場参加者は今晩(10月7日)の米雇用統計を待っている。その間に、マーケットに異変が生じた。今朝(10月7日)の英ポンドの急落だ。
2016年10月7日(金)午前8時4分から、英ポンド/米ドルが突然暴落し、数秒のうちに6.1%の下落幅を達成した。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/米ドル 5分足)
ブルームバーグによると、ザラバの安値は1.1841ドルを記録し、1985年3月26日(火)以来、最低レベルだという。

(出所:CQG)
同社は英国のEU(欧州連合)離脱が決定した6月24日(金)を含めても、本日の下落が最大幅を記録した、と主張しているが、ロイター社は6月24日(金)は10%の下げ幅があったと言い、まだ、その記録は更新されていないとしている。
もっとも、暴落があったこと自体に、異論の余地はない。
■英ポンド暴落の理由は仏大統領の発言が引き金?
では、英ポンドはなぜ、このような暴落を引き起こしたのだろうか。
強いベア(下落)トレンドが進行中であることについては承知しているが、あのEU離脱といったショッキングな決定に比べ、今回は大した材料はなく、かつ東京オープン前にこのような値動きになるとは…「納得できない」市場関係者が多いのではないだろうか。
いろいろな憶測(誤発注とか、アルゴリズム取引の連鎖的な反応とか)があったが、どうやら「英国はEU離脱の報いを受ける必要がある」というフランスのオランド大統領の発言が報じられたことに起因しているようだ。
オランド氏の真意はどうであれ、英EU離脱決定のインパクトが今も続いていることは確かであり、また、グローバリズムの終焉が氏の発言をもって強く印象づけられたに違いない。今さらではあるが、マーケットがそれに再度驚き、また、反応したのではないかと思う。この意味では、このままではEU自体の解体もそう遠くないかもしれない、というマーケットの懸念が表れたとみる。
ゆえに、ユーロ/英ポンドは急伸しているが、ユーロ/米ドルは続落しており、やや強引かもしれないが、リスクオフの米ドル買い、といった側面があるという解釈もできるかと思う。
■英ポンド/円は120円打診があってもおかしくない
英ポンド/米ドルの暴落は、当然のように英ポンド/円にも波及する。これから英ポンド/円は120円の節目打診があってもおかしくないだろう。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/円 日足)
英ポンド安の側面ばかりが重視されても別に問題はないが、前述のように、リスクオフの側面を重視するなら、今回の値動きから、当然のように米ドル/円がこれからどうなるかについてのヒントが示唆されるだろう。
言うまでもないが、リスクオフなら円高傾向が続く。しかし、目先、円安期待が高まり、円高トレンドがすでに終焉したといった論調も聞こえてくる。果たしてどうなるか、昨日(10月6日)書いた文章をもって説明したい。以下は本文。

(出所:アイネット証券)
いろいろ材料があったが、サーマズ氏の「日銀が実質ヘリマネをやっている」の一言で円安方向に振れている。面白いことに、サーマズ氏が言う前に本邦のエコノミストの多くはそう言い切れなかったが、今は付随する声があちこちに聞こえてきた。当然のように、円安に振れているからだ。
さて、円高トレンドは終焉したのでしょうか。現時点で言えるのは、その可能性があるものの、言い切れないばかりか、判断する自体が性急、ということだ。なぜなら、現在の市況、円高トレンドに対するスピード調整がはっきり観察されているが、円高トレンドが終焉したというサインを発見できていないからだ。
GMMAチャートで見る限り、現在の状況、あの1月末日銀会合後の市況に似っているかと思う。「トビウオ」のサインが点灯されたと思われるが、しっかり確認されるまで一旦待ち、というスタンスが得策かと思う。この意味では、明日米雇用統計が重要な役割を果たすと見る。円高トレンドがなお健在しているなら、明日米指標の良し悪しと関係なく、ドル/円の頭が重くなるはずだ。反面、円安トレンドへすでに転換しているなら、明日米指標が悪くてもドルが上昇していくでしょう。このような教訓、我々があの1月末日銀が決定した「マイナス金利付きQQE」やその影響からしっかり勉強してきたはずだ。
昨日(10月6日)書いた文章なので、当然のように、今朝(10月7日)の英ポンドの急落はまったく想定できていない。が、現在の英ポンド/円のチャートから考えると、これから円安に振れるよりも、円高継続の公算が大きいのでは…と改めて思う。
■市場センチメントに矛盾、冷静に考えるべき
何しろ、英ポンド/円の値動きや内部構造が円高トレンドの継続を示唆しているなら、追随する形で、これから米ドル/円やユーロ/円でも円高の一段進行があり得る。
その上、注意していただきたいのは、市場センチメントに矛盾しているところがある点だ。
EUのQE(量的緩和策)縮小観測で金(ゴールド)は大幅に売られてきたが、それに比例する形で(※)、EUのQE縮小がユーロ買いの材料にならず、目先、むしろユーロ売りの言い訳になっている。
(※執筆者注:米ドル建て金と米ドル/円は逆相関の関係があると知られている)
また、サマーズ氏がヘリマネ云々と言っているが、一部市場参加者は日銀のQQE(量的・質的緩和策)縮小も懸念している。QQEの縮小は原則としては円高をもたらすから、ロジックはともかく、目先の値動きはそれを織り込んでいるとは思わない。やはり、目先冷静に考えるべきだと思う。
最後に、今晩(10月7日)の米雇用統計次第という論調が多いが、金の暴落から考えて、米サイドの好材料はすでに織り込まれている可能性が大きいとみる。したがって、円安期待がいきすぎている可能性もあるので、要注意だ。市況はいかに。
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)