■方向感がない中、下がれば買い、上がれば売る戦略を継続
外国為替市場では、トレンドを形成するような大きな材料がないため、方向感のない相場展開が続いています。
そういう中で、私自身は、米ドル/円が下がったところで買って、それを基本的にキープしつつ上がったところで売り、また買うチャンスを狙うという戦略を続けています。
【参考記事】
●米ドル/円下抜けの動きはダマシかも…! ドル安材料見当たらず。押し目買い継続!(11月24日、今井雅人)
●米ドル/円、下落なら断続的に買い下がり! 112円半ば~112円割れは絶好の買い場に(11月16日、今井雅人)

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
■日本の機関投資家はなぜ為替ヘッジをしなくなっている?
そうした戦略をとる背景となっているのが、日本の機関投資家による米ドル買い注文。当コラムでも何度か紹介していますが、改めて、その内容を確認してみたいと思います。
日本の大手生命保険会社9社の2017年度の下期資産運用計画を見ると、第一生命保険を除く8社が、利回りが高い外国債券への資金配分を増やす方針を示しています。
その中でも、為替ヘッジをしないオープン外債への意欲が高まっています。
【参考記事】
●テイラー氏がFRB議長でもドル高は一時的!? 米大統領の訪日迫る。ポジション整理へ!(10月27日、今井雅人)
●ドル/円を取巻く環境はサンドイッチ状態!? トランプ大統領来日へ。北朝鮮の動向注意(11月2日、今井雅人)
その背景には、米国の短期金利が上昇し、ヘッジコストが増加していることがあります。

(出所:Bloomberg)
日米の金利差が広がり、先物での米ドル売り・円買い予約のヘッジコストが増加してきていることが運用益を圧迫してきています。そうした状況の中で、オープン外債の検討が進んでいるということです。
たとえば、最大手の日本生命は、8400億円のうち、大半をオープン外債に振り向ける方針を示しています。その他の会社は、そこまでではないものの、円高局面では米ドルを買う方針を検討しています。
こうした傾向を背景に、私も米ドル/円の押し目買いを続けているということです。ただ、レンジなので上値も重い。当面は、113円台半ば程度が天井ではないかと考えています。

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■トランプ米大統領がエルサレムを首都認定。大使館移転宣言
その他の気になるニュースについて、触れておきたいと思います。
トランプ米大統領は、12月6日(水)、エルサレムをイスラエルの首都と認め、テルアビブから在イスラエル米大使館を移転する手続きを開始すると宣言しました。

エルサレムをイスラエルの首都と認め、テルアビブから在イスラエル米大使館を移転する手続きを開始すると宣言したトランプ米大統領。今のところ、世論は冷静なようだが… (C) Chip Somodevilla/Getty images
今のところ、世の中の反応は、比較的冷静です。
しかし、この決定により、中東は、さらに混乱に陥る可能性があり、過激派組織によるテロの可能性が高まったことは指摘しておきます。
将来の市場の不安定要因となり得るでしょう。
■米税制改革法案可決。調整次第で米ドルに上昇圧力か
また、米国では、税制改革法案が上院、下院で、それぞれ可決しました。
法人税の引下げ時期や州・地方税控除の扱いなどで上下両院の案に相違があり、今後の両院協議会での調整が難航する可能性があります。
焦点となる法人税は、下院案では現行の35%から20%に即時引下げるとしていますが、上院案は、実施時期を2019年に先送りするとしています。
この実施が、どちらになるかによって、市場への影響は違ってきます。もちろん、即時になれば利上げのペースも早くなり、米ドルにも上昇圧力がかかってくるでしょう。

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もう1つの焦点は、米国企業が海外に留保する利益を米国に戻す際の税率の引下げです。
現金・流動資産は上院案が12%、下院案が14%に引下げるとし、固定資産については上院案が5%、下院案が7%としています。上院案が採用されれば、米ドル高圧力が高まると考えています。
ただ、海外資産の大半は米ドルで保有していることから、新たな米ドル買いはそれほど出ず、影響は軽微との見方もあり、どれくらいの影響が出るかは、まだ正確には見通せていません。
今後、調整される「統一法案」の内容は重要となってくるでしょう。
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