■投機筋はほぼノーポジ。その原因となったのは…?
前回のコラムでも紹介しましたが、市場のポジションが急速に縮小しています。
【参考記事】
●本丸は貿易戦争! 北朝鮮リスクの後退は格好のポジション調整材料になっただけ!?(3月29日、今井雅人)
IMM(国際通貨先物市場)における、投機筋の米ドルに対する円の売り越しポジションは、先々週(3月19日~)に続き、先週(3月26日~)も大幅に縮小。
3月27日(火)時点の売り越しは、たったの3668枚と、とうとう差し引きのポジションが、ほぼスクエア(ノーポジション)になっています。

(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)
今年(2018年)に入ってからは、円高傾向が続いていましたが、その間も、投機筋の米ドル/円のロング(=買い)ポジション、つまり、米ドルに対する円の売り越しは、かなり積み上がった状態が続いていました。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
しかし、ここに来て、大きな変化を見せています。
その原因となっているのが、米国発の貿易摩擦であることは、言うまでもありません。
■米中の貿易摩擦問題が激化!
その貿易摩擦に関しては、特に、中国との間で鞘当てが激しくなっています。
【参考記事】
●中国の自業自得で米中全面対決の冷戦へ! リスクオフムードはクロス円で顕著(3月23日、陳満咲杜)
●米中の貿易問題はチキンレースの様相へ! 米ドル安続きそうだが新年度入りには注意(3月27日、バカラ村)
ご存知のとおり、米国は鉄鋼・アルミニウムへの輸入関税措置について、EU(欧州連合)、メキシコ、カナダ、韓国などを対象国から外しています。
EUに関しては、これから両者の間で交渉の余地があること、メキシコとカナダに関してはNAFTA(北米自由貿易協定)の見直し、韓国に関しては米韓FTA(自由貿易協定)の内容見直しというカードがあるために、今回は対象外にしたということです。
しかし、中国と日本に関しては、対米国の貿易黒字額が1位と2位であり、かつ、二国間でのFTAのような枠組みがないために、対象国から外されることはありませんでした。
そして、中国に対しては、鉄鋼・アルミニウムへの関税に加えて、4月3日(火)には、中国が知的財産権を侵害していることへの制裁の一環として追加関税を課す、およそ1300品目を発表しました。
航空宇宙や情報通信などのハイテク機器を中心とする制裁対象の候補で、追加関税の対象となる製品の輸入金額は500億ドル(約5兆300億円)におよびます。
中国は、それに対して4月4日(水)、500億ドル(約5兆300億円)相当の米国からの輸入品に、25%の追加関税を課す計画を発表しました。対象には、大豆、自動車、化学品、飛行機などが含まれています。
【参考記事】
●米経済面の最大のリスク要因は貿易政策! ドル/円は崩れれば100円に向かう可能性も(3月22日、今井雅人)
■トランプ大統領は貿易戦争を望んでいない!?
しかし、トランプ米大統領は、ツイッターで、「我々は貿易戦争をするつもりではない、交渉をする余地がある」という趣旨の発言をしています。
また、ロス米商務長官はCNBCのインタビューで、「中国の反応は驚くようなものではない。米国は第3次世界大戦に突入しようとしているのではなく、交渉による解決への扉は開かれている」と述べました。
市場関係者は、この貿易摩擦問題について、先行きを固唾を呑んで見守っていましたが、米国側から「交渉の余地がある」というメッセージが発せられたことで、一時的に安心感が広がっています。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 4時間足)
■今後の交渉次第。米ドル/円は100円? それとも110円?
ただ、中国の米国に対する貿易黒字は、年間で40兆円近くになります。米国の貿易赤字額の、実に5割弱を中国が占めているのです。
この赤字の縮小になるような交渉内容でなければ、トランプ米大統領は納得しないでしょう。
米中の交渉はこれからです。どういう決着になるのか、まったく予断を許しません。この状況を、しっかり見守りたいと思います。
交渉がうまくいかなければ、米ドル/円は100.00円を割り込む展開になります。

(出所:Bloomberg)
逆に、一定の合意ができれば、110.00円を超えて、円安へ向かう展開になるでしょう。

(出所:Bloomberg)
交渉がどうなっていくか、今の段階で決め打ちはできません。
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