■ドルインデックスに出た相場反転の2つのサインとは?
相場は一進一退を続けている。ドルインデックスは5月2日(月)に2015年8月安値92.62を割り込み、5月3日(火)には91.91の安値を記録したものの、同日中に大きく反騰、93の節目以上の終値となって、下落一服の兆しを見せ始めた。
この見方は2つのシグナルをもって判断できる。
まず、5月3日(火)のチャートは「たくり線」(※1)の形を示している。
そして、同日安値は2015年1月以来の安値だったが、そこから一転上昇して大引けとなり、前日(2日)の高値を上回ったので、「リバーサル・ロー」(※)、つまり、安値をもって反転したというサインも点灯していた。
(※1編集部注:「たくり線」とはざっくり言えば、相場の下落局面が続いたあとに出た下ヒゲの長いローソク足のこと。陰線が続いたあとに出ること、下窓を開けて寄りつくことなどを条件とする場合もある)
(※2編集部注:「リバーサル・ロー」とは下落局面において、新安値をつけたあと反転し、前日の終値または高値より高く引けること)

(出所:CQG)
次に、2015年8月の安値がドルインデックスにとって重要なサポートポイントとなっている。今回は同ポイントをいったん割り込み、そこからまた回復してきたから、今後もこれが守られれば、今週の安値打診自体が「フォールス・ブレイクアウト」(※)、すなわち、下放れがダマシであった可能性を示唆している。
(※編集部注:「フォールス・ブレイクアウト」とは重要なサポートラインもしくはレジスタランスラインをいったんは突破したものの、結局は元に戻って、ブレイクが失敗に終わったことを意味する)

(出所:CQG)
■米雇用統計の結果とドルインデックス、5つのパターン
これらのサインが正しければ、今晩(5月6日)の米雇用統計が米ドルの反転をもたらすことが推測される。
実際、事前に米雇用統計を予測できる方はこの世にいないから、米雇用統計自体の良し悪しは推測できない。しかし、相場の反応はあらかじめ予想でき、それは大まかに以下のパターンが想定される。
(1)米雇用統計が良く、ドルインデックスが上昇
(2)米雇用統計が悪く、ドルインデックスが反落してくるが、安値を更新せずにすむ
(3)米雇用統計が良く、ドルインデックスが下落
(4)米雇用統計が悪く、ドルインデックスが上昇
(5)米雇用統計が悪く、ドルインデックスが安値更新
もっとも想定されやすいのが、(1)と(2)のパターンではないかと思う。(3)と(4)のパターンはいわゆる完全な逆行だが、可能性は低い気がする。
なぜなら、米追加利上げ観測がなおくすぶるなかにあって、FRB(米連邦準備制度理事会)のタカ派でも利上げは経済指標次第と強調しているからだ。米雇用統計の良し悪しが結果的に追加利上げの有無を決定できなくても、目先の市場センチメントを左右する効果は十分発揮できる。
そして、(5)の可能性は否定できないものの、前述のテクニカルのシグナルに鑑み、確率は低下しているのでは…と思う。
■豪州の利下げは市場にとってサプライズだったようだが…
米ドル全体の底打ちは、外貨ごとに違うサインとなって現れているが、そのなかで足元では、豪ドル/米ドルの反転サインがもっとも強烈であろう。豪州の「予想外」の利下げにマーケットはややサプライズをもって反応した様子で、目先、豪ドルの反落トレンドが鮮明である。
豪ドル利下げの可能性を筆者はずっと指摘してきた。
その理由はほかならぬ、豪ドルの大幅リバウンドが進行していたからだ。RBA(オーストラリア準備銀行[豪州の中央銀行])は豪ドル安を隠さず強く志向してきたから、豪ドル高の進行だけでも利下げの根拠になるわけで、わかりやすかったとも言える。
【参考記事】
●豪中銀は秘かにチャイナショックを警戒!?米利上げ=米ドル/円上昇とは限らない!(2015年8月7日、陳満咲杜)
では、豪ドルの頭打ちのサイン、どう見るべきか。現執筆時点、すでに0.74ドルの節目割れまで豪ドル安が進行しているから、解釈の後づけにならないよう、5月3日(火)のレポートを公開しておきたい。原文は以下のとおり。

(出所:CQG)
豪ドルの反騰、終焉したのか
豪州の利下げ、我々の想定通りである。もっとも、豪ドル高が豪州利下げにつながるといったロジックだったので、利上げが豪ドル高に終止符を打ってもおかしくなかろう。
但し、検証する場合、ファンダ上の材料だけでは不十分だ。テクニカルの視点では、日足を見る限り、そろそろ条件が揃える可能性が出ているから、要注意だ。
上のチャートが示すように、本日の罫線、このまま大引けした場合、リバーサル&フェイクセットアップのサインを点灯しよう。また、1-2-3の法則で測る場合、4月27日安値0.7546割れがあれば、条件3を満たすと思われ、基準を厳しくしても、同7日安値0.7490割れがあれば、条件を成立させるでしょう。つまり、トレンドが反転される、ということである。この場合、日足における「三尊型」の成立も明白になってこよう。
オシレーター系の多くはブル変動レンジからベア変動レンジにシフトしているところも気になるポイントだ。いずれにせよ、利下げという材料よりもテクニカルのポイントに注意すれば、豪ドルの動きをより解明できるでしょう。
上記のように、0.7490ドルは5月3日(火)の執筆時点で、まだ割れていなかったが、同日すぐに割り込んだので、これが豪ドルの反転を決定づけた。
■英ポンド/米ドルやユーロ/米ドルも頭打ち・反転のサインが
その他の主要通貨ペアでは、英ポンド/米ドルは「リバーサル・ハイ」(※)、すわなち、ザラ場にて高値更新したものの、終値が前日より安くなり、反転のサインを灯していた。
(※編集部注:「リバーサル・ハイ」とは上昇局面において、新高値をつけたあと反転し、前日の終値または安値より安く引けること)

(出所:CQG)
ユーロ/米ドルは豪ドル/米ドルや英ポンド/米ドルほど強烈ではなかったものの、5月3日(火)のローソク足でいわゆる「流れ星」(※)のサインを点灯、当面の頭打ちを示唆していた。
(※編集部注:「流れ星」とは上ヒゲが長く、実体の小さなローソク足のこと。大陽線のあと、窓を開けて寄りついたあとにできたものを特にこう呼ぶこともある)

(出所:CQG)
■GW期間中の米ドル/円相場の傾向とは?
当然のように米ドル/円も、5月3日(火)に安値を更新して、105.55円の安値を記録したあとは保ち合いの市況に入った。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
105円台のターゲットを筆者はずっと指摘してきたので、これはまったくの想定範囲内であるが、GW期間中の円高傾向が例年ほど強くなかったのでは…と一部読者様は疑問を呈しているかもしれない。
【参考記事】
●米株上昇と金&円上昇、ニセモノはどっち?桜満開のころ、ドル/円は105~106円へ!(2016年3月18日、陳満咲杜)
●NYダウ、原油、中国株反騰は限界に近い。105~106円へのドル/円下落は時間の問題(2016年3月25日、陳満咲杜)
この疑問に答えるには、近年のGW期間前後における米ドル/円のパフォーマンスを調べてみればよい。以下は2008年からの統計だ。
・2008年 GM中動かず、直後3日間 3円程度の円高
・2009年 10日間 5円程度の円高
・2010年 2日間 7円程度の円高
・2011年 8日間 3円程度の円高
・2012年 6日間 3円程度の円高
・2013年 9日間 2円程度の円安
・2014年 4日間 1円程度の円高
・2015年 4日間 3円程度の円安
こういった統計をみると、GW前後における円高の傾向は強く、また、3円程度の円高がもっとも発生しやすいことがわかる。ただし、今年(2016年)に限って言えば、4月28日(木)からすでに6円程度の円高が観察されているから、GW期間前後という全体条件でいえば、もう十分円高になったと言える。
このためか、直近のGW3日間は、むしろ円安方向に振れており、円高の値幅をいくぶん消している。ドルインデックスの底打ちサインとの整合性を考えれば、よりおわかりいただけるのではないかと思う。
■日銀の「有言不実行」のせいで円安は限定的に
もっとも、4月28日(木)からの米ドル/円急落は、日銀の「有言不実行」が原因であったから、容易には修正されない。
【参考記事】
●日銀の「情報漏れ作戦」が裏目に? 市場の報復を受け、ドル/円は100円まで下落も!(2016年4月28日、陳満咲杜)
このため、仮に今晩(5月6日)の米雇用統計が極めて良好だとしても、米ドル高はおもに円以外の外貨安に作用し、円安は限定的だと思う。
この結論は以下の2つの視点をもって解釈されよう。
(1)外貨安によって生じるクロス円相場における円高圧力が米ドル/円に波及してくる可能性
(2)前回コラムの指摘どおり、日銀の「情報漏れ作戦」が裏目に出たから、これから相場の報復にあいやすい。
詳細はまた次回に譲るが、円高トレンドがなお継続されることだけを強調しておきたい。市況はいかに。
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)