■フェイクニュースと減税法案の上院可決
週末、アメリカからのニュースが続きましたね。ひとつはフェイクニュース。
ABCテレビは先週、12月1日(金)、「フリン前米大統領補佐官は大統領選挙期間中、トランプ大統領からロシアと接触するよう指示を受けた」と伝えました。
これを受けてNYダウは一時350ドル安。しかし、週末になってABCテレビは誤報だったことを認めました。
(出所:Bloomberg)
アメリカの三大ネットワークはトランプに不利なニュースを流すことが多く、今回はそれが極端な形で出ました。
ただ、金融関係者の中には「フリン氏がFBI(米連邦捜査局)の捜査に全面協力することがポイント。ニクソン大統領が辞任へ追い込まれたウォーターゲート事件の展開と似ている」と見る向きも。ロシアゲート疑惑はまだ終わったわけではないようです。
NYダウの日足チャートも「首吊り線」(天井を示唆するローソク足)のように見えます……。
(出所:Bloomberg)
もうひとつのニュースは米上院が減税法案を可決したこと。
30年ぶりの大規模減税となりますが、既報の内容でありポジティブなサプライズはない。これで買われるよりもセル・ザ・ファクトとなる可能性のほうが高そうです。
まだ下院案と上院案のすり合わせが残っているんですよね。大きな違いは法人減税の実施時期で下院案では2018年、上院案では2019年です。
どちらに決まるかで株式市場が反応するかもしれません。
■円売り、米国株買い、原油買いの逆流に注意
カレンダーを気にする必要が出てくる時期ですね。
例年だと、クリスマス休暇までは新しいポジションをつくるよりも手仕舞いが活発になる。
今年(2017年)、ずっと上昇してきた米国株は売られやすくなります。利益確定売りで上値が重くなってくるのかなと。
でも12月の米国株のパフォーマンスは悪くないようですね。
クリスマス休暇が終わると、翌年のポジションをつくるからでしょうね。
いずれにせよ、12月は手仕舞いの時期。今年(2017年)、偏っていたポジション――史上最高値を更新している米国株や過去最高にロングが積み上がったWTI原油、それにショートが積み上がったままの円、これらの逆流には要注意です。
■米大使館のエルサレム移転でリスクオフも
今週(12月4日~)、気になるのはアメリカが在イスラエル大使館のエルサレム移転を発表する可能性があること。
報道によると、5日(火)か6日(水)にも発表される可能性があるようです。パレスチナの反発は必至ですね。
中東リスクがリスクオフの材料となるかもしれないですね。
11月30日(木)のOPEC(石油輸出国機構)総会では9カ月の減産延長で合意しましたが、想定どおりの内容。しかし、WTI原油は高止まりしたままですね。
(出所:Bloomberg)
ちょっと気持ち悪いですね。先物市場のファンドポジションは過去最高の買い越しとなっており、OPEC総会で余程のポジティブサプライズがなければセル・ザ・ファクトで下がると見る向きが多かったのですが……。
【参考記事】
●IMMの円ショートが2013年以来の高水準! 上昇できないドル/円は、戻り売りを継続へ(11月20日、西原宏一&大橋ひろこ)
需給が思っていたよりもタイトだという話もありますし、中東リスクが心理的な下支えの材料となっているのかもしれません。
原油の強さが世界景気の強さを示しているのなら、株価はあまり落ちない。そのシナリオも頭に入れておきたいですね。
■中銀会合が集中する12月
今週(12月4日~)は米雇用統計もありますが、13日(水)FOMC(米連邦公開市場委員会)での利上げ織り込みはほぼ100%。
市場の関心は、来年(2018年)以降の利上げペースでしょう。
今月(12月)は主要国での中央銀行会合が続きますね。5日(火)がオーストラリア、6日(水)深夜にカナダ、来週(12月11日~)はアメリカ、スイス、イギリス、ユーロ圏と続き、21日(木)に日銀です。
黒田さんの記者会見では、先日言及した「リバーサルレート」や、国債の買い入れ額減少が実質的なテーパリングなのでは? といった点について質問が飛びそうです。
【参考記事】
●IMMの円ショートが2013年以来の高水準! 上昇できないドル/円は、戻り売りを継続へ(11月20日、西原宏一&大橋ひろこ)
また、17日(日)は金正日の命日。30日(土)は金正恩が朝鮮人民軍最高司令官に就任して6周年。
米国サイドは軍事衝突の可能性をほのめかしていますし、北朝鮮への警戒感が高まりそうです。
もう12月ですが政治イベント、リスクイベントが満載。ボラティリティが高まるかもしれず、気が抜けないですね。
■米ドル/円の戻り売りを継続
米ドル/円は、今年(2017年)のレンジのちょうど真ん中。動く可能性はありそうですよね。
基本的には、米ドル/円の戻り売りで考えています。
【参考記事】
●もしも黒田さんが日銀総裁を辞めたら…!? 生保買いがあっても米ドル/円は戻り売り!(11月27日、西原宏一&大橋ひろこ)
●Brexitの清算金大筋合意で進展に期待! 英ポンド上昇で重要な節目突破なるか?(11月30日、西原宏一)
(出所:Bloomberg)
ただ、米減税法案可決でのセル・ザ・ファクト発生は12月13日(水)の米利上げまで引っぱられるかもしれないし、その前に中東リスクでの下落もありえる。
いずれにせよ、米ドル/円が動くとしたら下方向かと思うので、戻り売りでいいでしょう。
(構成/ミドルマン・高城泰)
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