ロング筋の損切りが一巡すれば、米ドルは再び切り返してくると見ている。
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米ドル/円に関しては、欧米の「ソブリン戦争」に巻き込まれた形で最後の「ダメ押し」にさらされている。
だが、円高の最終段階といった位置づけ自体は変わらないとみる。
■問題先送りの構図は昨年決定したギリシャ支援と同じ
それでは、今回のギリシャ支援の合意によって、ユーロのソブリン危機は終えんに向かうのだろうか? この点について筆者はそうではない可能性が高いと思う。
今回の合意でユーロのソブリン危機はいったん後退したが、これは問題の先送りであり、本質は何も解決していない。このことは昨年決定したギリシャ支援と同じだ。
要するに時間稼ぎであり、この間に問題とされている国々が本当に経済成長を遂げ、かつ構造改革を達成しないかぎり、再燃するのは時間の問題だ。
また、欧州金融安定化ファシリティ(EFSF)は企業の「裏金」のようなものになりつつある。どこかにミスがあれば、裏金によって補てんする方法は長続きしない上、裏金自体が新たな問題を引き起こす可能性がある。
もし、イタリアやスペインにも支援が必要となった場合、EFSFの対象になるか、対象になった場合はどれくらいの資金が必要かといった問題にも直面するだろう。
また、より重要なのは、「裏金があるから多少ミスしても大丈夫」という安心感と慢心が生まれることだ。こうしたことが今後、大きな問題を生じさせると思われる。
今回の合意によってギリシャのみならず、財政懸念のある他の国においても危機感や緊張感が緩んでくることが想定される。そうなれば、その後の代償は大きい。
ギリシャ危機の再燃が時間の問題であれば、結果は「ギリシャ悲劇」しかあるまい。
■ユーロのソブリン危機は再燃する
さて、このようなファンダメンタルズ分析は二の次として、もっと決定的な要素が相場の内部構造にある。
ドルインデックスにしても、米ドル/円にしても、「17年プライマリーサイクル」がボトムの到来を暗示している以上、ユーロのソブリン危機は縮小するどころか、拡大傾向が強まる蓋然性は大きい。
ごくシンプルな理屈だが、「ユーロ安」なしでは米ドルの底打ちはあり得ないから、ファンダメンタルズが後を追う形でユーロのソブリン危機を再燃させるだろう。
ただ、当面の欧州の債務危機はおおむね乗り切られた格好になっており、マーケットの注目は米国の債務上限引き上げなどの材料に集まると思われる。
米ドル全体の底打ちには、もう少し時間がかかりそうだ。
だが、米国の債務上限引き上げ問題は、期限ギリギリに決着する可能性が高いため、米ドルの切り返しもその後になる可能性が高いと見ている。
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