■米ドル/円急騰を演出した2つの要因とは?
みなさん、こんにちは。
先週(11月14日~)109円台後半まで急騰した米ドル/円ですが、さすがに一服感が出て、一時108円台まで反落。
しかし、十分な時間調整もなく、米ドル/円は一気に節目の110円台を回復。
11月21日(月)早朝のシドニー市場では、111.00円のバリアオプション(※)もあっさり上抜け、一時111.18円まで急騰しました。
(※編集部注:オプションには「バニラ」と「エキゾチック」の2種類がある。上記の「バリアオプション」は、エキゾチックオプションのひとつで、権利行使価格に一度でも到達してしまえば、そのオプションは消えてしまうというような特殊なルールが加えられているもの)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 1時間足)
本稿執筆時点でも、米ドル/円は110円台を維持しており、110円台後半で推移。
この米ドル/円急騰を演出したのが、トランポノミクス(※)に加え、日銀の指値オペ。
(※編集部注:「トランポノミクス」とは、次期米大統領のドナルド・トランプ氏とエコノミクス(経済学)を合わせた造語で、トランプ氏が掲げる経済政策のこと)
■日銀が実施した「指値オペ」、その真の意味とは?
では、指値オペとはなにか?
「指値オペ」は日銀が適当と判断するイールドカーブから離れた水準に金利が動いたときに、日銀が指定する利回りで国債を無制限に買う措置。
9月に国債買い入れの目安として短期金利をマイナス0.1%、長期(10年債)金利をゼロ%程度で維持する「イールドカーブ・コントロール」政策を決めた際に導入された。
出所:ロイター
「指値オペ」という説明だと、政策の意味合いがうまく伝わりませんが、ウォール・ストリート・ジャーナルのヘッドラインでは、「Buy Unlimited JGBs at Fixed Rates」となっています。
【参考記事】
●2週間で10円上げたドル/円、111円到達! “買い遅れ涙目”は多い。下げたら買い!(11月20日、西原宏一&大橋ひろこ)
バイ・アンリミテッド、つまり、「無制限の買い」という意味合いとなり、こちらのほうがわかりやすくマーケットに与えるインパクトは大。
ともあれ、これは9月の日銀決定会合時に「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」で導入された新型オペ。
【参考記事】
●マイナス金利の深堀りはなく相場乱高下! 日銀は金融政策の何を変更したのか?
ただ、9月に日銀がイールドカーブ・コントロールやオーバーシュート型コミットメントを発表したときは、多くのエコノミストから「テーパリングである」との批判的な論調が目立ち、多くの参加者が円高予測に傾斜。
しかし、当コラムで何度かご紹介させていただいたように、日銀の決定に関する欧米勢の理解は「テーパリング」ではなく、日銀の追加緩和。
つまり、円安要因。
【参考記事】
●日銀決定はテーパリングへの道? それともヘリマネ? 米ドル/円は底固め後、反発へ(9月29日、西原宏一)
日銀の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」政策に対する欧米勢の見方は、前FRB(米連邦準備制度理事会) 議長のバーナンキ氏やサマーズ氏などが「ヘリマネ」に近いと当初から指摘していました。
彼らのコメントは以下のコラムを参照してください。
【参考記事】
●日銀決定は実質ヘリマネとの見方ジワリ。異様に底堅いドル/円の100円台は買いか(10月3日、西原宏一)
●日銀会合への市場の評価は真っ二つ! 米ドル/円はこのまま反発しそうな感じも…(9月26日、西原宏一)
結果、トランポノミクスが誘引する米ドル高に加え、日銀の「アンリミテッド」な追加緩和が加わり、米ドル/円は一気に111円台まで暴騰したわけです。
■本邦機関投資家は米ドル/円急騰にあわてる
これにあわてたのが、本邦機関投資家。
10月に入り、彼らは米ドル/円が100~102円台でM&Aに伴う米ドル買いを一部持ち込んでいたのですが、「トランプリスク」の報道が目立つようになり、米ドル買いをいったん見送り。
そして、迎えた米大統領選挙。
選挙結果はトランプ大統領の誕生というサプライズなものとなり、彼らが懸念(期待?)したとおり、米ドル/円では101.20円までの円高相場が訪れたのですが、円高局面は1日ももたず…。
待ち構えていた米系投資家の米ドル買いにより、逆に米ドル/円は110円台まで暴騰しました。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
結果として100円レベルという米ドル買いの機会を逸した彼らからの米ドル買い注文は「押し目待ち」という展開となり、米ドル/円の下落余地はさらに限定的。
次の米ドル/円のレジスタンスは5月30日(土)につけた…
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