未曾有の大台へ達するも、達成感がない理由は?
「昔は物欲がモチベーションでした。クルマを複数台購入したこともありましたが、そんなステージは卒業しました。
昨年は目安にしていた“大台”を達成しましたが、だからといって何か達成感があるわけではない。昔と違って、今では日々のトレードでの口座残高は単なる数字の増減。毎年が『モニターの数字の増加→納税→数字の増加→納税』の繰り返しですね」
達観した表情でそう話すのは、専業トレーダーの「きゃりーぱふぱふ」さん。これまでにFXで稼いだ金額は非公開ながら、その金額は10億円を優に超える。実力、資産とも日本はおろか、世界でも屈指のレベルにあるだろう天才トレーダーだ。
見切り発車での専業トレーダー転向
「FXを始めたのは2009年でした。10万円で始め、一時は5万円にまで減らしたものの、その後、100万円にまで増やしました。当時はまだ日本でも数百倍のレバレッジが効かせられたし、英ポンドも1日で5円、6円と動くことがザラにあった。すぐに100万円になったんです。今思えば『一発屋』でしかなかったですが」
ビギナーズラックで10倍にしたものの、すぐに悲劇が訪れる。
「ナンピンの失敗でほぼゼロになりました。この、すっ飛ばした経験が大きかった。結果が出なかったのが悔しかったし、負けず嫌いな性格なので、『FXで食っていこう』と決意しました。
当面は貯金で食べていけばいいし、ダメなら予備校講師でもやればいいし、ある専門職の資格も持っていたので社会に戻ることもできるだろう、と」
偏差値100超えの頭脳の持ち主
見切り発車の専業転向だが、きゃりーさんには人並み外れた頭脳があった。ザイFX!編集部は、きゃりーさんの模擬試験の結果を偶然目にしたのだが、そこに記載されていた数学の偏差値は100を超えていた…。
それも東大志望者を対象にした模試での結果だから、母集団のレベルも高いはず。これも負けず嫌いな性格ゆえなのだろうか。
「ところが、数学や物理では自分より優秀な人間がいました。自分とは次元がまったく違うレベルの天才たちです。彼らには一生かけても、かなわないな、と。FXにしても頂点を目指したわけではなく、最初は『とりあえずは安定して収益を出せればいい、いつか億に達せればいい』と思っていました」
しかし、生来の負けず嫌いぶりゆえだろうか。きゃりーさんの生活は一挙にFX中心へ大転換する。
週末は1日、15時間を検証に費やす
「当時、平日は1日のうち6時間をトレードに、8時間をテスターでの検証にあてました。週末は、15時間をテスターでの検証にあてていました」
きゃりーさんの言う「テスター」とは「フォレックステスター」のこと。FX検証用のツールだ。パソコンのスペースバーを押すと過去のローソク足を1本ずつ進めることができて、仮想売買もできる。
メタトレーダー(MT4)の開発にも携わった人が作成したとされ、使用感はメタトレーダー(MT4)とよく似ている。有料なのが難点ではあるが、FX検証用ツールの定番だ。
【メタトレーダー(MT4)についての参考コンテンツ】
●ザイFX!×メタトレーダー(MT4)
15万円の元手が、わずか3年で1億円に!
「検証に没頭していた半年間の睡眠時間は、2時間程度でした。しかし、この経験が大きかったのだと思います」
この言葉どおり、バイトで貯めた15万円を元手にFXを再開すると、わずか3年で1億円に達する。
「当時は資金が少なかったこともあり、値動きが大きい英ポンド/円のトレードがほとんどでした。1日に200回、300回と30万~50万通貨でのトレードを繰り返していただけでなく、数秒から数十秒の超短期トレードもしていたため、FX会社からのたび重なる警告や口座凍結も経験しています」
いったい、どんな検証を行なっていたのだろうか。
81パターンの組合わせを徹底検証
「難しいことをやっているわけではありません。チャートには『20』に設定した移動平均線を表示するだけ。おもに、チャートのターム(時間軸)を変えながらの検証でした」
いわゆる「マルチタイムフレーム」での分析だ。
「1時間足、15分足、5分足、1分足の4タームが、それぞれ『買い優勢・中立・売り優勢』のどれになっているかを見ていくんです。
4タームそれぞれと『買い・売り・中立』の組合わせは、81パターン。そのすべてについて検証し、どのパターンが取りやすく、どれが取りづらいか、細かく見ていきました」
かなりの根気が必要な作業だが、どうやって行なっていたのだろうか。
「『買い・売り・中立』については、ローソク足の傾きや移動平均線より上か・下かで見ていきます。上昇トレンドが続いていれば4タームすべてが買い優勢を示します。
しかし、トレンドの途中で押し目をつくるときは1分足が売り優勢となる。売りに転じていた1分足が買い優勢へと戻れば押し目が終了した可能性があるため、買いで入りやすいですよね」
こうした組合わせを下記のような感じで、81パターンすべてについて考察を進めていったようだ。
そして、「長いタームのトレンドには逆らわない。短いタームの方向が転換しても、長いタームの示す方向性に戻る可能性が高い」と考えてトレードしているとのこと。
「チキン利食い」防止に平均足も使用していた
こうした検証の積み重ねで分析眼を養ったきゃりーさんは、利益を積み上げていく。
「当時は、ローソク足ではなく平均足も見ていました。通常のローソク足だと陽線・陰線が切り替わりやすく、『チキン利食い』(伸ばせたはずの利益を伸ばせないこと)となってしまいやすい。ところが平均足を使うと、その難点を克服しやすかったためです」
(出所:ヒロセ通商)
「わかるところ」だけ取って、苦手はテスターで克服
移動平均線に続いて平均足も登場したが、きゃりーさんの分析は、テクニカル重視なのだろうか。
「僕のメインは、膨大なトレードと検証で積み上げた『勘と感』。テクニカルは何でもいいと思っています。移動平均線だろうが、平均足だろうが、自分と相性のいいものを1つか2つ使えば、それで十分。個人的には、ローソク足だけでもいいと思っています。
大切なのは、『自分がわかるところ』だけを取ること。そうすれば無駄なヤラレを減らすことができます。わからないところはトレードせず、テスターで経験を積んで克服すればいいですから」
資産は未曾有のケタに達しても検証を欠かさない
「ほかにもさまざまなツールがありますので、必ずしもフォレックステスターにこだわる必要はありませんが、何かしら自分に合ったテスターを使って検証を行なっているかどうか、トレード記録をつけているかどうかで、大きな差がつくと思います。
最初の時期はリアルトレード以上にテスターで検証していましたし、今もテスターは使い続けています」
きゃりーさんがテスターを使うときには、15分足、5分足、1分足の3つのチャートを同時に開いて、マルチタームのチャートを確認しながら検証を進めていくそう。
「テスターを使えば、1日の値動きを短時間で経験できる。自分の場合は、過去の日付をランダムに選んで1日分の値動きを3時間で検証、5営業日分を15時間で検証する感じですね。相場が動いていない週末の1日で、1週間分の値動きを検証できます」
このような徹底した検証の繰り返しでトレード力を鍛えたきゃりーさんは、アルバイトで稼いだ15万円を元手にしてFXを再開。そして、わずか3年で1億円以上の利益を上げたというわけだ。
現在は「10本~20本」単位でのデイトレがメイン
現在、きゃりーさんの資産は10億円をはるかに超えるまでに膨れ上がった。そのため、利用するFX会社やトレードスタイルにも変化が訪れている。
「今は英ポンド/円だけでなく、英ポンド/米ドルや米ドル/円、ユーロ/米ドル、それに日経225先物も取引していますし、5分以上ホールドできるようなポイントにエントリーを厳選しています。
長いと数時間持つこともありますから、1時間に1トレードから3トレード程度ですね。取引量? 10~20本程度ですね」
最近は、スキャルピングよりも1時間に1トレードから3トレード程度の短期売買が中心だそう。1回の取引量はなんと10本~20本、つまり1000万通貨~2000万通貨! もはや個人トレーダーの域を超えている
1本とは100万通貨のこと。20本といえば2000万通貨だ。英ポンド/円なら、およそ28億円分のポジションということになる。1pipsの損益は20万円…!
しかし、FX会社は1注文の上限が100万通貨~500万通貨あたりのところが多いはず。分割して発注しているのだろうか?
「今は、機関投資家向けプラットフォームで大口用の口座を使っています。取引手数料が発生しますし、システム利用料もかかる。さらには、口座維持手数料までもかかります。スプレッドも広いですが、大量の注文でもきちんと約定してくれるんです」
ローソク足の伸び縮みからプライスアクションを読み解く
取引量や利用するFX口座、取引通貨ペアに変化はあるが、「英ポンドをメインにした短期トレード」の軸はブレていない。
「最近では、『プライスアクション』を以前よりも重視するようになっています。どんな値動きをしているのか、リアルタイムに動いているローソク足の伸び縮みを見ていれば、1分後、2分後の値動きなら、だいたい予想がつきます」
ローソク足の変化からプライスアクションを読み解くというきゃりーさん。1分足の形成過程について、わかりやすく図解してくれた
スキャルピングを得意とする人が重視するのがプライスアクション。為替ボードの数字を見て分析する人もいればティックチャートを見る人もいるが、きゃりーさんは、ローソク足そのもののリアルタイムな変化からプライスアクションを読み解いていく。
「同じ1分足でも、その足がどう形成されたかによって見方は変わるんです。たとえば…」
そう言って以下のような図を描いてくれたきゃりーさん。たしかに、左側はダブルトップができつつあって目先の天井を打ったように見えるし、右側はいったん調整しているだけのように見える。しかし、左も右もできあがったローソク足は同じだ。
「統計力学や量子力学を応用した値動きの考察とターゲットの算出も行なっていますが、それは『あくまで補佐的』なもの。
それより重視しているのは、膨大な経験で培われた『動物的感覚・第6感』でプライスアクションが示すものを読み取ること。そうした私のやり方を誰かに伝えても再現性はないに等しいと思っているんです」
たしかにプライスアクションによる判断を言語化するのは難しい。そこで今回は、きゃりーさんのトレード例を元にして聞いていこう。
(「2時間で580万円の利益! 天才トレーダーが10000000通貨単位のトレードを特別公開!」へつづく)
(取材・文/ミドルマン・高城泰 撮影/和田佳久)
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米ドル/円 スプレッド | ユーロ/米ドル スプレッド | 最低取引単位 | 通貨ペア数 |
0.2銭原則固定 (9-27時・例外あり) |
0.3pips原則固定 (9-27時・例外あり) |
1000通貨 | 30ペア |
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