■過去6回の「逆イールド」はその期間、すべて米ドル高に
米ドル/円が強いですね。中国の経済指標がいい数字だったこともあり、今朝(4月1日朝)は111円台を回復しています。
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米金利の低下も、一服したようですね。
米金利は先週(3月25日~)、想定以上に下がったものの米ドル/円は下がりませんでした。
先々週(3月18日~)には、米国債が「逆イールド(短期金利が長期金利を上回る状態)」でヒヤっとする場面もありましたが、1971年以降で逆イールドとなったケースは6回あり、そのすべてで逆イールドが解消されるまでの間に米ドル高となっていたそうです。
【参考記事】
●ドイツ発の世界景気減速懸念から株価急落! 米国債は「逆イールド」で景気後退の前兆か(3月25日、西原宏一&大橋ひろこ)
●逆イールドを深刻に捉えすぎる必要はない!? 景気後退は早くても来年、当面ドル高維持(3月29日、陳満咲杜)
逆イールドといっても、そもそも市場が注目しているのは、米2年債利回りと米10年債利回りでの逆イールド。
米3カ月物TB(米財務省短期証券)と米10年債利回りでリセッション警戒と騒ぐのはどうなのか、という話でしたね。
違和感を覚えますよね。それに加えて、買い遅れていた本邦勢は上値を買わず、下がったところを拾うスタンスを徹底しています。
マーケットに「下がれば買う本邦勢」が浸透してきたのか、米金利低下への反応も小幅にとどまっています。
【参考記事】
●3月期末絡みの本邦勢の米ドル買い旺盛!? 米ドル/円は、じりじり115円を目指す展開へ(3月7日、西原宏一)
●英ポンドの運命を握る3日間! 採決次第で方向性が決まる!? 米ドル/円は当面底堅そう(3月11日、西原宏一&大橋ひろこ)
●英・合意なき離脱の可能性は、ほぼ消滅。円売り需要を背景に米ドル/円は115円へ!(3月14日、西原宏一)
米国債利回りが下がっても、欧州や豪州など他国の国債券利回りも米国以上に下がっていますし、その結果、相対的に高金利な米ドルにマネーが集まりやすくなる、ということもありそうですね。
■金利を見ながらのトレードは、ぎくしゃくする展開が続いている
「円金利は、これ以上の下落余地がないので円が買われやすい」というロジックもあります。
しかし、米金利低下は株式市場にポジティブに働き、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)が上がりやすくなる。
米金利低下から株高、クロス円の上昇が進行し、その結果、米ドル/円が上がりやすくなる、というロジックのほうが現在は優勢のようです。
為替市場だけで見ると、米金利低下→日米金利差縮小→米ドル/円下落となりますが、米金利低下は株式市場にとっては悪くないということで、金融市場全般に視野を広げると、米ドル/円相場は反対の動きになるということですね。
気をつけたいのは、金融政策発表でのトレード。
ECB(欧州中央銀行)がTLRTO(条件付き長期リファイナンスオペ)を発表してもユーロ安は短期間で終了。先週(3月25日~)は、RBNZ(ニュージーランド準備銀行[ニュージーランドの中央銀行])がダビッシュ(ハト派)に転じましたが、やはり反応は短期間。
金利を見ながらトレードすると、ぎくしゃくする展開が続いています。これも米金利低下の影響なのでしょう。
【参考記事】
●英ポンドの運命を握る3日間! 採決次第で方向性が決まる!? 米ドル/円は当面底堅そう(3月11日、西原宏一&大橋ひろこ)
●NZ中銀のハト派への転換は何を意味する? 混迷するブレグジットの行方が今後の鍵に(3月28日、西原宏一)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:NZドル/円 4時間足)
今週(4月1日~)はRBA(オーストラリア準備銀行[豪州の中央銀行])の政策金利発表が、4月2日(火)に予定されています。
市場全般を見渡すと、一部で懸念された米株も、3月は結局レンジ。米金利低下が一服、VIX指数は低下し、トランプ米大統領が3月28日(木)にもツイッターで「石油価格が上がり過ぎている」と横やりを入れた原油市場も堅調。外部環境は悪くありません。
■4月のNYダウは21勝7敗。米ドル/円も簡単には崩れない?
2018年12月の株安から2019年1月のフラッシュクラッシュで、米ドル円や株式市場はボトムをつけたのかもしれませんね。
【参考記事】
●フラッシュ・クラッシュで米ドル/円が暴落! 株の下落を伴えば、100円割れの可能性も!?(1月7日、西原宏一&大橋ひろこ)
●フラッシュ・クラッシュの真犯人はトルコリラ!? クラッシュ時もスプレッドが優秀なFX会社は?
●フラッシュクラッシュのロスカット等未収金は過去3番目の規模! 25%がくりっく365から発生
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
(出所:Bloomberg)
1991年以降、4月のNYダウは21勝7敗(※)。統計上、非常に上昇確率の高い月ですね。
米株市場では今年(2019年)、注目企業のIPO(新規株式公開)が控えてもいます。シェアリングエコノミー系のAirbnbやWeWork、それにUber。Uberの競合となるLyftも先週(3月25日~)、上場しました。
(※編集部注:1991年以降の4月月足の終値が始値より高い場合を勝ち、終値が始値より安い場合を負けとする)
米株は、ここからファイナル・アップ、最後の上昇相場を演じるのかもしれませんし、そうなれば米ドル/円もそう簡単には崩れないのでしょう。
今日(4月1日)は日銀短観が発表されましたが、大企業・製造業の想定為替レートは108.87円。現在レートから2円以上の余裕があり、日本株市場には安心感を与えそうです。
ただ、1991年以降、4月の米ドル/円は12勝16敗(※)です。
(※編集部注:1991年以降の4月月足の終値が始値より高い場合を勝ち、終値が始値より安い場合を負けとする)
■「令和」ご祝儀相場へ期待も!? 米ドル/円は押し目買い方針
4月は日本が新年度入りする月。その影響があるのかもしれませんね。
一方で、先ほど新元号も「令和」に決まりましたし、ご祝儀相場への期待も高まります。
では、今週の戦略は米ドル/円の押し目買いでしょうか?
株式市場の動向を見ながら、米ドル/円の押し目買い方針でいいのでしょう。
リスクは、やはりブレグジット(英国のEU離脱)。ノーディール・ブレグジット(合意なき離脱)となれば英ポンド/円の下落が米ドル/円の下落を誘う可能性があります。
(出所:Bloomberg)
当面のターゲットは、来週4月12日(火)ですね。それまでに英議会がブレグジット案を可決できるかどうか。
ノーディール・ブレグジットの可能性が強まるようなら、シナリオを見直さないといけないですね。
(構成/ミドルマン・高城泰)
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