今回は、仮想通貨業界における著名トレーダーの一人、理論派トレーダー、ヨーロピアンさん(@sen_axis)へのインタビュー内容を全2回に渡ってたっぷりお届けします。
記事では、衝撃的なビットコインとの出会いから億り人になるまでの軌跡、さらに、普段のトレード手法や今後の仮想通貨相場の予想にいたるまで、あれこれ、ぶっちゃけてくれています。今では考えられない…超黎明期を知るトレーダーならではの驚きエピソードも満載です。
■FXトレーダー、ヨーロピアンさん。スイスショックでヤラれる
「投資で重要なのは、『非効率性』を見つけることだと思います。以前はFXにも非効率性があったので、FXのトレードをしていました」
今でこそSNS上で仮想通貨トレーダーとして活躍し、仮想通貨メディア「coinrun(※)」を運営するヨーロピアンさんだが、もともとは為替のトレーダーだった。
(※「coinrun」(コインラン)とは、ヨーロピアンさんが、同じく仮想通貨トレーダーの田中氏やMOONトレーダー氏と運営している仮想通貨メディア)
「ある2社で南アフリカランド/円を買いと売りで両建てすると、受取りスワップと支払いスワップの差がプラスになったんです。それを取りにいったりしていました。
あと、EA(メタトレーダー4(MT4)の自動売買プログラム)を回していた時期もあります。
ただ、為替市場ではスイスショックのようなことが起こります。スプレッドが開き、レートは飛び、そもそも発注できなくなることもある。あのときは、SNB(スイス国立銀行[スイスの中央銀行])を信頼してユーロ/スイスフランをロングにしていたので、かなりの利益を吐き出しました(笑)」
仮想通貨のみならず、ときには株や為替の情報もつぶやかれるヨーロピアンさんのツイッター(@sen_axis)。「ヨーロピアン」というハンドルネームの由来は、クラシエが発売しているアイスクリーム、ヨーロピアンシュガーコーンにあるのだとか。なんでも「この世で一番おいしいアイス」だそうで、大好物とのこと。また、犬好きを公言するヨーロピアンさんは、ツイッターのプロフィール画像は犬にしようと、固く心に決めていたそうだ。ひときわ愛らしいポメラニアンのイラストが目を引くワン
■人が集まってる…会社の窓から目撃したマウントゴックス事件
そんなヨーロピアンさんを仮想通貨の世界へいざなったのは、2014年2月に見た窓外の光景だった。
「会社の窓から人だかりが見えたんです。なぜ人が集まっているんだろうと。あとになり、ニュースで知りました。マウントゴックスからビットコインが盗まれたということを」
【参考記事】
●【超初級】 ビットコイン・仮想通貨入門(6) マウントゴックス事件はどんな事件だった?
●ビットコインの衝撃(2) マウントゴックスの真の罪とは? 高値1242ドルは自作自演?
世間にビットコインを印象づけたマウントゴックス事件だ。その当時、ヨーロピアンさんは、マウントゴックスが入居する雑居ビルのすぐそばで働いていた。
「以前からビットコインのことは知っていましたが、仕事がエンジニアということもあり、ビットコインの技術的な部分に関心があって少し買ってみようと、1ビットコインだけ買いました。
投資のつもりはなく、完全に技術的な興味です。ビットコインのトランザクション(取引)を発行するプログラムでも書いて遊んでみようかな、と」
マウントゴックス事件後、比較的早い時期に仮想通貨の世界へ参入したヨーロピアンさんだけど、当時、日本で営業している取引所はBTCボックスなど数社のみだった。
(出所:GMOコイン)
■「200万円なんて夢にも思わなかった」
「そんな中、Coincheck(コインチェック)やbitFlyer(ビットフライヤー)が登場し、2015年ごろから徐々に取引環境が整備されてきました。そこで初めて、投資として仮想通貨を見始めたんです」
マウントゴックス事件の直前、10万円台に達していたビットコインは、2万円を底に反転の兆しを見せ始めていた。
「自分が買ったときよりも少し上がっていたとはいえ、当時は、上がり続ける未来なんて一切信じていませんでした。だから取引も、長期保有ではなく『アービトラージ』です」
本来は同一の価格であるはずのものついて、さまざまな場面で表れる価格差(サヤ)を狙うのが、アービトラージ(裁定取引)だ。
「同じビットコインでも、取引所によって価格に違いがありました。『高い方で売り、安い方で買い』と両建てすることで『デルタ』(※)はゼロ。あとは、サヤが縮まったところで決済すれば、利益になります。
(※編集部注:「デルタ」とは本来はオプション用語で、原資産価格の変化に対して、オプション価格がどれぐらい変化するかを示す指標のこと)
1回で抜けるサヤは数百円幅でしたが、プログラムを書いて自動で回していたので、1日4、5万円程度の利益になっていました」
(出所:TradingView)
まだビットコイン市場の参加者が少なく…
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■たった2人でビットフライヤーの出来高80%を占有した時代
まだビットコイン市場の参加者が少なく、値動きも比較的、穏やかだった時代だ。
「アービトラージのプログラムをおおよそ2か月ほど回して、そこで気がつくんですよね。出来高がそこそこ増えてきたし、価格の変動幅も大きくなってきたのなら、アービトラージでなくともいけるんじゃないかって」
アービトラージの次にヨーロピアンさんが狙ったのは、「マーケットメイク」。利用者が取引しやすいよう、指値を細かく発注し、薄い利ザヤを抜いていくプログラムだ。
「当時はまだメイカー(指値注文を発注する人)よりも、テイカー(成行注文を発注する人)が多く、板がスカスカでした。市場に板を供給するプログラムを書いて、回すようになったのが2016年。アービトラージよりも利益は増えました。
今、いっしょにサロンをやっている『田中』も同じようなプログラムを回していたので、2人でビットフライヤーの出来高の7、8割を占めることもありました」
たった2人でビットフライヤーの出来高の80%近くを占めるなんて、今だと考えられない……。しかし、ほんの2年前の話なのだ。
■環境激変の「仮想通貨元年」。結果的にイケハヤもアーリー
「空気が変わったのは2017年です。2016年末にビットフライヤーが日経新聞に全面広告を出して、『仮想通貨元年』を宣言し、参加者が増えてきました。1日に数コメント程度しか入らないことも多かっビットフライヤーのチャット欄も活況を呈するようになり、肌感覚としても人が増えてきているのを感じました」
【日経新聞全面広告を掲載】
— bitFlyer(ビットフライヤー) (@bitFlyer) 2016年12月30日
本日2016年12月30日(金)の日経新聞朝刊で全面広告を掲載いたしました。
2017年は、仮想通貨元年。
仮想通貨法が施行され、「ビットコイン」がいよいよ世界を変えていく。
私たちはそう信じています。https://t.co/fELOaYgNDX pic.twitter.com/vw4dqsOm2o
マウントゴックス事件から低迷していたビットコイン価格も10万円へトライしようとしていた。有名ブロガーのイケダハヤトさんと、ザイFX!編集長による「靴磨き論争」が起きたのもこの直後だ。
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「イケダハヤトさんが参戦するようだと、相場はもう終わりなのでは…という声もありました。でも、結果的に見ればイケハヤさんもアーリーアダプターだった。『靴磨きの少年』ではなく、『ハーメルンの笛吹き男』だったんです」
上昇トレンドが鮮明になるとともに、ヨーロピアンさんの取引も変化していった。
■2017年夏までに100BTCを確保する先見の明
「ビットフライヤーの『Lightning FX(ライトニングFX)』へも本格的に参入しました。ライトニングFXも、当初はレバレッジ3倍か5倍くらいでしたし、人も少なく、流動性もなかった。
でも、2017年になって人が増え、流動性も高まり、値動きも大きくなり始めました。レバレッジも最大15倍となり、トレードしやすい環境になってきたので参入したんです」
このとき、ヨーロピアンさんが心がけていたのは、「保有するビットコインを増やすこと」だ。
「ビットコインの現物を増やそうと思い、アルトコインをトレードして、その利益をビットコインに替えたり、ビットコインが急落する場面で買ったりして、2017年夏までに100BTCくらいまで増やしました。それまではボット(自動売買プログラム)やトレード、現物の利益を合算しても6000万円、7000万円程度の利益だったと思います」
2017年は、夏までに現物で100BTCを確保する戦略に。イケダハヤトさんも、結局、靴磨きの少年ではなく、ハーメルンの笛吹き男だったわけだが、その後、ビットコインは年末にかけて大暴騰を見せた。いや~イケハヤさんもヨーロピアンさんも、先見の明をお持ちで!
■2017年12月、BTCをほぼ全決済。決め手は?
その後のビットコインの高騰は、ご存知のとおり。2017年末には230万円に到達した。そのころ、評価益を含むヨーロピアンさんの資産額は、一時、12億円程度に達したというから驚きだ…。
2017年夏までに増やした100BTCは、どう料理したのだろうか。
「170万円台から売り上がっていき、200万円台で、ほぼすべて決済しました。ハッシュレートの伸びに比べ、明らかに価格が高すぎると思ったので」
(リアルタイムチャートはこちら → 仮想通貨リアルタイムチャート:ビットコイン/円 月足)
利益確定のタイミングとしては、バツグンだ。100BTCの決済益だけで、ざっと2億円ほどにはなったはず。
「最初にお伝えしましたが、投資の世界で重要なのは『非効率性』を見つけることだと思っています。その点でいうと、2017年12月のビットコインは、合理的な説明のつかない価格になっていました。
開発の進捗であったり、トランザクションの量であったり、ハッシュレートであったり、そうした面から見て、高すぎるだろうと」
ハッシュレートとは、ビットコインのマイニングに使われている計算力の総量。これが高まるほど、より多くの計算力がビットコインのマイニングに使われていることになり、それは、ビットコインネットワークの広がりを意味する。
(出所:TradingView)
■いさぎよく最高税率の所得税を支払うことにする
「ちょうど同じタイミングで、シカゴの取引所では先物取引も始まる時期でした。同じように高すぎると考える人が売り込んできて、『世紀の空売り』が始まるかもしれない、と。
12月なので税金のことも考えましたが、来年に持ち越しても、どうせ払わないといけないのなら決済しようと。そのため、2017年分の所得税は、最高税率45%フルに払っています(笑)」
税金を支払ってもなお、ヨーロピアンさんの手元には億をはるかに超える資産が残った。2018年6月現在の資産は7、8億円程度。このまま次の納税を終えても、5億円程度にはなるという。
ところで、ヨーロピアンさんは、ガチホだけでなく、テクニカル分析による短期トレードもしているようだが、いったいどんなトレードをしているのだろうか?
(「ヨーロピアン氏がビットコインを買う理由。早くて2019年に200万円超えへトライか?」へつづく)
(編集担当/向井友代【ザイFX!副編集長】 撮影/和田佳久)
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