(第1回目「約2億円の利益!? ヨーロピアン氏がBTCを200万円付近で決済できたのはなぜか?」からつづく)
当記事は、仮想通貨業界の著名トレーダーの一人、理論派トレーダー、ヨーロピアンさん(@sen_axis)へのインタビュー第2回目です。
第1回目は、ヨーロピアンさんのビットコインとの出会いやこれまでのトレードの軌跡なんかを語っていただきましたが、ここからは、おもに短期からスウィングトレードで用いるというテクニカル手法や今後のビットコイン相場の展望について、ヨーロピアンさんに教えていただきます。
インタビューに答えるヨーロピアンさん。元はFXトレーダーでもあるヨーロピアンさんは、いったいどんなテクニカル指標を使って「億り人」になったのか!? 気になるビットコイン相場の展望と合わせて、根掘り葉掘り聞いてみよう!
■チャート分析で重視するのは200日移動平均線
「デイトレであれば15分や30分足、スウィングトレードくらいの中期ポジションならば日足を見ています。チャートは『TradingView』がメインで、たまに『CryptoWatch』を使います。
重視しているのは、移動平均線です。
それには理由があって、ビットコインは未成熟なマーケットですから、テクニカルが有効な場面もあれば、テクニカルどおりに動かないこともある。でも、移動平均線は見ている人が多いですし、特に、200日移動平均線(200日線)は、ビットコイン市場で重視されているんです」
(出所:TradingView)
200日線は、過去200日間の市場参加者の平均コストと考えることもできる。それより下にいれば買い手の半分以上は損をしているだろうし、マーケットのセンチメントは悪い。逆に、200日線より上ならば買い手優位でセンチメントはいい。
「200日線が、いったんはサポート、レジスタンスになるだろうと考えますし、明確に抜けたら、抜けた方向にトレンドが加速するのでは…と考えながらトレードしています。2018年5月も、200日線がレジスタンスとなり下落していました」
(出所:TradingView)
■利益確定は小分けに、損切りは「他の人と同じところ」に
決済は、どう考えているのだろうか。
「利益確定するときは、たとえば60万円で買って70万円までいくだろうと考えたときは、66万円から5000円幅で保有量の10分の1ずつ指値を入れていくようなイメージです。
出来高が少ないときにそうしていたので、そうするのが手癖になっているところもあって。今でも出来高の少ないアルトコインでまとめて注文を入れると、目立ってしまうこともあります」
もちろんストップ(逆指値)も入れる。
「ストップは、『なるべく他の人と同じところに』と考えています。他の人よりも少し下に入れても、他の人のストップが狩られたときの下ヒゲでド底の損切りになってしまうこともあるし、かといって、さらに離すと資金管理が難しくなる。そのため、他の人がストップを入れるだろう直近安値などの節目に入れています」
ストップは、なるべく他の人と同じところに置くという。他の人より下に入れると、下ヒゲでド底の損切りになってしまうし、離れたところに置くと資金管理が難しいとのこと。みんながストップを入れそうな直近安値などの目安に入れるなら、我々もストップの入れ方だけは、比較的簡単にマネできそう
■フィーの安い取引所なら自然と流動性も高まる
移動平均線以外のテクニカル指標を使うこともある。
「15分足や30分足ではボリンジャーバンドやRSIを使うこともありますし、日足のMACDでダイバージェンスを見ることもあります。あとは、ポジションの増減を表示する自作のインディケーターも利用しています」
取引所は、どこを利用しているのだろうか。
「ビットコインのレバレッジ取引は、bitFlyer(ビットフライヤー)がメイン。アルトコインは、海外取引所を使っています。
使いやすさや流動性も重要ですが、収益に効いてくるのがフィー(取引手数料)。国内では相対取引の業者もありますが、フィーの問題で使っていません。フィーの安い取引所を使っていると、そこには自然と投資家が集まってきて流動性も高まるでしょうし、フィーは、とても重要です」
短期、中期、長期と取引スタイルを使い分けて…
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■2月、6月の急落でガチホ用のビットコイン現物を確保
短期、中期、長期と取引スタイルを使い分けているヨーロピアンさん。2018年は、どんなトレードを行なっているのだろうか。
2018年は、またビットコインの現物を買っているらしい。根拠の1つはハッシュレート。200万円超にまで暴騰した2017年はハッシュレートに対して価格が高すぎると指摘していたヨーロピアン氏だが、今はその逆。ハッシュレートに対して価格が安すぎると見ているようだ
「2018年は、またビットコインの現物を買い集めています。2月や6月の急落時に100BTCほど買い集めました」
根拠の1つがハッシュレートだ。
「2017年12月は、ハッシュレートに対して価格が高すぎると思いましたが、今は逆。安すぎる水準まで下落しています。
GMOグループを初めとして、日本でも大企業が事業としてマイニングに参入していますし、世界でも同じ傾向が見られます。彼らにとってマイニングはお小遣い稼ぎではなくビジネス。どんなビジネスでも2年、3年と中期的な計画に基づいて投資するでしょうし、ビットコインの価格が上昇することを織り込んでいるはずです」
(出所:TradingView)
■ビットコインのターニングポイントは4000ドル近辺か
ガチホ勢には心強い見通しだが、しかし、ビットコインの大底はまだ先かもしれない。
「感覚的には、対米ドルで4000ドルまではあるかなと。マイニングの限界コスト、もっとも電力の安いところでも収益分岐点になるのは4000ドル程度なのでは…と考えています。4000ドルがターニングポイントになると考えて、そこでも買っていくつもりです」
では、反転上昇の時期とターゲットは?
「年内は大きく動くこともなく、静かにヨコヨコの動きが続くのではないでしょうか。60万円から100万円をコアレンジにして、4000ドル(44万円 ※1ドル=110円の場合)程度までの下落もあるかもしれません」
上がるとすれば、来年(2019年)以降だ。
(出所:TradingView)
■2019年に200万円トライがあれば御の字
「上がるためには投資家が戻ってくる必要があるし、それには何らかのファンダメンタルズ的なきっかけが必要。どんなきっかけかはわかりませんが、再びビットコインへの投資意欲を高めるようなニュースが出て、200万円を再びトライしにいくのでしょう。
来年(2019年)にトライできれば御の字ですし、再来年(2020年)以降になるかもしれない。200万円を上抜けば、その先は早い。250万円、300万円と上がっていくのではないでしょうか」
ビットコインは、ヨーロピアンさんの人生を大きく変えた。億り人となり、6月には「coinrun(※)」を運営する仲間とともにオンラインサロンも開設した。
(※「coinrun」(コインラン)とは、ヨーロピアンさんが、同じく仮想通貨トレーダーの田中さんやMOONトレーダーさんと運営している仮想通貨メディア)
■「非中央集権であるビットコインを愛する」ビットコイナー
「スタートは間違いなく投資ではなく、技術的な興味でしたが、そこに投資やイデオロギー、政治といった関心が積み重なっていきました。ただ、ビットコインを取り巻く環境は変わってきています」
2017年7月に更新されたヨーロピアンさんのブログには、こう書いてある。
僕を含む多くのビットコイナーは非中央集権であるビットコインを愛しています
「その思いは今も変わりません。ですが、当時は、自分たちがビットコインコミュニティを変えることができるという思いがありましたが、今は国家の規制や大企業の意向が強くなっている。そこに無力感を覚えないこともありません。もちろん、今も根のところはビットコイナーですが」
「僕を含む多くのビットコイナーは非中央集権であるビットコインを愛しています」…この一文は、ヨーロピアンさんが「ビットコインの非中央集権性が失われる日」というタイトルで書いたブログ記事の一節。「今も根のところはビットコイナー」という言葉からも、ビットコインへの強い思い入れを感じる
誕生の発端となったサトシナカモトの論文だって謎めいているし、これだけ多くの人に知れ渡った今でも生みの親の正体さえわからないなんて、改めて考えてみると、ビットコインってなんとも不思議な存在。
そんなビットコインに惚れ込んだ開発者や超黎明期から注目し続けているヨーロピアンさんのようなビットコイナーにとっては、アルトコインは無数にあれど、やっぱりビットコインは特別な存在なのかもしれない。
(編集担当/向井友代【ザイFX!副編集長】 撮影/和田佳久)
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