■ブレグジットは1年延期か、短期の延期か
先週(4月1日~)の米雇用統計は、ほぼ予想通り。平均時給がやや悪かったくらいでサプライズはありませんでした。
米雇用統計では動かなくなりましたし、為替市場全般、動きが少なくなっています。要因はブレグジット(英国のEU離脱)。これがハッキリしないと動くに動けないのでしょう。
【参考記事】
●ブレグジット混迷で英議会は崩壊寸前!? メイ首相は条件付きで辞任表明するも…(4月1日、松崎美子)
●EU離脱案の採決中止! ますます混乱する英国で、メイ首相降ろしのクーデター勃発!?(3月25日、松崎美子)
●メイ首相最後の賭け! 3月19~20日も山場、21~22日も山場。混乱の英国から直送レポ!(3月18日、松崎美子)
今週4月12日(金)が当面の離脱期限ですが、4月10日(水)には臨時EU(欧州連合)首脳会議が開かれ、メイ英首相が延期を要請する見通し。
もし、延期が承認されなければノーディール・ブレグジット(合意なき離脱)の可能性が高まります。
さすがに延期となるのでしょうが、延期の期間についてはさまざまな憶測が飛んでいます。
メイ英首相は、6月30日(日)までの短期延期を要請するようですが、トゥスクEU大統領は1年間の長期延期を支持しているとのこと。
メインシナリオはソフトブレグジットの方向だろうと思いますが、出てみないとわからないですね。
4月10日(水)の臨時EU首脳会議、今週最大のイベントですね。
■「最弱通貨競争」で注目されるNZドル
もうひとつ為替市場を動きにくくしている要因が米中通商協議。合意方向に進んでいるとの報道が出るものの、首脳会談の実現には至らず、ダラダラと続いています。
ロシアゲートについて、とりあえずシロとする報告書が出たことで、トランプ米大統領は政治的な動きを強めるかもしれません。
先週(4月1日~)には「FRB(米連邦準備制度理事会)は利下げを」と圧力をかけました。米10年債利回りは先週2.5%割れまで低下しましたが、低位安定。米ドル/円も下がっていません。
米金利が低下しても、他国の金利がもっと下がるため米ドル安にならないのでしょうか。
【参考記事】
●新元号は「令和」! ご祝儀相場に期待!? ブレグジット注意だがドル/円は押し目買い(4月1日、西原宏一&大橋ひろこ)
そうでしょうね。
ニュージーランドが最たるものですが、米国が利上げ打ち止め、ECB(欧州中央銀行)はTLRTO(条件付き長期リファイナンスオペ)を開始、RBA(オーストラリア準備銀行[豪州の中央銀行])もダビッシュ(ハト派)となると、相対的にNZドルが買われやすくなり、豪ドル/NZドルではパリティ(1.00)割れが間近に迫りました。
苦しくなったRBNZ(ニュージーランド準備銀行[ニュージーランドの中央銀行])は、ハト派方向へ舵を切らざるを得ませんでした。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/NZドル 日足)
【参考記事】
●利上げ予測が霧散した豪ドルは反落開始! 呼応して、米ドル/円もじわじわと下落か(2月7日、西原宏一)
●NZ中銀のハト派への転換は何を意味する? 混迷するブレグジットの行方が今後の鍵に(3月28日、西原宏一)
●ハト派は米国だけじゃない! 米ドル安より円高を警戒。ユーロ/円の売り戦略を検討へ(3月28日、今井雅人)
主要国が軒並み緩和方向で、「最弱通貨競争」ですね。
■ユーロは売り目線だが動けない。売りポジションは約10万枚
特に、ユーロについては、ドイツを中心に景況感も悪化しており、売り目線ではあるのですが、いかんせんブレグジットの行方がハッキリしないと動けない。
IMM(国際通貨先物市場)のポジションを見ると、ネット(差引)で約10万枚のユーロ売り。たまった売りポジションが整理されないと、下がるに下がれないですね。
【参考記事】
●IMMの危険水準は円10万枚、ユーロ15万枚、英ポンド10万枚だが、さらに確認すべきは?
(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)
ユーロクロスは売っておきたいのですが、もう少し様子を見てから、でしょうね。
■GWの海外旅行者が過去最高。円売りの可能性も?
トピックとしておもしろいのが、ゴールデンウィークの海外旅行動向。
JTBによると、ゴールデンウィークに海外へ出かける人は過去最高の66万2000人、消費額は1774億円となるそうです。
通常の1カ月分にあたる旅行収支が、ゴールデンウィーク中に発生することになります。1カ月分が10日間に集中するとなると、為替へのインパクトがありそうですよね。
トラベラーズチェックや現金を用意していた時代とは違い、クレジットカードなどを利用する人が増えていますから額面通りには受け取れませんが、まわりまわって円売りの動きとなる可能性はありますね。
実際、銀行時代にはゴールデンウィーク前に仲値で米ドル買いが増えたこともありましたから。
【参考記事】
●日経225先物が10日間取引停止へ! もし暴落したら…10連休に日経平均を取引するには?
●ゴールデンウィークは円高になるって本当? 過去20年を徹底検証。10連休はどうなる…
●「仲値トレード」って本当に儲かるの?(1)実は巷で言われているような法則はない!?
●「仲値トレード」って本当に儲かるの?(2)相場観一切無視で勝率7割超の手法発見!?
■日米TAG交渉は為替条項に注目。NZドル/円の売りに妙味!?
原油市場を見ると、強いチャートになっています。
要因のひとつがイランへの経済制裁。イラン産原油の禁輸措置は、日本など一部の国に対して5月まで適用が除外されています。しかし、5月の猶予期間終了へ向けて供給不安が高まり、買われているようです。
米株高、低金利、原油高、VIX指数も低位安定となると、リスクオフのムードはないですね。
(出所:Bloomberg)
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注意したいのが、来週4月15日(月)から始まる予定の日米TAG(物品貿易協定※)交渉。為替条項が意識されると円高に振れる可能性があります。
ただ、リスクオフ的な円高が起きて米ドル/円が2円、3円と下がれば買い場だと考えています。M&Aや直接投資のオーダーが下で待ち構えており、リスクオフの円高は長く続かないでしょうから。
(※編集部注:「物品貿易協定」とは、輸出入する物品にかかる関税の引き下げや撤廃について定める協定のこと。金融やサービスなど物品以外の分野は交渉範囲に入らない)
今週の戦略は、どう考えますか?
4月10日(水)の臨時EU首脳会議を待ちたいですが、積極的にトレードするなら金融政策面からNZドル/円のショートに妙味があるかもしれません。
リスクオンで株高となっても豪ドル/NZドルの影響でNZドルは上がりにくく、日米TAG交渉などで円高となる可能性もあります。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:NZドル/円 日足)
(構成/ミドルマン・高城泰)
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