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IMMの危険水準は円10万枚、ユーロ15万枚、
英ポンド10万枚だが、さらに確認すべきは?

2018年09月27日(木)13:00公開 (2018年09月27日(木)13:00更新)
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「EU離脱交渉に揺れているのに英ポンドはなぜ反発しやすい?バカラ村氏の答えは…」からつづく)

バカラ村氏プロフィール

あんな通貨ペアやこんな通貨ペアも見ていた!

 バカラ村さんの見通しでは、英ポンドには悪材料はかなり織り込まれていて、ここから先の下落はあまり考えにくそうということですが、ただ下がらないというのと、今後、上がっていくというのでは、トレードのしかたも変わってきます。

 バカラ村さんは今の英ポンド相場を、どのように分析しているのでしょうか?

 「英ポンドは、離脱協議の内容次第で方向性が変わってくる可能性があります。でも、チャートだけ見ると、今は主要通貨の中で、加ドルの次ではないかと思うぐらい強い状況です。そのため、英ポンド/米ドルも英ポンド/円も、まだ上昇する可能性があると思います。

 オセアニア通貨に対しても、英ポンドは強い状態です。11月の米中間選挙あたりで、オセアニア通貨の方向性が変わる可能性はありますが、英ポンド/NZドルの長期チャートを見ると、長いもみ合いを上に抜けてきています。どう考えても、ここから上がるようにしかみえません(英ポンド高・NZドル安)。ここでも、英ポンドが強いということがわかります」

英ポンド/NZドル 週足
英ポンド/NZドル 週足


(出所:Bloomberg)

 「また、米ドルの方向性を考えるときに、米ドル/スイスフランを見ることがあるのですが、米ドル/スイスフランは8月下旬にもみ合いをブレイクダウンして、現在、下降トレンド中の中段もみ合いを形成しています」

米ドル/スイスフラン 日足
米ドル/スイスフラン 日足

(出所:Bloomberg)

 「中段もみ合いは、通常、もみ合い前のトレンド継続を示唆していると言われているため、1~2週間以内に再度、下降トレンドが始まるのではないかと考えています。ということは、米ドル安になるとも考えられます」

目先の上値メドをズバリ的中!!

 「こうしたことから、英ポンド/米ドルは、まだ上昇するのではないかと判断しています。目先はN計算値を当てはめた1.31ドル台半ばや、前回の高値水準となる1.32ドル台前半が、上値のメドになるのではないかと考えています」

英ポンド/米ドル 日足
英ポンド/米ドル 日足

(出所:Bloomberg)

ザイFX!がバカラ村さんに話を聞いたのは9月16日(日)のこと。その後の9月19日(水)に、英ポンド/米ドルはバカラ村さんが指摘した1.32ドル台前半まで上昇して、そこでいったん上げ止まりました。まさに、バッチリな見通し!

 バカラ村さんは呪文のようにスラスラと解説してくれるのですが、英ポンドの方向性を予測するのに、対オセアニア通貨や米ドル/スイスフランといった複数の通貨ペアの動きも確認して、総合的に判断しているというあたり、視野が広くて、そう簡単にマネできるものではなさそう…。さすが、世界的なトレード大会で優勝し、数々の実績を積み上げてきたのもうなずけますね。

 ただ、英ポンド/米ドルを取引しようと思ったときに、単純に英ポンド/米ドルだけを分析すればいいわけではないということは、多くのトレーダーにとって、今後のトレードの役に立つし、絶対に覚えておきたいポイントと言えるのではないでしょうか?

バカラ村流、IMMポジションの見方を公開!

 そして、バカラ村さんといえば、ザイFX!の連載コラム「FX専業トレーダーの相場観」や、有料メルマガ「バカラ村のFXトレード日報!」の中で、折に触れてIMM(国際通貨先物市場)のポジション動向を紹介したうえで、為替相場の見通しを語ってくれています。

【参考コンテンツ】
シカゴIMM通貨先物ポジションの推移

 実は、メルマガの配信が始まった直後の2017年3月に、バカラ村さんは投機筋のIMMポジションが偏りすぎていたことに注目して、英ポンド/米ドルで600pips以上の値幅を獲得するトレードを披露。その後の2017年8月には、今度は英ポンド/円で500pipsほどの利益を出すなど、IMMのポジション動向を参考に、英ポンド相場で見事としか言いようのないトレードを繰り返してきました。

【参考記事】
メルマガ開始直後に600pips獲得の快進撃! 「バカラ村のFXトレード日報!」を読み解く
英ポンド/円トレードで500pipsの利益獲得! ジャクソンホールでユーロ安誘導はあるか?(2017年8月22日、バカラ村)

 バカラ村さんと同じように、IMMのポジション動向をチェックしておけば、トレードにめっちゃ役立つかもしれません。ぜひ、見方やトレードでの使い方を詳しく教えてほしいんですけど…。

 「投機筋の買いポジションの合計と売りポジションの合計の差し引きが、目安として円だと10万枚ぐらい、ユーロだと15万枚ぐらいになれば、ポジションが一方向に偏り過ぎていて、巻き戻しの動きを警戒するべき危険水準だという感覚はあります」

IMM(国際通貨先物市場)のポジション状況(米ドル/円)9月11日時点
IMM(国際通貨先物市場)のポジション状況(米ドル/円)9月11日時点

※CFTCのデータを基にザイFX!が作成

IMM(国際通貨先物市場)のポジション状況(ユーロ/米ドル)9月11日時点
IMM(国際通貨先物市場)のポジション状況(ユーロ/米ドル)9月11日時点

※CFTCのデータを基にザイFX!が作成

 「ただ、ユーロは2015年に一時、売り越しが22万枚まで膨らみました。これは、多くの市場参加者がユーロが崩壊して、ユーロ/米ドルが1.00ドルのパリティ(等価)まで下落すると思っていたときで、ユーロの売り越しがそれまでの危険水準だと思われていた水準と比べても、かなり大きく積み上がりました」

【参考記事】
IMMの円売り越し13.6万枚! この数字が10万枚を越えると米ドル/円は調整しやすい(2017年11月21日、バカラ村)

英ポンドは10万枚の偏りが目安。だけど…

 「英ポンドに関しては、円やユーロの水準も踏まえて、10万枚あたりが危険水準ではないかと思いますが、英国のEU離脱という材料もあるので、10万枚を超えて偏って推移してしまうこともあると想定しています」

IMM(国際通貨先物市場)のポジション状況(英ポンド/米ドル)9月11日時点
IMM(国際通貨先物市場)のポジション状況(英ポンド/米ドル)9月11日時点

※CFTCのデータを基にザイFX!が作成

 「また、危険だと思える偏りの水準は、年々、広がってきているように感じています。はっきりとは覚えていませんが、円も昔は8万枚ぐらいが危険水準だったように思います」

 なるほど、行き過ぎてしまうこともありそうだけれど、今はだいたい、普段は円で10万枚、ユーロで15万枚、英ポンドで10万枚ぐらいを、危険水準と考えておけば良さそうな気がします…。

 ということは、英ポンドのIMMポジションが10万枚以上の売り越しになったら、巻き戻しを見越して英ポンド/米ドルを買えばいいし、逆に10万枚以上の買い越しになったら売ればいい。例外はあるかもしれないけれど、それなら記者にも簡単にできそうです! バカラ村さん、ナイスなアドバイスをありがとう!

 「いえ、ポジションの偏りだけを頼りに、行き過ぎだと判断して逆張りすると、かなり痛い目にあいますよ。

僕は、単純にIMMポジションの偏りだけを見て、トレードすることはないです

 真っ向から否定されるような返事が!!

 だって、売られ過ぎは必然的に買い戻されるし、買われ過ぎは転売されるのが相場なんじゃ…。それが危険水準にあるというんだったら、なおさらのように思えるんですが…。

チャートも反転することが重要!

 「ポジションが偏ってきているということは、通常はその状態になるまでの間に、相場にはトレンドができています。ですから、ポジションの偏りが危険水準に近づいたからといって、それだけでトレードすると、それは相場のトレンドに反して逆張りをすることになるため、リスクの高いトレードになります。

 ですから、僕はポジションの偏りが危険水準まできたら、チャートにも反転のシグナルが出るかどうかを必ず確認します」

 チャートで反転のシグナルを確認する?

 「通常、順張りでトレードする人は、いったん価格が反転してきても、その動きはトレンド中の押し目や戻りと見てしまいます。

 ですが、僕はポジションが一方向にパンパンに偏っていて、そのときに価格が反転した場合、それは押し目でも戻りでもなく、トレンドの反転だと考えてトレードします。中には先ほど言ったユーロのように、相場のトレンドが強すぎた結果、売り越しが22万枚まで膨れ上がったときもありますが…。

 たとえば、今年(2018年)の初めに円が売り越しに偏っていて、その後、4月にかけてそのポジションが買い越しになるまで巻き戻されました。このとき、米ドル/円は1月に、昨年(2017年)末から形成していた112~113円台半ばのレンジを下抜けたため、チャート的に下がる可能性が示唆されました」

円のIMMポジション(左軸)と米ドル/円 日足(右軸)
円のIMMポジション(左軸)と米ドル/円 日足(右軸)

※動きがわかりやすいように、IMMポジションの推移(縦軸)を反転して表示
(出所:Bloomberg)

 「このように、ポジションがパンパンに偏り、さらにチャートが反転やトレンドの発生を示唆するという条件が重なったら、円高方向でトレードするのです。

 もう1つ例を挙げると、今年(2018年)の4月中旬に、ユーロのIMMポジションが15万枚を超える水準まで買い越しに偏っていました。その後、4月下旬にユーロ/米ドルが、3カ月ほど続いたもみ合いを下抜けました。

 ここでも、先ほどと同じように、ポジションの偏りがパンパンになり、ユーロ/米ドルの下方ブレイクでチャートがトレンド発生を示唆したという条件が重なったので、ユーロ売りのトレードが機能するということになります」

ユーロのIMMポジション(左軸)とユーロ/米ドル 日足(右軸)
ユーロのIMMポジション(左軸)とユーロ/米ドル 日足(右軸)

(出所:Bloomberg)

 したがって、投機筋のIMMポジションだけで判断するのではなく、しっかりとチャートも確認してトレードするべきです」

でも、飛び込んでみるのもいいのかも…(笑)

 結局、投機筋のIMMポジションがいくら危険と思われる水準まで買いや売りに偏りすぎているといっても、相場のトレンドに変化がなければ、それだけを参考にしてトレードするのはやめたほうが良いということなんですね。相場のトレンドが変化したら、そこがエントリーのチャンスになるというのが、バカラ村さんの考え方というわけです。

 「あ、でもIMMポジションだけを見てエントリーするのは危険だと言っておきながら、今年の4月中旬に、ユーロ/米ドルをレンジブレイク前の1.23ドル台半ばで売っていますね…。トレードノートを見返すと、途中で利食いを入れつつ、1.18~1.19ドル台で、いったん、すべてのポジションを手仕舞いしています(笑)。

 反転もまだしていないのに、なぜ売ったのかすぐに思い出せないのですが、そのときにIMMポジションが買いに偏っていたことは、たしかに理由の1つだったと思います。それ以外にも、売る理由はあったはずですが…。そういえば昨年(2017年)も、相場の反転を確認する前に英ポンドを買っていたような…。

 まぁ、ちゃんとした理由はあったのだと思いますが、IMMポジションの偏りが大きくなれば、飛び込んでみるのもいいのかも…ということなのでしょうか(笑)」

 お茶目な一面も見せてくれたバカラ村さんですが、的確な分析力と豊富な経験に裏打ちされた正確な判断力があったことは間違いないはず。

 EU離脱交渉の行方次第で、今後も乱高下する可能性がありそうな英ポンド相場ですが、投機筋のポジションの偏りや相場のトレンドを把握できていれば、トレードチャンスが来たときに、しっかりその波に乗ることもできそう

ザイFX!の連載コラム「FX専業トレーダーの相場観」では、バカラ村さんが為替市場の動向を非常にわかりやすく解説しながら、英ポンド相場以外にも、トレードチャンスのありそうな通貨ペアを紹介してくれています。ご自身のトレード内容を披露してくれることもありますので、ぜひ、こまめにチェックしてみてください!

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(取材・文/ザイFX!編集部・堀之内智 撮影/和田佳久)

(※本記事の取材は2018年9月16日(日)に行っています)


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